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30年にわたるデノンのディスクプレーヤーの歴史の集大成

デノン「DCD-SX1」はこうして誕生した! − 開発者1万字インタビュー

公開日 2013/10/04 12:00 ファイル・ウェブ編集部
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デジタルの痛みを知っているデノンだからこそできること

ALPHAプロセッシングから「AL32」へと連なるビット拡張の進化は、デジタルの再現性を次のステージへ推し進めた。しかし、そこにはまた別の壁があった。それは、「いかに正確にDACを動かすか」ということだ。

「デジタルというのは、録音時のA/D変換と、再生時のD/A変換が1対1になって初めて実現できるものです。これがずれてしまうと、正確な再現はほど遠いものとなります。このD/A変換の問題が、ハイビット化や録音技術が向上していく反面で、大きな問題としてクローズアップされてきたのです」(米田氏)

ハイビット化や録音技術の向上が進むにつれて、「DACをいかに正確に動かすか」という別の大きなテーマが浮かび上がってきたのだという

さらに米田氏は付け加える。「DACを正確に動かすためにはどうすればいいのか、真剣に考えました。デノンのデジタルオーディオ技術においては、いかに自然音に近い波形を再現できるかという要素と、DACをいかに正確に動かすかという要素が、両輪になっているのです」

DCD-SX1は、新世代の電流出力型32bit DACに、専用I/V変換の開発を加えることで、DCD-SXを超えるD/A変換能力を獲得した。CDが登場してから30年、デジタル録音を初めて40年という歴史を踏まえた上で、DCD-SX1においては、その両輪をそれぞれ解決するに至ったのである。

DCD-SX1のブロック・ダイアグラム。192kHz/32bit対応DACをモノモードで2基搭載している

DCD-SXを開発したときには32bit化 DACの選択肢が限られていたのだという。DCD-SX1の32bit DACは第2世代となるが、このDACは先行してDCD-1650REにも搭載された。ただし、DCD-SX1はDACをモノモードで使用しており、この32bit DACを2基搭載している。

「DCD-SX1の一番最初の試作を作ったときに感じたのは、エネルギーの強さでした。そのまま製品化できるレベルの試作機ではなかったのですが、このエネルギー感は絶対に活かせると思ったのです。コンテンツ自体が持っているエネルギーをいかにリスナーに伝えるかが我々の使命だと思っているだけに、これはエネルギーはすごいなと思いました」(米田氏)

ハイレゾによる音楽配信が広がる中で、31年目を迎えたCDというメディアをDCD-SX1の開発陣はどう捉えているのだろうか。

「CDがハイレゾ音源に比べて情報量が劣るのはスペック上明らかなことです。だからこそ重要なのは、いかにロスをなくすかということ。44.1kHz/16bitという限られたスペックだとしても、本機のようなハイエンドプレーヤーにおいては、聴感がハイレゾに劣るというのは許されません。そのために当然「AL32」があるわけですが、前提条件として重要なのは、CDからデータを正確に読み取ってロスなくアナログ段で波形に戻せるかということ、そしてジッターを極小化するという基本を徹底することです。」(出口氏)

ハイレゾ主体になったとしても、今まで集めた何百枚、何千枚というCDを持っているユーザーがいることには変わりない。出口氏はDCD-SX1を開発する上で、「CDのスペックなら音が悪くても仕方ない、という考えは通用しない」ということ強く意識してきたという。米田氏も「CDをずっと楽しみたいというユーザーが待っている以上、CDをきちんと再生できる最良の状態を提案し続けたい」と続けた。

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