【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
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毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

シンプルなデザインとシンプルな操作性、そして「デュアルウェーブガイド」などによる迫力の音を兼ね備えた「Wave Music System」。その音の魅力を、山之内 正氏がレポートする。


音楽を聴いているとき、目を閉じていても再生システムの大きさはほぼ予想がつくものだが、ボーズのシステムにはそれが当てはまらないことが多い。なぜそうなのか、思い当たる理由は2つある。低音が思いがけず豊かに響くことと、音が広がる空間の大きさだ。

なかでもWave Music Systemは外見とサウンドの印象が大きく異なるシステムだ。あらかじめ知らされることなく音を聴いたら、これほどコンパクトなシステムから音が出ていることが信じられない人も多いと思う。

スケールの豊かさは前身のWave RadioやWave Radio/CDから受け継いでいるのだが、実際には世代交代を経て確実な進化を遂げている。特に、低音の音色、質感、スピード感が明らかに向上していることは誰が聴いてもすぐに気付くはずだ。いったいどうやってここまでの進化を実現したのだろうか。

BOSE 小型高音質オーディオ
Wave Music System
¥74,970(税込)
ダイレクト販売限定商品
>>ボーズの製品紹介ページ
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本体とマッチしたデザインの専用CDチェンジャー¥41,790(税込)
>>ボーズの製品紹介ページ
iPod内の音楽をWave Music Systemで聴けるiPod接続キット。¥18,900(税込)
>>ボーズの製品紹介ページ

比較してみると、従来機種との違いは想像していたよりもずっと多いことがわかる。外見上はディスクのローディング方法がスロット式に変わった程度だが、見えない部分は大きく変わっている。

まず、豊かな低音を引き出すためのウェーブガイドは、本機では音響管を左右それぞれのユニット背面に配置するデュアルウェーブガイドに変更された。以前のモデルは1本の音響管で低音の量感を引き出していたが、本機は1本あたり66cmのウェーブガイドを左右対称に2本設けることで、低音の明瞭さやスピード感を改善。音が変わったと感じる第一の理由はこの仕組みにありそうだ。

もともとウェーブガイド方式は再生帯域の拡大に力を発揮するが、本機は同じ筐体サイズでさらに1/2オクターブ下まで再生できるというのが自慢だ。1/2オクターブといえばベースの弦が低い方に1本増えるよりも広いのだから、効果の大きさは想像できる。磁気回路を強化した新開発ドライブユニットの採用はエネルギー感の改善に寄与しているはずだ。

独自技術「アコースティック・ウェーブガイド・テクノロジー」を採用し、豊かな低音再生を実現

フロント部はもちろん、背面までシンプル。電源ケーブルをつなぐだけですぐ音が出る

DSPを利用した高度な信号処理を行うことに加え、アンプも全面的に見直しを図り、効率の優れたデジタルアンプを新たに採用した。Wave Music Systemのようなコンパクトなオーディオシステムでは熱対策などが課題になるため、その点で有利なデジタルアンプを選択したのであろう。

Wave Music System本体は、これ以上はないというぐらいシンプルに仕上げられている。FMアンテナを兼ねた電源ケーブルをつなぐだけですぐに使い始められる手軽さは、機材や配線があふれている筆者の試聴室では異色の存在。都心からそれほど離れていないこともあり、FM放送の受信には特に外部アンテナを必要としなかった。

操作は全てリモコンで行い、大きさの違う2つのリモコンを付属している
新色のチタニウムシルバー

操作ボタンは一切なく、ディスクの取り出しや音量調整も含めてすべてリモコンで行う。同一機能でサイズだけ異なるカードタイプのリモコンを2つ付属させる手法は紛失対策にもなり、面白いアイデアだ。そのほか、本体と合わせて4枚のCDを連続再生できるCDチェンジャーやiPod接続キットなど、実用的なアクセサリーが揃っている。シンプルなシステムをカスタマイズし、機能を拡張していくのは楽しそうだ。また外観も、プラチナムホワイト、グラファイトグレーに加え、9月1日から加わったチタニウムシルバーという、どんなインテリアにもマッチするカラーラインナップを揃えている。

今回試聴したCD。奥から
ジャンマリア・テスタ「Altre Latitudini」
ジュリアン・ブリーム「JULIAN BREAM Plays DOWLAND and BACH」
ジョルディ・サヴァール指揮/ ヘンデル「水上の音楽」

Wave Music Systemのサウンドは、聴き手を束縛しない、いい意味での緩やかさをたたえている。アコースティックギターやボーカルなどシンプルな編成の音楽ほど、その良さが実感できるのは、声や楽器の音色を素直に再現することに理由がありそうだ。

いろいろ聴いたボーカルのなかでは、特に男性ボーカルが良かった。イタリアのジャンマリア・テスタのボーカルは発声が自然で力みがなく、渋い味わいのある音色をストレートに引き出してくる。ベースの風通しのいい低音を支えにしているので、低い音域でも声の響きがこもらない点にも感心した。ギターやサックスは必要以上に張り出さないので、ささやき声や息遣いまで微妙なニュアンスと表情が聴き取れる。

ベースが伸びやかに鳴るとはいっても、結局は小型システムの限界があると思うかもしれないが、このシステムの低音が実際のサイズを超えるものであることはたしかで、むしろ設置場所やセッティングを工夫して、その豊かな量感を適度にコントロールするのがポイントである。筆者宅ではWave Music Systemの周囲、特に後方を壁との間に50cmほど空間を空けて設置したが、そのセッティングで狙い通りのバランスになった。また、あまり低い位置に置くのではなく、座ったときの胸元より上ぐらいの高さに設置すると自然な広がり感が出てくる。

今回は山之内氏の自宅で試聴を行った。コンパクトな筐体は持ち運びや設置もしやすく、部屋の好きな場所に置くことができ便利だ

ヘンデルの『水上の音楽』は、響きの豊かな演奏会場の雰囲気を連想させるスケールの大きな空間が心地よい。大型システムが再現する音場とは広がり具合が異なるものの、適度な距離を置いて聴いていると、フワッと広がる自然なステレオ感を体感することができた。ホルンやトランペットの音色は残響と溶け合って適度な柔らかさがあり、音量を大きめにして聴いても刺激的な音を出さない。これは家庭用の一般的な小型ステレオが最も不得意とする部分だが、Wave Music Systemは難なくこなしている。

ジュリアン・ブリームがJ.S.バッハやダウランドを演奏したCDは50年以上前のモノラル録音だが、ギターの音に伸びと柔らかさがあり、古さを感じさせない。往年の録音を大型装置で再生すると周波数レンジの狭さなどが気になって物足りなく感じてしまうことが多いのだが、Wave Music Systemは目の前の演奏を聴くような親密なサウンドを再現した。

見かけはコンパクトだが、Wave Music Systemを置くと、まわりの空間には不思議な広がりが生まれる。そしてそのゆとりが聴き手をリラックスさせ、音楽との距離を近付けてくれるのである。

■執筆者プロフィール
山之内 正 Tadashi Yamanouchi

神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター、ピュアオーディオの専門誌を中心に執筆。PCの造詣も深く、PCとAV機器がクロスオーバーする分野の取材なども精力的に行っている。

大学在学中よりコントラバス演奏を始め、東京フィルハーモニー交響楽団の吉川英幸氏に師事。現在も市民オーケストラに所属する。また年に数回、オペラ鑑賞のためヨーロッパへ渡航。音楽之友社刊の『グランドオペラ』にも執筆するなど、クラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

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