ニュース
HOME > ニュース > AV&ホームシアターニュース
”ホームシアターファンに刺さる”AI搭載4Kプロジェクター「W4100i」「W2720i」、BenQの専門店向け説明会
編集部:松原ひな子BenQは、東京・代官山のシアターギルドにて、全国のインストールショップに向けた4Kプロジェクター “Wシリーズ” の内覧/セミナーイベントを開催。イベントでは「W4100i」「W2720i」の2モデルをお披露目し、開発経緯やプロフィールの説明、ならびに実機によるデモンストレーションなどが行われた。本稿では、本セミナーイベントのレポートをお届けする。
BenQはDLPプロジェクターの世界シェア率No.1を12年連続で達成
イベントは製品セミナー、デモンストレーション、営業施策について説明という3部構成。はじめのセミナーパートでは、ベンキュージャパンの洞口 寛氏、吉村千潤氏、羽鳥大輔氏に加えて、本社テクノロジーマネージャーのEric Tsai氏も登壇し、BenQブランドの紹介、2モデルの製品特徴、そして開発の経緯やコンセプトなども紹介していた。
BenQは液晶モニターやプロジェクターなどを中心に展開している台湾発の映像機器ブランドで、日本市場においては2001年から商品販売を行なっていると、副社長の洞口 寛氏は説明する。
液晶ディスプレイベンダーのQisdaや、パネルメーカーのAUOなどを含む32社によりグループが構成されており、技術開発力や製造の安定性に優位性を持つブランドでもある。なお、日本支社は東京・神田に所在している。
プロジェクター分野では、チップの登場当初からDLP方式の製品開発に注力。2009年にISF認証を取得してからは、とくに色の再現性に焦点を当てて開発を続けているという。
2021年にはアジア太平洋地域で4Kプロジェクター市場No.1を獲得したほか、DLPプロジェクターの世界シェア率No.1を12年連続で達成。現在は世界シェア率15%を目指して展開を行なっているとのこと。
「大画面におけるHDR映像のクオリティを再定義」する2モデルを投入
続いて、実際に新製品の開発を手がけているEric Tsai氏(以下、Eric氏)が、プロジェクター開発における設計思想と、W4100iならびにW2720iのコンセプトについて説明した。
「BenQは『真の色彩を伝え、視聴者にもっとも深い感情を与える』という理念のもと、映画制作者の意図に忠実に描写するプロジェクターの開発に取り組んでいる。2017年に初めてのHDR対応プロジェクターを発表して以降、とくに大画面でのHDR映像において、段階的な進化を経て画質を追求してきた」
こだわりの1つは色域の広さ。映画制作の標準規格であるDCI-P3への対応にこだわり、2019年にはDCI-P3を100%カバーするHDR対応プロジェクターを業界で初めて実現。新製品のW4100iはDCI-P3を100%カバーしている。
また、プロジェクターが正確な色を実現するには、正確な色の再現に加えて、正確な位置への描画が必要であると説明。優れたカラーマッピング技術を実現するための技術として、独自の「Cinematic Colorテクノロジー」を採用している。重要な要素の一つにLED光源の採用と光の波長の正確なフィルタリングを挙げており、これによって高輝度と広色域を両立したと明かす。
色の入力と出力が同等になるよう正確なコントロールを行ない、カラーパッチ(色見本パターン)との色差をDelta E<2.0に抑制することで、正確な色の描写を実現したという。
また、すべての製品固体において品質を保証するため、工場出荷時には1台ずつカラーキャリブレーションを実施。本体には個別にレポートが同梱される。
次に取り組んだのは、細部のディテールとコントラスト表現の強化する、優れたトーンマッピングの実現。
W4100iならびにW2720iでは、画面全体の輝度の分布を分析して明るさの階調を広げる処理を行う「グローバルコントラストエンハンサー」、映像全体を1000以上の小さなエリアに分割し、それぞれの領域に対してグローバルコントラストエンハンサー同様の処理を個別に適用する「ローカルコントラストエンハンサー」、さらにLED光源の出力制御とソフトウェア制御の連携でシーンごとにコントラストを調整する「Dynamic Black」を組み合わせた、独自の「HDR-PROチューニング」が搭載された。
本技術によってコントラストを最適化し、映像の暗い部分は黒潰れを抑えディテールを保持、また明るい部分はハイライトが飛ぶことがなく、より立体感のある映像表現が可能になるという。
加えて、W4100iは新たに「ダイナミックトーンマッピング」を搭載。シーンの明るさに応じてトーンマッピングを最適化することで、明暗どちらのシーンでも情報量を損なわず、忠実な描写を実現するとした。
Eric氏はW4100iならびにW2720iについて、これまで積み重ねてきた高画質技術によって、色/ディテール/コントラスト/階調までも、制作者の意図に忠実な映像を大画面で再現し、「大画面におけるHDR映像のクオリティを再定義する」モデルであるとコメントしていた。
「W4100i」「W2720i」に新映像モード「AIシネマ」を搭載
プロダクトマネージャー 吉村千潤氏は、W4100iとW2720iのプロフィールやそれぞれの特徴について、「AIが導くホームシネマの最適解」と題して説明。とくに新しい技術であるAI機能と、インストールに深く関わる設置性にフォーカスした内容となっていた。
BenQは家庭でもプロ並みの映像体験を楽しめる環境をつくることを目標に、社内にAIと製品の融合を専門に研究する専任チームを設け、2年以上前から注力してきたという。
W4100iならびにW2720iには、設置環境や視聴コンテンツに応じてAIが映像を補正することで「どのような環境下でも制作の意図に忠実な描写を再現できる」という新しい映像モード「AIシネマモード」が搭載された。
AIシネマモードは、本体に搭載された高性能プロセッサーが映像をフレーム単位で解析、AIが人の顔/空/建物/植物/炎/夜景など、画面内のさまざまなオブジェクトを認識し、再生中の映像にとって、どれくらい補正をかけるのが適切なのか判断する。
個別のオブジェクトに対して、それぞれ明るさ/色/コントラスト/シャープネスなどを調整することで、映像全体を最適化することができる機能となっており、この2段階の処理によって、自然な質感やシーン全体の空気感は保ちつつ、より印象的な表現へと補正を行うことができるという。
加えてW2720iのAIシネマモードには自動調光機能を採用。本体に搭載された明るさセンサーによって、視聴環境の明るさに応じた補正が可能だとしており、リビングなど完全な遮光が難しい空間においても、暗室での視聴時と同等の画質を再現するとアピールしていた。
設置性については、2モデルとも1.3倍ズームを装備。100型の投写においてW4100iは2.5 - 3.3m、W2720iは2.2 - 2.9mと、3m以下の距離で実現できる。投写比はW4100iが1.15-1.5、W2720iが1-1.3。さらにW4100iは上下0-60%/左右±15%、W2720iは上下±5%のレンズシフトを備えており、さまざまな環境に適応が可能。
ほか、海外発表の際に専門店やインストーラーから反響の大きかった機能として、11段階のホワイトバランス調整が可能な、色温度調整機能が挙げられていた。
2モデルともデバイスはDLP、光源は4LEDを採用。W4100iの明るさは3,200ルーメン(ANSI)、色域はDCI-P3 100%/Rec.709 100%をカバー。W2720iは明るさが2,500ルーメン(ANSI)、色域はDCI-P3 90%/Rec.709 98%をカバーする。またHDR PROチューニングによる高画質機能にも各種対応しているが、ダイナミックトーンマッピングはW4100iにのみ搭載。
また前述したEric氏の紹介通り、出荷時には1台ずつキャリブレーションを実施。W4100iにはDCI-P3 100%、W2720iにはRec.709 98%をカラーターゲットにしたカラーレポートが同梱される。
<News>
注目機能「ダイナミックトーンマッピング」の効果もデモ
THX/ISF認定ホームシアターデザイナーの資格を持ち、評論家としても活躍している鴻池賢三氏のナビゲートで、実機による視聴デモンストレーションも行われた。
まずはW2720iのAIシネマモード+自動調光機能の効果を実演。手元が見える程度に天井照明を点灯し、YouTubeで4K/HDRの自然映像を再生する。プロジェクターに搭載されている明るさセンサーを物理的に覆う/離すことで暗室/明室の切り替えを擬似的に再現し、光環境に応じた補正の違いを解説した。
鴻池氏は「単に周囲の明るさだけを感知して決め打ちの調整を行っているのではなく、視聴環境のさまざまなデータを取得した上で補正を行うのがポイントです」と解説し、照明がある(明室である)ことで薄くなってしまった色や平坦に見えていた部分のコントラストが、AIシネマモード+自動調光機能の補正によって、暗室(レファレンス環境)での再生時、つまりBenQが意図する本来の画質に近い映像に補正されていることを説明した。
次にW4100iの画質をチェック。まずダイナミックトーンマッピングのオン/オフによる効果を4K UHD BD『Spears & Munsil Ultra HD ベンチマーク(2023)』をつかって確認した後、最大4,000nitsの高輝度映像が収録されている4K UHD BD『ハドソン川の奇跡』にて、実際の映画作品での情報量の違いを実演した。
「ダイナミックトーンマッピングによって白飛びした部分の画がでてきたときも、映像のほかの部分にはほとんど影響がないという点がポイントです。全体の自然な描写を保ったまま、きちんと情報を拾うことができます」と鴻池氏。
また最後には、HDR映像の高難易度ソフトとして知られる4K UHD BD『マリアンヌ』にて、総合的な画質の完成度を確認した。
正規取扱店制度を導入し、ホームシアター市場に注力していく
最後に、パートナーセールスアカウントマネージャーの羽鳥大輔氏から、営業施策について説明があった。
ホームシアター製品は通常のBenQ製品とは少し異なる販売網を設定しており、ディストリビューターとしてODS(株)を立てつつ、専門店からの問い合わせなどは羽鳥氏が直接コミュニケーションするとのこと。また、新たにホームシアター向けプロジェクターの正規取扱店制度を導入し、継続的な連携を提案。「改めてホームシアター市場に注力していきたい」とコメントしていた。
なおW4100iは量販店での登録はせず、施工/インストールに強い販売店のみに注力。販売店とのより活発な協力体制を築いていく。ほか、製品の修理はサポートセンターと郵送でのやり取りが基本となるが、出張引き取り/修理についても社内で検討中していくとのこと。
ELITE SCREENSブランド紹介
ほか、デモンストレーション用のスクリーンとして採用されたエリートスクリーンの製品担当者からも紹介があった。
エリートスクリーンはアメリカ・カリフォルニアを本拠地とし、世界各国に計4つの自社工場を保有するスクリーンブランド。自社開発による高品質かつ手頃な価格のプロジェクションスクリーンを展開している。
またラインナップの豊富さも特徴で、電動/手動/パネルといった通常のタイプをはじめ、組み立て式のポータブルタイプやアウトドアタイプなども用意するほか、生地はホワイトマット/グレイマット/サウンド/耐外光をそれぞれ揃えている。
イベントに参加した販売店/インストーラーのコメント
■ホームシアター工房 東京のインストーラー 曾根竜斗氏のコメント
BenQの営業担当者様と対面で挨拶ができたことは、非常に大きな収穫。従来までは、踏み込んだ話をするのがとても難しい中で販売を継続していたが、今回のセミナーに参加したことで、機器の仕様や在庫などについても、営業担当者様から円滑に対応できるという声を聞くことができ、今後の期待も高まった。
セミナーにおいては、BenQ様の初回のイベントということもあり、ブランド説明などにも比重を取っていたが、もっと新製品の特徴に触れられるよう、旧モデルとの実機比較や機構/素子/性能などの向上点などにフォーカスを絞り、単純明快なセミナー内容にしても、スムーズで良かったと感じた。
ハイエンドモデル「W4100i」の映像を実際に観ると、AI判定によるトーンマッピング機能「ダイナミックトーンマッピング」の効果が一目瞭然で、各所の質感やディテールが上昇していたことが確認できた。また、120インチを3m程度の距離で投写可能なのは、BenQブランドならではのアドバンテージなので、ぜひ継続していってほしい。
今後希望する進化として、さらなる大口径レンズを使用したフラグシップモデルの登場や、電動ズーム/電動シフトを備えた上位機種も期待したい。画質はもちろん、さらに実用性や設置性の高さに踏み込んだ設計のモデルが登場してくれると、インストーラー側からも提案しやすく、導入できる機会が増えると考えている(曾根竜斗氏)
■ライフスタイルのインストーラー 浅野好弘氏のコメント
今回のBenQ主催のセミナーに参加し、さっそく上位モデル「W4100i」の展示導入を決めた。上位ながら価格設定のバランスも良く、今回初めて搭載されたAI機能は、セミナーで実演していた「ダイナミックトーンマッピング」をはじめとする画質面での効果、AIに関連する機能の名称も含めて、ホームシアターのお客様に刺さると思う。
ブラッシュアップしてほしい点としては「W4100i」のレンズの位置。セミナーで紹介していたエントリーモデルの「W2720i」のようにセンターレンズしてもらえると、設置性をはじめ、よりお客様に提案しやすくなるだろう。
また今回、海外向けには展開している最上位モデル(こちらはセンターレンズ)の日本導入が見送られたとのこと。ぜひ今後、日本にも導入していただきたい。
現在、ホームシアター向けプロジェクターは国内ブランドだけという時代ではなくなってきており、今後はさらに海外のグローバルブランドの勢いが増していくであろうと実感できたセミナーであった(浅野好弘氏)
■のだや郡山本店のインストーラー 湯川裕久氏のコメント
「W4100i」「W2720i」の両モデルとも設置性がよく、3m以下の距離で100型を投写できるのには驚いた。同じような投写距離を実現するモデルが少ない中、対応できるケースの幅が広がったといえる。とくに「W4100i」は上下左右のレンズシフトを搭載しており、かなり設置性が高い印象。リビングや専用室のほか、寝室への導入にも向いている。
スピーカーとGoogle OSが標準付属のため、プロジェクター単体で映像コンテンツを楽しめるのも魅力。「AIシネマモード」は手軽に使うことができ、画質も本格的なクオリティとなっているため、ホームシアター初心者は満足感や納得感を得やすいだろう。カジュアルに始めてみたい方も導入しやすい価格帯であり、コストバランスも取れている。
DLPプロジェクターに共通していることだが、カラーブレーキングは少し気になる。観賞を邪魔するほどではないが、ひとによっては一度気になりだすとずっと気になってしまうものなので、ユーザー自身で対処が必要となるだろう。
今回はさまざまなシーンで使用できるモデルであったが、スピーカーやGoogle OSなどを省いて、さらに本格的なホームシアターに導入しやすい上位モデルがラインナップされ、BenQプロジェクターによる選択肢が広がることを期待している(湯川裕久氏)
■トムテックのインストーラー 浅田友英氏のコメント
BenQブランドは、PC等のモニターディスプレイメーカーとして2000年初頭から認識しており、ホームプロジェクターとしては2015年の「HT3050」の発売から意識はしていた。
BenQプロジェクターは、お客様の要望で取り扱った実績はあったが、直接の取引が無かったこと、また弊社の取り扱いポリシーとして、製品の信頼性、企業の継続性、アフターメンテナンスを鑑みて、主力製品として扱ってはいなかった。
お客様が個人で購入して自力設置する場合は、国内外のブランドから多くのプロジェクターが登場しているが、ホームシアター・プロジェクターのインストール市場は、エプソン、ビクター、ソニーといったブランドが現状多く占めている。そういった中で、BenQはインストーラーに頼る所のあるプロジェクターを出していると言える。
今回のセミナーで紹介いただいた上位機種のW4100iは、エプソンの「EH-LS12000」「EH-LS11000」が比較されるモデルだと想定している。同価格帯の各社の上位モデルは、レンズをセンターに配置していることが多いが、W4100iのレンズ位置はコンパクトさを重視した結果と考えている。
天井設置など検討すると、レンズシフト量はもう少しほしく、フォーカス/ズームは本体でのダイアル方式であるため、リビングシアターなどの天井設置時では、設置後の調整が少し難しい印象を受けたが、100型画面を2.5 – 3.3mで映し出せる投写距離は、短焦点要素があって良かった。
一般的なプロジェクターは100型画面を投写するのに3.0m以上必要な場合があるため、買い替え時の機種変更で提案しやすい設置仕様として捉えている。
W2720iは、JVC「LX-NZ30」やTVS REGZA「V7Rシリーズ」などが対抗馬となると考えており、デザイン的にセンターレンズを採用していることに優位性を感じている。投写距離は100型で2.2 – 2.9mの短焦点仕様であるため、狭小空間でも大画面を投写できる点はメリットだと言える。
買い替え時のモデルチェンジでは少々気を遣う部分であり、フォーカス/ズームの操作も天井設置の場合は気になる点。
両モデルに共通する部分では、「AIシネマモード」がどれだけユーザーの支持を受けるか楽しみなところ。また、VODサービスの視聴機能がプロジェクター側に備わっているのも利点。国内のお部屋事情にあった、「小さな部屋でも大画面」がより現実味を帯びたスペックになっているため、次期モデルにも同仕様が続くことを望んでいる。
本セミナーではW4100iとW2720iの2機種に限り、特別に取り扱ってほしいという趣旨を感じたが、ホームシアターユースのプロジェクターの選択はお客様とインストーラーとで決めているため、今後は他にもラインナップしているモデルも紹介してもらいたい。多種多様のモデルを紹介してもらえると、お客様に提示できる選択肢も大きく広がる。
こういった新しい取り組みは、市場をより活性化させ業界の発展につながるととらえているので、今後の継続を期待している(浅田友英氏)
- トピック
- BENQ