HOME > レビュー > <IFA:レビュー>各社の“4K”画質を折原一也がチェック(1) − 国内メーカー編

パナソニック・ソニー・東芝の4K各製品の実力は?

<IFA:レビュー>各社の“4K”画質を折原一也がチェック(1) − 国内メーカー編

2013/09/08 折原一也
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
IFA 2013の薄型テレビ関連展示は、日本、韓国、そして中国のメーカーもほとんどのブースで4K(海外ではUltraHD=UHDと表記されることも多い)テレビを見ることができた。対応状況はメーカーによって様々ではあるものの、55V型以上のテレビについては概ね4Kを推進という方向性で一致している。

IFA 2013の会期直前には4K/60p入力に対応したHDMI 2.0が発表されたこともあり(関連ニュース)、4Kへの盛り上がりを改めて感じることができたが、各社の4Kへの取り組みを改めて振り返るとともに、各社ごとの画質についても紹介していこう。まず本稿ではパナソニック、ソニー、東芝の国内メーカーについて述べたい。

■4Kテレビは各社通常ラインナップ入り − 有機ELも続々発売

まず、AVファンとして注目はパナソニック初の4Kテレビ「TX-L65WT600」の発表だ(関連ニュース)。同社初の4Kテレビというだけでなく、HDMI 2.0対応による1080/60p(欧州規格では50p)かつ、クロマ情報4:4:4の信号を受けられる現在唯一のモデルとなっており、技術面での大きなアドバンテージを持った上でのスタートとなった。

4Kを大々的に打ち出したパナソニックブース

パナソニックの4KテレビTX-L65WT600

搭載パネルはVAパネルを採用しておりLEDエッジライト(サイド)を採用。画質エンジンは、VIERAのチームが同社のユニフィエをベースとして開発した、4K対応用のチップを追加したもの。4K領域でのフレームクリエーション技術による、なめらかな映像表示を特徴としている。

さて、そのTX-L65WT600の画質だが、まずIFA 2013の会場でのデモは「店頭で目立つ、派手めな映像が受ける傾向にある欧州の視聴者の好みに合わせた、日本で発売されるものとは異なる画質設定のもの」(説明員)であったということをあらかじめ断っておきたい。

4KネイティブソースによるフルHDとの比較デモでは精細感の差は歴然。前述の通り派手めで高域成分も積極的に伸ばした画質チューニングのため、輪郭がオーバーシュート気味ではあったが、4K解像度でも十分画調整の自由を持っていると前向きに受け止めたい。

スカパー!提供による60p映像のデモは、サッカーJリーグの試合映像を上映。サッカーの本場である欧州の来場者の注目度も高い中、従来に見たことないレベルのなめらかな映像を見せつけていた。例えるなら、60pで製作されたゲームの映像を初めて見た時に感じる驚きに近いものがある。4Kの画質評価は解像度だけでなく4K/60p映像視聴の環境が整ってからが本番、ということを強く感じさせられる。

スカパー!による60p/30p入力の映像比較でもは圧巻

なお同社は2Kモデルでプラズマテレビも展開しているが、「なぜ4Kテレビをプラズマにしなかったのか」という問いには、65型というサイズに対して4Kパネルを製作した際の輝度の確保がネックとなっており、PDPは152型のような超大型での4Kに向いている、とのこと。

さらに余談になるが、一般的に部屋の暗い欧州では、なめらかな画質で動きに強いプラズマディスプレイに根強いファンがおり、同社プラズマの中でも”大トロ”とも呼ぶべき高画質パネルを採用したプレミアムモデルである「ZTシリーズ」(※日本未発売)もセールスが好調とのことだ。

パナソニックのブースにはもう一つ、注目の4Kディスプレイとして、4K OLEDの試作機が3台展示されていた。詳しい内容についてはインタビュー記事(関連記事)にまとめているので参照して欲しいが、1画素単位で駆動できるキメ細かな映像、RGB各色の明所から暗所までリッチな色乗り、試作機ながらムラのない表示と、画質ポテンシャルの高さには思わず息を飲む。

パナソニックの4K OLED

ただし、現時点では同社姫路工場での試作機ラインでの段階であり、商品化にあたっては、まずどんな用途であれば4K OLEDの持つ価値を認めて、実力を発揮できるか、という用途を見極めている段階にあるとのことだ。

テレビではないが20型4Kタブレットの画質も非常によかった

■ソニー「X8500A」と「VW500」の画質は? − 東芝の50型4Kプロトタイプにも期待

ソニーのブースでは、4Kテレビとして「X9200Aシリーズ」の兄弟機とも言える「X8500Aシリーズ」(関連ニュース)が展示されていた。日本でも同時に発表されているので詳細はそちらの記事を参照して欲しいが、X9200Aとの大きな違いはスピーカーが9200Aの磁性流体採用のサイドスピーカーからアンダースピーカーとなり、オプティコントラストパネルではなくなった点だ。HDMI 2.0による4K/60p対応はX9200A/X8500Aともに年内のアップデートがアナウンスされている。

ソニーは4K配信と合わせて画質をアピール

X8500Aの画質だが、トリルミナスディスプレイによる高色域対応らしい映像はX9200Aに近く、鮮やかな発色は欧州の来場者からも注目を集めていた。なお、SPEによる「Mastered in 4K」のBDタイトルについては欧州でもキャンペーンとしてテレビ購入者へと届けられているほか、米国では既に10タイトル以上をそろえてサービスを開始している4K Media Player「FMP-X1」の欧州での展開も検討されている。

なお、ソニーもブース内で4K OLEDのデモ展示を行っているが、基本的には今年1月にCESで発表されたもの(関連ニュース)を欧州で初披露するという位置づけで、新たな情報はなかった。高画質であることには誰もが認めるところだが、現在ではパネル性能を発揮できる用途を模索している段階といったところだろう。

4K OLEDの展示内容は今年1月のCESと同じ

また、4Kプロジェクターの新モデル「VPL-VW500ES」(関連ニュース)も、シアタールームでデモを実施。同機はパネルには「VPL-VW1000ES」と同じ0.74型の4K SXRDパネルを搭載し、4,096×2,160ドット表示に対応。ランプが変更されておりDCIの色域はカバーしなくなるが、一方で内蔵の4K対応アップスケーリング回路は、新たに「Mastered in 4K」にも対応する。レンズも小型化され本体価格は約30%小型化された。さらに、新機能として色ずれを自動調整するオートキャリブレーション機構も内蔵される。

シアタールームで視聴した画質は、VW1000ESと同じく極めて緻密で高精細。140型スクリーンの目の前まで近づいて画素が見えないほどの情報量を持ち、4Kネイティブソースのデモだけでなく「Mastered in 4K」のBD「アメージングスパイダーマン」からアップコンバートして再生した画質も4Kネイティブと見紛う画質を出せていた。欧米での価格も発表されておらず日本導入もまだ不明だが、VW1000ESは日本国内では168万円という価格でも高画質を評価されていただけに、もし日本でもそれなりに手頃な価格で発売されれば人気モデルとなること間違いなしだろう。

欧州で発表された4K SXRDプロジェクター「VPL-VW500」

そのほか東芝は、日本発売済みの56/65型のモデルに加えて、50型の試作機を展示(関連ニュース)。同機はCEVOエンジン4Kを始めとした上位機の機能を組み込むことで、50V型モデルでも4K 画質のメリットを確認できたという。パネル仕様なども含めたプロトタイプの段階だが、今後の4Kテレビの小型化という方向性を示したという意味で期待したい。

東芝による50型4Kレグザのプロトタイプ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE