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HDR技術戦略・小倉氏にインタビュー

<CES>消費電力はそのまま高輝度4,000nit実現。ソニー「Backlight Master Drive」の秘密

公開日 2016/01/08 12:12 折原一也
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ソニーが2016 International CESで披露した4Kテレビの新しい高画質化技術「Backlight Master Drive」。「Ultra HDプレミアム」に求められるピーク輝度1,000nitを大幅に上回る、最大4,000nitまでの表示を可能としている。今年のCES会場で披露されたHDR対応テレビで最高輝度となる、モンスター級の高画質化技術だ。

ソニーのプレスカンファレンスで大々的に発表された「Backlight Master Drive」

「Backlight Master Drive」の技術の詳細は山本氏の取材による記事で既に紹介しているが、今回CESの会場で披露された背景を、ソニーでHDRの技術戦略を担当する小倉氏に伺うことができた。

ソニービジュアルプロダクツ(株)技術戦略室 シニアプリンシバルエンジニアの小倉敏行氏(左)と、ソニービジュアルプロダクツ TV事業部 商品企画部 統括部長の長尾和芳氏


さて、今年のCES会場での映像トレンドは、“ネクスト4K”であるHDR関連技術一色。しかし、HDRってなぜ必要なの?という基本的な疑問を持っている人も多いことだろう。

これは以前からドルビーの取材などを通して紹介している通り、自然界と人間の目、BDや放送などのパッケージ、そしてディスプレイとの関係のねじれにある。

「人間の目は10の5乗(ただし瞳は閉じたり開いたりするので実質的には10の12乗まで見ることができますが)まで認識できるので、10の5乗、つまり10万対1のコントラストがあれば、人間を満足させられる画質になります。

ハリウッドで撮影しているソニーのCineAlta 4Kカメラ「F65」は、10の5乗のレンジは既に確保しているのですが、ブラウン管時代のなごりで輝度レンジは10の3乗に留まっていました。

じゃあ、どうすればいいかというと、伝送系が10の5乗に対応すれば人間も満足するだろうと。これを実現するのがHDRなのです」(小倉氏)

HDRを理解する上でもうひとつ語るべきものが、色の問題だ。色域というと、映像技術に詳しい読者の皆さんはBT.709からBT.2020といった文字通りの色域を思い浮かべると思うが、実際の色は色域と輝度の組合わせの立体図のようなかたちで使える色数も増える。これをカラーボリュームと呼ぶ。

「ソニーのX300のようなマスターモニターがHDRかつ広色域対応なのに対して、液晶テレビでは低輝度側で色域が縮退し、ホワイトバランスをコントロールしにくいのが弱点となっています。現状、LEDで部分駆動をすると、低輝度は色保持ができますが、高輝度化とピクセルごとのコントラストはできていません。それをバックライト技術の進化で解決するものが『Backlight Master Drive』です」(小倉氏)

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