4人の筆者によるオーディオ連載

藤岡誠のオーディオ・ワンショット【第3回】今こそ気になるレコードプレーヤー、ラックスマン「PD-171AL」

藤岡 誠

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2014年09月26日
■ラックスマンのアナログプレーヤーの歴史

若い方たちはご存じないだろが、ラックス→ラックスマンはアンプ専業のように思われている側面があるが、実はオーディオ専業メーカーの中で意外なほどアナログプレーヤー、ターンテーブルの生産に熱心だったのだ。

「PD555」(1980年発売)

それは1977年からスタート。その後、ラックスキットを含めて毎年新製品を展開。特に私の記憶に鮮明なモデルは1980年に発売された「PD555」とその姉妹機の「PD300」だ。両機はターンテーブルに“バキューム・ディスク・スタビライザー”を装備して大きな話題を提供した。勿論、これは世界で初めての開発であった。前者は付属の専用ポンプでディスクをターンテーブルに吸着。その上で2本のアームに対応。私はこのPD555にSMEの3012を2本取り付けて暫くの期間リファレンス・プレーヤーの一つにしたこともあった。PD300はPD555の姉妹機で、ディスク吸着用ポンプをキャビネット内に収容。小型化と操作の簡便化に成功した。

そしてラックスマンが凄かったのは1983年の「PD350+VS300(バキュームユニット)」他を最後に、アナログプレーヤーの生産から撤退したことだ。この決断は前年のCDのソフトとハードの登場が背景であることはいうまでもない。以降、CDプレーヤーの開発・生産に取り組んだ。

そして2011年。何と28年間の長い沈黙を破って突然登場したのがカートリッジレス型プレーヤー「PD-171」である。アナログレコード再生への想いが断ち切れないというところだろう。とにかく、ラックスマンにとって、まったく久し振りのアナログプレーヤーだから必然的といっても過言ではないほどの大きな話題を提供。注目度も大いに高まった。ところが何らかの事情があったのだろうが、「これからもっと」という矢先にPD-171は突然、市場から姿を消した。「一体どうしたのだろう?」と思っていたら、2013年に再び突然に本機「PD-171AL」が出現した。型番末尾の「AL」はアームレスを意味していることはいうまでもない。

アームレス型は日本のアナログプレーヤーでは珍しい型式だが、ラックスマンにとってはごく通常の型式なのだ。私はこのPD-171ALの発売を知った時、前述したPD300やそのバージョンアップモデルPD350+VS300を思い出した。PD-171ALはバキューム・ディスク・スタビライザーが省かれているものの、本格的設計、アームレスという型式、そして洗練されたデザインのイメージが受け継がれていたからである。特にアームレスに興味を持った。

「PD300」(1980年発売)

興味を持った理由は簡単で、アナログレコード志向のベテラン、オールドファンなら、必ずといっていいほど青春時代の想い出として、故障して廃棄を余儀なくされた自分好みに組み合わせたプレーヤーシステムから「アナログレコード再生への回帰」「いつの日か再び使うことがあるだろう」ということで、SME、SAEC、Ortofon、Grace、STAX、FR・・・などの“愛着のアーム”を取り外し大切に保管している方々が居られるからだ。また、既存のプレーヤーシステムに飽き足らない人たちにとっては好みのアームを新品・中古市場で探し求め、それらを装着して楽しむことができるわけで、PD-171ALはそうした方々にとっては“飢え”を癒せる製品となるわけである。

■PD-171ALは装着するアームの違いが明瞭に現れる

本機「PD-171AL」はアームレスのターンテーブルである。ここで詳細を説明する必要はあるまい。規格や内容などはラックスマンの公式サイトに詳しく紹介されているからここでは省略する。外観はPD-171とほとんど変わりがないように見えるが、ターンテーブルシャフトの軸受けや駆動モーターなどには若干の改良が施され信頼性を向上させての登場である。なお、ベルト駆動されるターンテーブルの重量は、前記PD350の9.5kg(アルミダイキャスト+黄銅製)には及ばないものの5kg(アルミブロックからダイヤモンドカッターで削り出し。最大肉厚は35mm)で国内メーカー/ブランドの製品では最重量級だ。さらに脚部のインシュレート効果も十分に高いことを報告しておこう。

「PPD-171AL」は、当然ながらアームは別売となっている

こちらはアーム付きモデルの「PD-171A」

アームベースはすべて別売。SMEの「3009R/3010R」用、FRの「FR64/64S/64FX」用、SAECの「WE-308」用、SAECの「WE-407/23」用、オルトフォンの「212S/212D」用といった加工済みベースはすべて¥26,250(税抜)。そして、自分で加工可能な穴なしのユニバーサル(汎用)ベースは¥21,000。合計6種類のベースが用意されている。ベース自体の交換は簡単確実で高精度。従って各種アームの使い分けが本機PD-171ALで可能なわけだ。なお、ベースの穴あけ加工は購入者各自が何らかの手法で行うことになる。もしかするとホームセンターのDIYコーナーで可能かも知れない。何れにせよ、ラックスマンで受け付けはしていないからそのつもりで……。

専用アームベースは6種類を用意。写真はSAEC WE-308用「OPPD-AB3」

試聴は今回、4種類のアームを使用。レファレンスのカートリッジとしてオルトフォンの「SPU Royal G MK II」を装着して行った。音質・音調についてくどくど書くのは好きじゃないからくくって述べるが、アームの種類の違いが明瞭に現れた。それは微妙な差異ではなく、また、良し悪しでもない。今更ながら、改めてアームの重要性を認識することになった。だからアナログレコード再生は面白い。


【筆者プロフィール】
<藤岡 誠>
大学在学中からオーディオ専門誌への執筆をはじめ、50年を越える執筆歴を持つ大ベテラン。低周波から高周波まで、管球アンプからデジタルまで、まさに博覧強記。海外のオーディオショーに毎年足を運び、最新情報をいち早く集めるオーディオ界の「百科事典」的存在である。歯に衣を着せず、見識あふれる評論に多くの支持者を得ている。各種の蘭の他、山野草の栽培も長年に亘る。

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