4K2Kの現状と今後の課題

【海上忍のAV注目キーワード辞典】第8回:4K2K − 高精細映像の普及に向けた課題とは?

海上 忍
2012年08月17日

【第8回:4K2K】

テレビやプロジェクターの分野で旬のキーワードとなっている「4K2K」。早い話が、次世代の高解像度映像環境を指すこと言葉だが、正式な規格として定義されていないだけに、さまざまな解釈が可能となっている。今回は、その4K2Kの現状と今後の課題について解説したい。

■4K2Kとは何者なのか?

一般的に4K2Kとは、映像における水平4,098×垂直2,160ピクセル前後の解像度を意味し、キロ(千)を示す記号「K」を用いた4,000×2,000の略記として用いられる。標準化団体などにより規格化されてはいないため、解像度が"およそ4,000×2,000"であれば支障はなく、実際3,840×2,160ピクセルの表示装置でも4K2Kを名乗る例がある。

ただし、欧米では通常4K2Kと略さず、単に「4K」と呼ぶことのほうが多い。これはハリウッドの大手配給会社や有力スタジオで構成される業界団体「DCI」の複号機に対する要求仕様も同様で、4,096×2,160ピクセルを「4K」と定義している。

4K2Kに対応した表示装置およびコンテンツは、ハイビジョン(フルHD/1,920×1,080ピクセル)の約4倍もの画素数を持つ。そこからFHD(Full HD)に対応した「QFHD」(Quad Full High Definition)と呼ばれることもある。

■4K2K時代に向けた課題

4K2Kはもはや未来の技術/仕様ではなく、すでに民生品レベルでも4K2Kを標榜した製品が登場している。2011年10月にはソニーからSXRDプロジェクター「VPL-VW1000ES」(4,096×2,160=約885万画素)が、2012年6月には東芝から55V型液晶テレビ「REGZA 55XS5」(3,840×2,160=約829万画素)が発売されるなど、映像関連製品におけるひとつのカテゴリが確立されつつある状況だ。

ソニー「VPL-VW1000ES」

東芝“REGZA”「55XS5」

しかし、それら製品が"はしり"に位置づけられることは確かで、普及期を迎えるにあたり解決されなければならない課題もいくつかある。

そのひとつが、映像入力環境が未整備なこと。入力端子という点では、4,096×2,160/24pや3D映像に対応した「HDMI 1.4(a)」がすでに定義されているが、この規格をサポートするBlu-rayプレーヤーは2012年夏の時点では販売されておらず、Blu-ray DISCの規格でも4K2Kの解像度は定義されていない。AVアンプの最新機種はHDMI 1.4aに対応し始めているが、環境が整うにはしばらく時間がかかりそうだ。

この問題に関しては、現在のところ解像度変換(アップコンバート/アップスケール)という手法である程度の解決を見ている。"ある程度"というのは、Blu-ray DISCのように情報量が多い(ビットレートが高い)ソースの場合、超解像技術など表示装置側の機構もあり原信号のテクスチャーに近づけることは可能だが、地デジ品質の映像ではパネルが本来持つ高い精細感をフルに発揮できないからだ。また、前述のREGZA 55XS5では別売の入力ボックス(THD-MBA1)でネイティブ4K表示を実現しているが、HDMIケーブル4本で接続するという、規格の過渡期的な印象を拭えない実装となっている。

もうひとつの課題は、テレビを含む表示装置の分野で盛り上がりつつある「高精細化」というトレンドへの対応だ。放送波を主要コンテンツとする"テレビ"の場合、いまや40インチ以上の大画面が必須という認識だが、1人用機器ではそこまでの大きさは必要とされない反面、画素密度の高さが重視されるようになってきた。テレビよりも肉眼からの距離が短く、文字など精細感が現れやすいコンテンツが多いパソコンの場合、特にその効果は大きい。

実際、メーカーも動き出している。まだ製品化はされていないが、2012 International CESでパナソニックは、20V型 IPSαパネル採用の4K2Kディスプレイを展示した(関連記事)。50V型で44ppi前後、40V型で55ppiという現行のフルHDテレビと比較すると、その画素密度は216ppiと圧倒的で、見る人をしてグラビア写真を見ているかのような錯覚を起こさせる。4K2Kは大型パネルとの相性もいいが、小型パネルでもまた必要とされている技術なのだ。

CESで参考出展されていたパナソニックのデモ。フルHDモデル(上)と4Kモデル(下)の比較展示を行っていた

■ハードウェア全般の底上げが必須

4K2Kというトレンドは、表示装置のいろいろな部分に影響をおよぼす。超解像技術に関していえば、当面はフルHDをアップスケール処理することでソースを調達するとして、映像補完技術のさらなる洗練が追求されると考えられる。いちどに扱われるデータ量がフルHD比約4倍になるのだから、CPU/SoCや超解像チップ自体の性能向上が求められるのも必至だ。

画素数だけの話ではない。現在DCIの規格では、4K2K映像のフレームレートは24pと定義されているが、いずれは放送波にあわせた30fps、フリッカー軽減目的で60fpsの規格も求められるはず。3Dコンテンツは60fpsでも不十分、120fpsは欲しいところだ。そうなればデータ転送量も増えるわけで、バス幅も広げなければならず、ハードウェア全般の底上げが必要になる。現在4K2K水準は30fpsまでしか対応しないHDMI規格も、当然世代交代が求められるだろう。

近年急速に普及してきたVODについても同様で、4K2K品質を達成しようとするのであれば、現在FTTH回線で一般的な下り最大100MB/秒という水準(実効レートは数十MB/秒程度)では心許ない。配給会社側のコンテンツも4K2K対応が求められるし、データ量が増えればサーバの増強も必要になるはずだ。

このように、4K2Kというトレンドが本格化すると、表示装置だけでなく再生装置、映像コンテンツ、ネットワークなどインフラにまで影響を及ぼす可能性が高い。次世代光ディスクなど今後登場するであろう規格を含め、今後の環境整備に注目だ。

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