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<山本敦のAV進化論 第41回>

パナソニックのテレビに採用される「Firefox OS」。その特徴と可能性をMozillaに聞く

公開日 2015/01/28 09:00 山本 敦
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「確かに標準のユーザーインターフェースについて、各パートナーと一緒に作っている部分もありますが、MozillaとしてはFirefox OSのブランディングを損ねる恐れがあったり、セキュリティやプライバシーに問題が起きかねないと判断した場合にアドバイスをさせていただく程度です。完全に使いにくいものにならなければ、自由に開発していただける環境になっています」。


「例えばテレビの場合であれば、リモコンの十字キーでかんたんに操作できた方が良いと私個人は思います。パナソニック様にはかなり積極的にプラットフォームづくりを進めていただいているので、Mozillaが全てのルールを決めることはありません。スマートテレビ、あるいはリビングなどに置く大型サイズのスマートディスプレイにどのようなインターフェースが必要で、どのような使い勝手であるべきかという部分については、パナソニック様と一緒に必要な議論を練っています」。

テレビ向けのアプリについて、開発環境はどうなっているのだろうか。またOSのメリットをテレビで活かし切るためのアプリマーケットのサービスは設けられるのだろうか。

「Firefox OSではウェブ技術のオープン性を活かし、例えばモバイルのAndroid OS用にもFirefoxのアプリマーケットを提供しています。ウェブ技術をベースにすれば、ネイティブアプリよりも楽に素速くアプリを開発できると考えています。テレビ向けのアプリマーケットも当然作ることが可能です。明確な時期については言えませんが、春頃のテレビの商品化に続いて、夏頃のローンチが今のところ検討されています。テレビ向けアプリの開発にスマホ向けアプリの開発資産を活かすことも容易です。反対にゲームなど作り込んだアプリを提供したいのであれば、Unityなど開発エンジンを使うこともできます。他社に開発ソースが見られたくないのであればソースをクローズドにもできます」(浅井氏)。

スマホ用のアプリマーケットとして用意されている「Firefox Marketplace」でアプリを購入すれば、Firefox OS搭載のテレビでも利用できるようになりそうだ。当然ながら、開発者がどちらかのデバイスだけを選んで登録することもできる。

またアプリはマーケットを介さずとも、サイトに直接リンクを貼ってホーム画面にアプリのように登録しておくこともできる。ウェブとアプリの違いは“あらかじめ端末にダウンロードされているか”だけの違いであり、最新のコンテンツを常時参照するニュースアプリのようなものであれば、ユーザーインターフェースだけをローカルに置き、コンテンツを適宜取りに行くようなものが使いやすいだろうし、ゲームのようなアプリは端末にダウンロードして遊んだ方がスムーズかもしれない。ユーザーが用途に応じて使い分けることができる。

アプリの内容をMozillaが審査・監視する体制も整えるという。「Firefox Marketplaceはユーザーとアプリの一つの接点に過ぎませんが、Mozillaのポリシーに従って違法コンテンツの登録を禁止しています。チェックのプロセスはそのドキュメントを公開していますし、開発者の方にチェックを行うレビュワーとして参加していただくこともできます。極めてオープンなプロセスの中で、基本的には最低限の、緩いレビューを行っています。最大限にオープンでありながら、ウィルスソフトや違法コンテンツが入り込む余地をつくらないようにするためのもので、そのスタンスはアップルとグーグルのちょうど中間にあるような形を採っています。ユーザーにとっては安全な環境を提供しています」。


■対応機器の拡大がFirefox OSの優位性を浮き彫りにしていくだろう

浅井氏の話を伺いながら、Firefox OSはモバイルだけでなく、エレクトロニクス製品の“コネクティビティ”に幅広く貢献するものであり、その進化を強く後押しするものになるだろうという強い期待感を得た。

Firefox OSをテレビに搭載するパナソニックは、テレビを水平分業で開発する中で、プラットフォーム開発にはFirefox OSのフェアなスタンスとオープン性が重要という判断を下したわけであり、それは単にVIERAの進化を促すだけでなく、今後テレビにつながるエレクトロニクス製品すべての未来図を広げる英断だったと思う。

最後に、AV機器のプラットフォームとしてのFirefox OSの可能性として、昨年10月に発表された「Matchstick」という製品を紹介しておこう。

Matchstick

本機はテレビのHDMI端子に接続して使う、グーグルのChromecastのようなストリーミングデバイスだ。スマホやタブレットにインストールした対応アプリのインターネットコンテンツの視聴ができるだけでなく、DLNAネットワーク内のNASにアクセスし、動画や音楽の再生なども行うことができる。

昨年10月に発表された後にKickstarterでの資金募集が始まり、プロジェクトが成立したため、今年2月から初期生産分の出荷が始まる。「今後はテレビだけでなくストリーミングデバイスにもFirefox OSの採用製品が増えてくるかもしれない」と浅井氏は期待を語る。なお、今後はMatchstickの開発元が構築したプラットフォームをフィリップスやTCLなど大手企業が採用し、STBやスティック型端末などストリーミングデバイスを作る計画もあるという。

「これから搭載製品が少しずつ生まれ、広がっていくものと思いますが、エレクトロニクスの未来の広がりを実現するために最適なプラットフォームとして選んでもらえれば嬉しく思います」と浅井氏。

これまでは“第3のモバイルOS”というイメージがあったが、モバイルとオーディオビジュアルのコネクティビティも含め、Firefox OSはエレクトロニクスの可能性を広げる有力なプラットフォームの一つになっていくだろう。

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