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30年にわたるデノンのディスクプレーヤーの歴史の集大成

デノン「DCD-SX1」はこうして誕生した! − 開発者1万字インタビュー

2013/10/04 ファイル・ウェブ編集部
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HD Master Clock DesignでUSB再生も最高峰を実現

本機の目玉のひとつは、HD Master Clock Designの実現だ。これにより、ディスク再生のための超高性能マスタークロックを、USB-DACをはじめとする外部デジタル入力でも共有することができる。それでは、ディスク再生とデータ再生では、音作りの思想は異なっているのだろうか。


デノンの開発陣はUSB-DACを搭載するにあたり、全ての信号ライン、電源、グランドでパソコン側とアイソレートするという地道かつ確実な方法を採用。パソコンからのノイズの混入を排除した
「ディスクから読み取るか、パソコンから送られてくるかという違いはあれ、音源が同じならデータも本来は同じものです。しかし、再生環境でサウンドは変わります。USB接続においてパソコンからのノイズ流入を防ぐには、パソコンとUSB接続する根元の段階でアイソレートを施すのが理想ですが、DSDまで扱う本機では上限一杯の伝送速度が求められるため、それを実現できるデバイスが現時点では存在しません。結果、全ての信号ライン、電源、グラウンドで地道にパソコン側とアイソレートするという方法が採用されました」(出口氏)

本機のUSB-DACはアシンクロナス伝送に対応するので、パソコンではなく、DCD-SX1のマスタークロックでUSB伝送ができる。ディスク再生と同一の最高レベルのマスタークロックがUSB-DACにおいても適用されるのだ。「HD Master Clock Designで外部信号に対してDACの動作を抑え込んでいるというのも、他のメーカーにはない取り組みです」と米田氏は胸を張る。

USB-DAC部を含むデジタル基板は、厳重なケースに封入されている。素材はシャーシと同じ銅のカッパータイトだ。デジタル基板に対してはノイズ処理が大事なので、ケースに入れることで余分な輻射が出ないような設計された。

カッパータイトのケースに封入されたDCD-SX1のデジタル基板

「USBデバイスはノイズの発生源にもなるので、CDプレーヤーとしてみたときに、USB-DACは邪魔者なのです。CDを再生するときには、他の外的なノイズは確実に遮断したい。それならデジタル回路は丸ごと一個の基板に入れ込んで、蓋をしてしまおうと言う発想が浮かびました。デジタル基板の直下にアナログオーディオ基板などがありますが、そこにデジタル部が悪影響を与えるのをケースで遮断しています」

ハイエンドのディスクプレーヤーとなると、CD再生のクオリティだけをとにかく求めるユーザーもいるはずだ。そうしたオーディオファンの要望も、本機はフラグシップとして、しっかりと押さえているのである。

内部のノイズ低減にも徹底的に気が配られた。44.1kHzと48kHzのマスタークロックをそれぞれ引き回す必要があったので、その点でもノイズ対してシビアな対応が求められたという。

HD Master Clock Designにより、ディスク再生時はもちろん、USB-DACを含むデジタル基板全体がマスタークロックに同期する

「DACの動作にはマスタークロックが必要ですが、HD Master Clock Designはさらにデジタル基板全体がマスタークロックに同期します。デジタル基板に精度を落とさずクロックを伝送するために、正弦波のように波形を滑らかな形にして伝送して、矩形波に戻してから各部のデジタルデバイスに供給するという手法を採用しました。マスタークロックは発振回路のスピードが速いので、高周波ノイズを出します。いくらクロック性能が良くても、高周波ノイズのばらまきによる悪影響を避けるために、クロックの伝送方法にも気をつけているのです」(出口氏)

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