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ホンダとソニーの独自技術が没入感を生む

<CES>「AFEELA Immersive Audio」を実車で体験!車室の限界を超えて広がる立体サウンド

公開日 2026/01/07 19:26 山本 敦
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ソニー・ホンダモビリティのスマートEV「AFEELA 1」が、2026年に米国カリフォルニア州での納車を開始する。その車は単なる移動手段ではなく「Mobility as a Creative Entertainment Space」、つまりは創造的なエンタテインメント空間としてのモビリティを目指している。

中核を担うオーディオシステムである「AFEELA Immersive Audio」はカーエンターテインメントの感動を変革するのだろうか。CES 2026に出展するソニー・ホンダモビリティのブースで、AFEELA 1の展示車両に乗って体験した。

ラスベガス・コンベンションセンターにて、ソニー・ホンダモビリティが出展したAFEELAのブースを取材した

オーディオにもこだわるAFEELA 1らしい「3つのサウンドモード」

AFEELA Immersive Audioを構成するコンポーネントや技術は、そのひとつひとつを長年に渡りソニーがホームオーディオやパーソナルオーディオの領域で培ってきたものであり、これらを「最高のリスニングルーム」を実現するために新しく構成し、必要な要素をブラッシュアップしている。まずはその概要を確認する。

AFEELA 1の車内には28個の高性能なスピーカーシステムと、これらを駆動するための2つのDSP内蔵アンプが搭載されている。

スピーカーシステムについては、シート以外の車体各所に埋め込まれた合計20基のキャビンスピーカーと、前方・後方に2座席ずつシートに内蔵する合計8基のシートスピーカーで構成されている。

詳しいスピーカーレイアウトはソニー・ホンダモビリティが昨年の12月9日に行ったプレス発表の通りだが、車内フロント側の3ウェイスピーカーシステム(ウーファー/ミッドレンジ/トゥイーター各2基)とセンタースピーカー、そしてサブウーファーを駆動させて、192kHz/24bitのハイレゾ再生にも対応する「Hi-Fi Audio」モードに筆者は注目した。

Hi-Fi Audioモード時には「リスニングゾーン」の機能からフロントの2座席、またはドライバー席単体のどちらかをスイートスポットに設定できる。フロント座席モードを選択すると、センタースピーカーも使って、ドライバー席と助手席のそれぞれの目の前に音像を定位させる。

CES 2026会場には、年内にカリフォルニア州への納車がスタートする「AFEELA 1」が展示。カラーバリエーション「Core Black」の車両が展示会で初披露された

8個のシートスピーカーは各座席のヘッドレスト付近に2個ずつ配置している。シートに腰掛けた時に、ちょうど耳もと後側にユニットが近接するようなポジショニングになっている。なお、後述するホンダとソニーの技術を融合した、AFEELA 1独自のノイズキャンセリングシステムにも、これらのシートスピーカーが一役買っている。

通常はトランク内などに配置するサブウーファーを、あえて車室の中央にあるセンターコンソールの下に配置した。センターコンソールに内蔵するサブウーファーは、2つのウーファーユニットを対向配置にしたアイソバリック方式により、筐体を小型化しつつ力強い低音を実現する。センターコンソール下に配置したことにより、重低音再生の精度を高めつつ、車内へ均等な低音を届ける。

車室の限界を超えて広がるサウンド

AFEELA Immersive Audioには、先に触れた「Hi-Fi Audio」モードのほかに、あらゆるコンテンツを圧倒的な没入感で再現する「Immersive Theater Sound」モードと、前方・後方のシートごとに異なるコンテンツのサウンドが楽しめる「Zonal Sound」モードを合わせた3つのサウンドモードがある。

Immersive Theater Soundモードは音楽・映画・ゲーム、そして2chからマルチチャンネルまであらゆるフォーマットで制作されたコンテンツに対応する、AFEELA 1のデフォルトのサウンドモードだ。シートスピーカーを除く20基のキャビンスピーカーをすべて使って立体音響を再生する。

ダッシュボードのパノラミックスクリーンから様々な設定をタッチ操作で変更できる

元が立体フォーマットで制作されていない、通常のステレオ音源から没入感あふれるサウンド空間が生み出せるよう、AFEELA 1にはソニーの独自開発による2つの音に関わる技術が採用されている。

そのひとつが音場合成技術「モノポールシンセシス」による音場拡張。そして、もうひとつがAI解析も活用する「音源分離」だ。

筆者はソニー(株)でAFEELAの開発プロジェクトにおける音質設計を取りまとめている、Mobility事業部門 チーフ音響アーキテクト 佐藤和浩氏への独自取材を行い、その詳細を聞いた。

モノポールシンセシスでは波面合成の原理を用いている。AFEELA 1の車内適所に配置した20基のキャビンスピーカーを連携させて、本来スピーカーがない場所に仮想音源をつくりだす。例えば「車室の外側」や「ダッシュボードの奥」など、「本来はスピーカーが存在し得ない場所」から音が聞こえてくるような体験が味わえるのだ。

ソニーのサウンドバーなどホームオーディオでは、スピーカー位置の自動測距と組み合わせて「360 Spatial Sound Mapping」として採用している技術の根幹となるシステムだ。

リアシートのドアに配置されたスピーカー

2chのステレオ音源は、ソニー独自の音源分離技術と3Dアップミキサーによりマルチチャンネル音源としてモノポールシンセシスにより空間音響レンダリングを行い、マルチチャンネル再生を行う。

ネイティブのマルチチャンネル音源については、最大7.1.4ch(12ch)の音声信号をアンプ側に送り込み、こちらもモノポールシンセシスにより空間音響レンダリング変換をかける。

本技術の体験価値は、波面合成技術によって仮想のスピーカーを創り出せるところにある。

AFEELA 1では最大12基の仮想スピーカーを、車室内を取り囲むように再現する。室内の空間容積よりも大きい空間を擬似的につくり、そこから再生される波面を20個のスピーカーでシミュレーションして再現する。

センターコンソールにサブウーファーを内蔵している

その結果、自動車の室内という物理的スペースの制約を受ける空間を超えて、より広い音場を再現しながら開放的なサウンドを楽しませる。

多くの自動車はドライバーが運転席の真ん中に座ってサウンドを聴くことはできない。近いドアスピーカーの音にリスニング感が影響を受けることから、クリエイターが意図した音源の配置や移動が再現できないデメリットもあった。

モノポールシンセシスにより、ドライバー、あるいは同乗するパッセンジャーがスピーカー配置の偏りによる影響を受けることなく、より広いリスニング・スイートスポットが得られる。

そしてもうひとつが「Zonal Sound」モードだ。

AFEELA 1の車内4席にそれぞれ2個ずつ搭載するステレオ・シートスピーカーを、ソニーがネックバンドスピーカーの開発などで培った独自の音響技術によって制御し、前方全体、および後部座席の左右の計3箇所で、それぞれに独立した音響空間を作り出す。

例えば助手席で音楽を聴きながら、後部座席に座る子どもたちがリアシートエンターテインメントシステムを使ってアニメを見る、PlayStationのゲームを遊ぶといった過ごし方ができる。

CESの会場では「Zonal Sound」モードによる立体音響再生を中心に試聴した。

2chのステレオ音源が車室の制限を超えて伸び伸びと響き渡る。ボーカルの音像は中央に力強く定位して、熱気あふれる楽器の演奏がパッセンジャーを包み込む。

ドライバーシートに座っているとサブウーファーのパワフルな振動が身体的にも伝わってくる。映画やゲームのサラウンド音声に力強く引き込まれた。

迫力ある立体再生が楽しめるZonal Soundモード

ノイズキャンセリングはホンダとソニーによる技術の結晶

AFEELA 1では、走行時にタイヤと路面の接触から生まれる低周波、低音域の振動に由来するロードノイズをキャンセリングするホンダの技術と、ソニーが持つ独自の中周波低減技術をハイブリッドで使用することにより、広範な帯域のノイズを消すことを目指した。

ソニーのノイズキャンセリング技術は、シャーシに3軸の加速度センサーを載せて、走行時に発生する路面からの振動情報を検知する。この情報を独自のアルゴリズムによりNCフィルターとして算出したうえで、シートスピーカーから逆位相のキャンセル信号を送出する。

中音域のノイズ、キャビン内のこもり音や風切り音など、従来の車向けのノイズキャンセリング技術では消し切れなかった帯域のノイズを消せる効果がある。

一般的なシステムよりも広帯域かつ精密なノイズ低減が可能になり、音楽の微細なニュアンスを損なうことなく、静寂の中でのエンタテインメント体験が得られるという。

今回、CES 2026のAFEELA 1は静的展示だったことから、この機能の実力は残念ながら体験できなかった。また機会をあらためて報告したい。

ホームオーディオで培ってきたスピーカー技術を搭載

AFEELA 1が搭載するスピーカーにもまた、ソニーがオーディオコンポーネントの開発により培ってきた技術が活きている。AFEELA 1が採用するスピーカーユニットに、ソニーによる最新の開発成果が投じられた。

「多層カーボンファイバー複合振動板」と「カーボンファイバー混抄振動板」の2つは、「ソニーの理想に一歩近付いた振動板材料」であると佐藤氏は自負する。ソニー(株)の材料開発チームが完全にオリジナルな高音質素材をつくった。

多層カーボンファイバー複合振動板は、上下層のカーボン強化繊維材料が中層の独立気泡発泡コア材を挟みこむサンドイッチ構造を採用。

軽量・高剛性を備えながら高い内部損失を併せ持つという、自然界では二律背反する物性であるがゆえに、本来は存在し得ない特性を持たせて、広い帯域でフラットな特性を獲得している。この振動板はAFEELA 1のフロントミッドレンジとウーファーユニットに採用する。

AFEELA 1のフロントミッドレンジおよびウーファーに採用された多層カーボンファイバー複合振動板

ほかのスピーカーユニットに採用するカーボンファイバー混抄振動板は、高弾性炭素繊維とポリプロピレン繊維を混抄して、シート状に仕上げた材料を熱成形して振動板とした。

一般的な振動板素材と比較して高い弾性を実現したことにより、広い周波数応答と滑らかで自然な音を特徴としている。

温度変化の激しい車内に搭載するスピーカーとして、高い耐久性能も持たせている。マイナス20度から、100度を超える高温環境でも振動板の変形が起こらないように設計されている。

滑らかなサウンドを生むカーボンファイバー混抄振動板

2つの振動板はホームオーディオには採用されたことはないが、その特性から今後アウトドア向けスピーカーなどに採用されることを期待したい。

ぶれないサウンドをかなえる専用設計のエンクロージャー

さらにAFEELA 1では、各スピーカーユニットに最適化された専用エンクロージャーを設計。ユニットを格納したうえで、ドアパネル等に配置している。

ソニーの佐藤氏によると、エンクロージャーがあることによって各スピーカーの低域再生の限界が担保され、引いてはロードノイズキャンセリングや波面剛性による音場の再現性向上にもメリットが生まれるという。

ソニー・ホンダモビリティのCESブース内に特設された、AFEELA 1にも採用されたオーディオコンポーネントによるリスニングスペース

一般的に車載スピーカーの場合はユニット背面から逆相の音が発生し、それが正面側に回り込むことにより音のキャンセリング現象が発生する。

AFEELA 1ではエンクロージャーがこの現象を防ぐことで、スピーカーユニット本来の性能を発揮し広帯域再生を実現する。また外来ノイズがスピーカーの振動板を通して車内に流入することも防ぎ、同時に車外への音漏れも低減する。

佐藤氏ら開発チームが目指したのは、単に「音が良い車」ではなく、モビリティの付加価値を最大化する「クリエイティブなエンタテインメント空間」としてのサウンドだ。

2026年の納車開始時、このシステムは米国のユーザーに新しい移動の喜びを提供することになる。CESの会場でAFEELA 1の斬新なカーサウンドを体験して、筆者も米国から先行する形で販売が始まるAFEELA 1のオーナーがうらやましく感じられた。

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