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【特別企画】フロア型「SX-4」、ブックシェルフ型「SX-2」を徹底検証

英国Missionのスピーカーシステム「SXシリーズ」を大橋伸太郎が試聴する

2014/11/11 大橋伸太郎
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SX-4を早速試聴してみよう。明るく快活で音離れが抜群にいい。90dB(インピーダンス4Ω)と感度が高いこともあり、スケール感があってよく弾みよく歌う活気のある音質だ。Missionでサウンドデザイナーを務めるピーター・コモー氏はディーラー(オーディオ専門店経営者)出身だそうだが、エンドユーザーの心を掴む音質を知っているのである。軽く、俊敏に反応するウーファーとミッドレンジのバスレフ型スピーカーであるに本機には、従来のブリティッシュサウンドとも一線を画した躍動感ある音質を意図したに違いない。

ラックスマンのUSB-DAC「DA-06」などと組み合わせてSX-4を試聴した

トゥイーターはミッドレンジの下部に近接配置されている

吉田恵のパイプオルガン(SACDハイブリッド)の高音は、ややメタリックな響きになる。反面、オルガンの動作音や収録会場の暗騒音など情報量は多い。英国ブランドのスピーカーにしては、抜群に音離れがよい。しかし、JBLのように積極的に前に出るタイプでなく、水平、上下方向に広々した音場を描く。オルガンの低域には量感があり、ローエンドまで伸びないものの、その一歩手前で力強く盛り上げていく。

主な試聴ディスク。右から吉田恵(オルガン)『バッハ:オルガン作品集 VOL.1』(ハイブリッドSACD,EXTON)、ムター・アンネ・ゾフィー(ヴァイオリン)他『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5&9番』(ハイブリッドSACD,ドイツグラモフォン)、エマール・ピエール=ロラン(ピアノ)『バッハ:フーガの技法』(CD,ドイツグラモフォン)

ムターのヴァイオリン(SACDシングルレイヤー)は、明るく華やかに音が散乱する魅力的な表現。内省的な陰影感は控えめに、ヴァイオリンの倍音を豊かに艶やかにカラフルに描写する。ヴァイオリンのフォルテッシモはボーイングの繊細な質感があと一歩だが、価格を考えれば十分な解像感を持っている。ヴァイオリンと低弦楽器との対比は躍動的で、このスピーカーの長所が端的に現れる。

ピエール・ロラン・エマール(pf)のバッハ平均律(CD)。ここではミッド+トゥイーターを接近配置した独自の構成が活きる。音場をよく解きほぐして、シンプルなポリフォニー構造からピアニストの両手が醸し出す多彩な音色を抽出する。音場の奥行き感も豊か。音色が明るすぎると感じる方もいるかもしれないが、ピアノの発声と楽譜に分け入っていく明快な響きには説得力がある。

上限40kHzまでをカバーする本機が、ハイレゾダウンロード音源をどう再生するかにも興味が持たれる。ビル・エヴァンス・トリオの『ワルツ・フォー・デビー』(FLAC192kHz/24bit)は、エネルギーバランスにややムラを感じる部分もあるが、スコット・ラファロのベースの輪郭の鮮鋭感、ピアノの打鍵の立ち上がりを捉える解像感に、本機の特徴が発揮される。ウーファーと同口径のミッドレンジの存在感が、トゥイーターと近接配置されることでここでも一体感を増し、音質の方向性を決定づけている。

次ページ>開放的な音調の魅力に加え、バランス感覚にも優れた「SX-2」

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