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「情」と「意」をあわせもつ良作 − 『愛を読むひと』の魅力を引き出すテレビとは

公開日 2010/02/03 18:46 大橋伸太郎
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■本作を楽しむためにはバランスの良いテレビが必要

本作の映像で第一に感心するのは、1955年、1966年、1988年、冷戦終了後の1995年という戦後ドイツの4つの時代を混在させて描きながら、映像(撮影)に断層を作っていないことである。人間の営みに清算も終わりもなく、時間は21世紀の今も続いているのである。作為のないオーソドックスで重厚なフィルム映像で、重苦しい物語が綴られていくが、こうした一貫性が浮かび上がってこそ作り手のメッセージが真摯に伝わるというものである。そのためには「P50-XP035」のようなフルハイビジョンの情報量を損なわず表現できるバランスのいいテレビが必要だ。

第二に、ハンナのアパートをマイケルが最初に訪れる冒頭のシーンから後半まで、一貫して白々と強い外光と暗い室内の中の人物の対比、逆光撮影、半逆光撮影が多用されている。溶暗した表情は人間の隠し持つ過去、秘密、二面性や葛藤の表現だが、劇場でのフィルム上映の場合、効果が発揮しやすく、家庭のテレビにとっては非常に厳しい映像である。さらに本作の場合、人物(俳優)が完全な黒に近いシルエットになって、映像の手前に来る構図がしばしば出てくる。シリアスドラマにしてあまり例がない明暗のコントラストの強い映像なのだ。日立のフルハイビジョンプラズマテレビ「P50-XP035」は、家庭用ディスプレイとしてこの難題を楽々乗り越え、映像の狙いを表現しきって驚かせる。

本機に搭載の「フルHDダイナミック・ブラックパネル」はコントラスト比40,000対1を達成しているが、実際の視聴感はそれをずっと上回る。デフォルト(工場出荷の標準設定)では、力が有り余ってしまうので、別記の数字までコントラストを下げた。本機は日立が一貫して手掛けるプラズマ方式の大画面だが、それも本作を見る上で映像の力になっている。バックライトを持つ液晶方式の場合、本作の映像の強いコントラストでは、明るい部分が飽和して影の部分との連続感がなくなって写真のキリヌキ状になり、しばしば不自然な映像になる。これはフィルムではありえない。自発光で究極のローカルディミングであるプラズマ方式だから、映像のユニフォーミティ(連続性、一体感)が得られる。

『愛を読むひと』の映像の特徴の三つ目は、ハンナとマイケルが自転車旅行し、最後にバーグ弁護士(マイケル)が初めて娘と心を開いて語り合うベルリン郊外の自然が美しく撮影されていることだ。

しかし、ほんの50年前にそこは凄惨な戦場だった。終戦間際に怒涛のように押し寄せる連合軍によって多くのドイツの民間人や女性が戦争犯罪の犠牲になった。戦争は勝者敗者の隔てなく罪と犠牲者を生みそれは容易に消えるものではない。ドイツ人ならきっと映像の素朴で汚れない美しさと裏腹な悲惨を思い浮かべずにはいられないだろう。

「P50-XP035」は現在のプラズマテレビの中で色彩の自然なバランスという点で最も優れている。本機で見る、この映画の中のドイツの山野は美しく悲しい。人間の業と対比させてそれを描いているのである。並のテレビではここまでは伝わらない。『愛を読むひと』のような映画はこれからもヨーロッパでは作られるだろう。日本や中国はというと、いささか心許ない気がする。

繰返して見るべき映画がある。本作はその一つ。「P50-XP035」が今回、多くのことに気付かせてくれた。

【今回の設定値】
映像モード シネマティック
明るさ +8
黒レベル -1
色の濃さ -4
色合い +1
シャープネス -6
色温度 低
ディテール 切
コントラスト リニア
黒補正 切
LTI 切
CTI 切
YNR 切
CNR 切
色温度調整 しない
MPEGNR 切
映像クリエーション フィルムシアター
シネマスキャン 入
色再現 リアル
DeepColor 切

大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。2006年に評論家に転身。

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