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30年にわたるデノンのディスクプレーヤーの歴史の集大成

デノン「DCD-SX1」はこうして誕生した! − 開発者1万字インタビュー

公開日 2013/10/04 12:00 ファイル・ウェブ編集部
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コストを下げながら「DCD-SX超え」を果たした
新開発のクロックモジュール


本機の発表会では、様々な技術が包括的にブラッシュアップされたことがDCD-SX1の進化の要であると説明されていた。DCD-SXからの様々な進化の中で、マスタークロックの性能向上は特に大きなものだった。

「DCD-SXのクロックは、オーブンに入ったOCXO(恒温槽付水晶発振器)でした。発振精度が極めて高く、位相雑音(≒ジッター)も少ない優れたクロックでしたが、非常に高価でした。一方で、DCD-SX1には、USB-DAC搭載が決まった時点でマスタークロックを44.1kHz系と48kHz系で2系統搭載すると決めていました。クロックが2系統必要となると、高価なOCXOを2個積むことは難しい。そこで、コストパフォーマンスも考慮しながら、さらに位相雑音の低いクロックの開発にチャレンジすることになりました」(出口氏)

デノンの開発陣は2012年のDCD-1650REで、クロックの位相雑音に改めて注目していた。クロックの発振精度に対する位相のズレは、時間軸上で見ると音質に悪影響を与えるジッターとなる。つまり、位相雑音を減らせば、D/A変換におけるアナログ波形の再現性が高まるのだ。

DCD-SX1においては、さらに性能を向上させた新開発クロックモジュールを44.1kHz系と48kHz系で2系統搭載している

クロックの進化は、DCD-SX1の音質技術の要である「Advanced AL32 Processing」(以下「AL32」)のさらなる精度向上にも寄与した。「AL32」は、独自のデータ補間アルゴリズムによるハイビット・ハイサンプリング化技術だが、ここでもマスタークロックが使用されている。位相雑音を減らしてクロック精度を高めることで、「AL32」のアナログ波形再現も、より忠実性が増すことができた。

ちなみに、今回のクロックモジュールは、DCD-SX1のために新開発されたものだ。コストパフォーマンスに優れ、かつ位相雑音も低いというが、DCD-SXのOCXOと比べるとどうなのか。率直に出口氏に聞いてみた。

「位相雑音は、DCD-SXのクロックに比べて10%ほど性能が向上しています。DCD-SXを開発した当時は、高精度なクロックのコストを下げることは不可能でした。しかし、5年の歳月を経て、技術革新やDCD-1650REにおけるノウハウもあり、性能を上げながらコストを抑えた新クロックモジュールの開発に成功したのです」(出口氏)

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