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高品位アンプシリーズのパフォーマンスを探る

「マスターサウンドワークス」思想を追求したプリメイン「I-03」と「I-05」を徹底試聴

公開日 2014/04/22 13:14 鈴木 裕
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2モデルのパフォーマンスを試聴して検証
■心地良い小音量と強力な駆動力が魅力の「I-05」

オーディオは比較することによってその特性が際立ってくるが、I-03とI-05の聴き比べも、とても興味深かった。同じ部屋(エソテリックの試聴室)で、プレーヤー(K-07)とスピーカー(タンノイDifinition DC10 T)を固定して、まずI-05を聴き、続けてI-03に替え、さらにI-05に戻して確認するというかたちで試聴を進めた。こうやって聴いてみると、両者の個性やどんな聴き手にマッチングする傾向なのかが鮮明に見えてきて、個人的にも楽しい試聴であった。

K-07

TANNOY「DC10 T」

I-05はホームオーディオという言葉がふさわしい、小音量時のほっとできるような聴き心地の良さと、いざ気合を入れて聴こうとボリュームを上げていった時の鳴りっぷりの良さという二面性を持ったアンプである。クルマにたとえるならば2リッターくらいの排気量を持った、よくできたスポーツセダンの存在といったらいいだろうか。ゆっくり走っている時は心穏やかにクルージングできるが、いざスポーティな走りをしようとアクセルをワイドオープンしてエンジンを高回転域にもっていけば、十分な加速とドライビング・コンシャスな運動性をもった走りができる存在にたとえられる。イメージでいうならば、家族がいる時にはBGMに音を流して雰囲気良く音楽の世界を再生し、家族が外出してひとりで音楽と向き合う時には強力な駆動力によって、ぐいぐいとグルーヴを刻むようなアンプである。

■「I-03」はストレートでダイレクトな音情報量を損失なく再現

それに対してI-03はレコーディングスタジオで採用されるようなアンプ直系の、ストレートでダイレクトな表現力の傾向が強いアンプだ。小音量時にもスタジオのラージモニターの振動板をがっちりグリップして情報量を失うことなく音楽を再生し、音量を上げてプレイバックすれば、まさにブースの中でミュージシャンがプレイしているような精彩感。ぐいぐいとビートを前に進めていくような推進力を伴った音楽表現力を持っている。クルマにたとえるならば、4リッター近い排気量のスポーツカーといったイメージである。エンジンが低回転でも路面のインフォメーションが高く、常にドライバーがステアリングをもってクルマをコントロールしていることを意識させられ、いざスロットルをワイドオープンさせれば痛快な加速を提供してくれる存在といったらいいだろうか。よくも悪くもBGM的に音楽を聴き流せるような感じではないのだ。

エソテリック試聴室にて取材を行う鈴木裕氏

どちらもマスターサウンドワークスという遺伝子をもって、何かを付加することなく音楽のありのままを再生する傾向ではあるが、性格の違いを持っている。鳴らすスピーカーの能率にもよるが、選択する時の参考にされたい。

■開発者のコメント
ティアック梶@音響機器事業部 副部長
加藤徹也氏

エソテリックI-05は、音楽制作現場のエネルギーと音楽の素晴らしさをストレートに味わっていただくことを目的とする「マスターサウンドワークス」の中核となるインテグレーテッドアンプです。音楽のダイナミズムを表現する低域を支える電源部は、音質を吟味したEIコア電源トランス、高信頼性電解コンデンサーを中心とした伝統的な大容量アナログ電源方式を採用し、どのような音楽信号にもビビッドに反応します。パワーアンプ・ブロックは、左右独立に配置された高効率クラスD方式で、発熱を抑え、スリムでハイパワーなアンプ設計を可能にしています。このエソテリック・ピュア・クラスDと名づけられたI-05のアンプ・システムはトップパネルに放熱用の通風孔を必要とせず、従来からのトップパネルに放熱用の穴が並んだアンプの外観イメージとは異なり、精密な機械加工を施したアルミによるボディの美しさを最大限に楽しんでいただけます。ディスクプレーヤーのKシリーズとペアで使っていただくことで、音楽的な純度が高く、開放感に溢れたパワフルなアンプの持ち味を最大限に楽しんでいただけるものと確信しております。


■「I-03」と「I-05」はどんな方にお薦めできるか?
アナログにも対応するなど多彩な機能を持ち
あらゆるリスナーに対応できる秀逸なモデル

I-05はリビングルームに置いて、BGM的に低い音量で音楽を雰囲気良く流しておくこともできるし、いざ音量を上げれば、エネルギッシュにグルーヴ感を表現できるアンプだ。フルバランス回路を持っているので、デジタルプレーヤーにもバランス出力を持った製品を選ぶとその美点がより発揮される。

I-03は小音量で音の情報量を克明に聴かせる方向なので、大出力ではあるが小音量再生にも向いているアンプだ。もちろんボリュームを上げれば目の前で演奏が繰り広げられるような臨場感や実在感を発揮するポテンシャルも持っている。

どちらもMMにもMCにも対応できるフォノイコライザーアンプを装備し、ヘッドフォン端子も持っている。スタイリッシュでマッシブなデザインには存在感があり、ボタンやツマミの少なさなど、一見シンプルに見えるが実は多機能でさまざまな使い方に対応できる秀逸な製品でもある。

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