デノン・ピュアオーディオの新スタンダード機

DENON“1500SE”シリーズを聴く − SX譲りの高音質化技術を取り込んで進化したサウンド

レビュー:大橋伸太郎
2010年04月26日
デノンのピュアオーディオ・コンポーネントの人気スタンダードシリーズに、SACDプレーヤー「DCD-1500SE」、プリメインアンプ「PMA-1500SE」が登場した。今回は発売前に、そのサウンドインプレッションをいち早くお届けしよう。

■オーディオのトレンドを吸収して進化を遂げた、デノンの銘・スタンダード機

つらつら思うに、ピュアオーディオの低迷を言う前に製品の高すぎる価格について考え直すべきではないか。百万円のアンプやCDプレーヤーを買うのは、<オーディオ愛>と別次元で相当に特殊である。いや、オーディオ業界に対して一般的感覚からすれば五十万円だって高いはずである。趣味性イコール排他性になってはいけない。そうした中、エントリーから中上級までユーザーサイドに立って製品をきめ細かく用意するメーカーがデノンだと思う。

デノンの中堅価格帯の代表的なモデルが久方ぶりに刷新された。プリメインアンプ「PMA-1500SE」と、SACD/CDプレーヤーの「DCD-1500SE」で、いずれも価格は94,500円(税込)である。両機はプリメインアンプ、プレーヤーの分野でベストセラーとなっている定番機種である。


DCD-1500SE

PMA-1500SE
PMA-1500SEの価格帯は、元を質せば全段直結(OCL)純正コンプリメンタリー回路を搭載した1972年の「PMA-500」にまでルーツは遡り、1997年に現在モデルの直接の原型「PMA-1500R」が発売になっている。一つ前の世代が「PMA-1500AE」で2005年に発売された。一方、「DCD-1500SE」のルーツは1985年に遡る。ブラックフェイスで10キーを装備、CD時代の開幕を印象付けた「DCD-1500」「DCD-1100」「DCD-1000」という一連のベストセラーをご記憶だろうか。その後、兄弟機種1650と絡みながら型番変更を重ねて2005年の「DCD-1500AE」でSACDに初対応を遂げた。共に5年間をかけての刷新である。

デノンからの情報では、上級機種にグレードアップするのでなく5年間ずっと新製品を待つ固定ファンが大勢いるのだそうだ。日本のオーディオ趣味が今だ健全である証拠だが、中級だからといって製品に手抜きがなく、“1500番”が音の満足を与え続けていることの表れでもある。だからこそメーカーのプレッシャーの程が思いやられる。SACD/CDの録音技術と音質、システムとして相まみえるスピーカーシステムや再生環境は過去5年進化し続け、そして次のモデルチェンジがこの分なら5年先であることを考えると、それをも設計に盛り込まなければならない。今回のモデルチェンジの意味は継続客の多い中堅機種であるからこそ重大だ。

DCD-1500SEは今回USB入力を備えたが、5年先においてSACD/CDプレーヤーという現在の形式のままであるべきかも予測が付きにくい。逆にいえばDCD-1500SEはデノンのディスクプレーヤーにとっての区切りなのである。一方のPMA-1500SEだって次世代がアナログアンプである保証はない。だから、PMA-1500SEはデノンがSX等の開発で蓄えたノウハウと技術を、可能な限り盛りこみながら現時点でベストを追求したオーディオアンプのメルクマール(中間達成点)的な内容になっている。ともあれ、1500番コンビは新世代へ代替したのである。両機の内容については別記を参照してほしい。

DCD-1500SEのリアパネル

DCD-1500SEのフロントパネルにはUSB端子を搭載。iPod、またはUSBメモリーに保存した音楽ファイルのダイレクト再生に対応している

PMA-1500SEは前世代機からの順当な発展型だが、デノンアンプのもう一つの流れであるHDオーディオ対応サラウンドアンプで近年試みられた、シンプル&ストレートを旨とする“ミニマムシグナルパスサーキット”や“メカニカルグランド”、低重心設計のコンセプトを強く反映した構成で、ハイレスポンスでシャープ、ワイドレンジな再生音を狙っている。一方、SACD/CDプレーヤーのDCD-1500SEは、前世代からの変化がもっと鮮明で、“Advanced AL32 Processor”を初搭載するなど、昨年オーディオの話題を独占したフラグシップDCD-SXからの技術的なフィードバックの大きい製品である。

PMA-1500SEのリアパネル

■プリメインアンプ「PMA-1500SE」の進化したポイント

プリメインアンプPMA-1500SEは、PMA-S1、PMA-2000から採用の“UHC-MOSパワー素子”を搭載し、パワー部シングルプッシュプル構成である点は前作から変わらない。UHC-MOSはバイポーラ型の3倍の急峻な立ち上り、立ち下がり特性が描き出す音に特徴がある。今回、新たに電源回路の整流用に“大電流型ショットキー・バリア・ダイオード”を採用し、前世代に対し約1.5倍の高速動作とハイパワーを得ている。

機構面では、メカニカルグランドに工夫が見られる。設置位置を各セクション毎に下げ(51mm→38.5mm)基板全体の位置が低重心化し振動の影響を抑え、安定感のあるクリアな音質を得ている。また、パワーアンプの基板とヒートシンク内側の接合部に、新たに銅箔プレートを介在させてUHC-MOSの温度上昇を抑えた。デュアルELコアのトランス部には二層のベースシャーシを新たに採用し振動対策を徹底している。ヒートシンクは共振モードが一定にならず分散するようにフィンの厚みを3パターンとしローテーション配列した。これはPMA-2000から継承する仕様だ。こうした改良で前作に比較して900g質量が増加、約一万円の値上げとなった。

PMA-1500SEの筐体内部

やはりPMA-2000から降ろした技術要素が、大型27ディメーター電動ボリュームの搭載にある。前作は16ディアメーターで、実際にノブを回してみるとねっとりした滑らかさ、きめ細かさが違う。世代を重ねて1500を愛用していきたいユーザーには最も大きな変更点かもしれない。

PMA-1500SEは大型27ディメーター電動ボリュームを搭載する

■SACD/CDプレーヤー「DCD-1500SE」の進化したポイント

SACD/CDプレーヤーDCD-1500SEは、DACのデバイスがバーブラウンからAKMに変わった。DCD-SX等上級機からの流れである。次にデノンオリジナルのアナログ波形再現技術がAL24からAL32へグレードアップした。やはりデノンオリジナルの技術コンセプトだが、DACマスタークロックデザイン(192kHz/32bit対応の高精度DACをマスターに、クロックを各デバイスへ供給する)にフロー上の新構成が見られる。ジッター発生を低く抑えたマスタークロックを32ビットDACの直前に配置し、正確なDA変換を実現している。

天板を外しての回路レイアウトの眺めは前世代機と一変。従来はデジタルパワー部、アナログパワー部、信号処理部が一つの基板上にあったのに対し、今回の刷新で全て分離した上で、最短経路での引き回しを実現した。また、AL32をメカ裏のサーボプロセッサー部と同一基板上へ移動し、信号処理の最適化を達成。機構面の刷新も大きい。

DCD-1500SEの筐体内部

メカの支持部の厚みを42mmから32mmへ減らしメカ全体を低重心化した。本機は上級機種の薄型メタルメカでなくモールドタイプの在来型だが、きめ細かく手を加えた。異種素材組み合わせのハイブリット構造S.V.H.(Super Vibration Hybrid)メカで、トレイ部は通常より高分子の塗料によるプロテイン塗装。膜厚が出るため防振効果が高く、空気中の水分を保存するため静電気が起きにくい。かくして大小の改良の積み上げで、DCD-1500SEはAEと比較してカタログスペック上で大幅な進歩を遂げた。

DCD-1500SEのリモコン。1500AEのものから改良が加えられている

DCD-1500SEのディスクトレイ。通常より高分子の塗料によるプロテイン塗装としている

■濃厚さとエネルギー感がより高まったサウンド


今回の試聴リファレンス。スピーカーにはDALIの「Helicon 800 Mk2」を使用した
東京・恵比寿のD&MショールームでPMA-1500SE、DCD-1500SEを組み合わせて試聴を行った。試聴ソース毎の印象は別記するが、大型フロア型スピーカーシステム、DALIの「HELICON 800 MK2」を駆動して、低域の再生能力の高さと描き出す音場のスケール、立体感に感心させられた。忘れていけないのは、両機とも94,500円という価格帯の中級機であること。LR間を音像がぎっしり埋めつくす“濃さ”は、一昔前なら高級アンプでもなかなか描き出せなかった。エネルギー感も実に豊か。5年間という時間に見合う進歩である。前世代機のコンビとの比較を試みると音色面でも変化が見られる。

DCD-1500SEの場合、DACの変更が再生音に反映され明るさと鮮鋭感を増している。PMA-1500SEは、エネルギッシュであること、再生帯域の拡張が歴然として低重心化で低域の据わりがよくなったが同時に高域も大きく伸張したので、バランス的にはフラットでいてダイナミック。最後に、デノンユーザーが求めるある種の“剛直さ”はちゃんと備わっている。デノン定番の1500番はオーディオを地道に愛する声なき声に応えて、着実かつ深い進化を遂げている。


デノンの恵比寿リスニングルームにて試聴を行う大橋氏
セルゲイ・エーデルマン(pf)の『リスト:ピアノ・ソナタ/シューベルト:さすらい人幻想曲』(SACD)は、オンマイク録音でピアノの広大な音域を収めた最近出色のディスク。グランドピアノの原寸大再現に挑戦する格好のソースである。価格上は中級機であるPMA-1500SEとDCD-1500SEは、大型フロア型のHELICON 800 MK2を痛痒も、もどかしさも感じさせずにドライブ。冒頭の静寂の中から現れる単音の大地に根を下ろしたように深々と沈んだ響きに、S/Nの優秀さを確認。音程のぶれのない正確さ、響きの減衰のリニアさ、自然さはデジタル処理を始めとするプレーヤーの進境と堅実な仕事を体感させる。正直価格を忘れさせる見事さだ。

続く第二主題提示部の激しいダイナミズムは、デノンファンが求めるピュアな“剛直さ”が漲り、PMA-1500SEが動的表現に優れドライブ能力に、クラスを越えた力を発揮することを確認した。アンドラーシュ・シフ(pf)の弾くベートーヴェン「ワルトシュタイン」(CD)は、DCD-1500SEが搭載したAL32が力を存分に発揮、ピアノの細やかなパッセージが録音会場の空気と睦みあい、玲朧と輝くさまを生き生きと描写する。

ユベール・スダーン指揮、東京フィルのブルックナー交響曲第7番(SACD)は、PMA-1500SEのパワー部の音場表出の確かさが遺憾なく発揮され、第二楽章アダージョのバイオリンと低弦の寄り添い方が美しく、フレージングの合わせ込みに生命感を吹き込みしなやかに歌わせる。前世代機PMA-2000AE+DCD-2000AEの音質も念のため比較試聴した。5年の歳月はやはり大きい。ダイナミックレンジの拡大、Fレンジの拡張は完全な新設計を思わせた。DCD-2000SEでのDACの変更による音色の変化も大きく、明るく鮮鋭、克明感のあるコントラストの濃いより現代的な音調に発展したといえよう。


◆筆者プロフィール:大橋伸太郎
1956年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。2006年より評論活動を開始。西洋美術、クラシックからロック、ジャズにいたる音楽、近・現代文学、高校時代からの趣味であるオーディオといった多分野にわたる知識を生かした評論に、大きな期待が集まっている。趣味はウィーン、ミラノなど海外都市訪問をふくむコンサート鑑賞、アスレチックジム、ボルドーワイン。


【デノン製品の問い合わせ先】
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