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| 毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。 |
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2007年7月7日から9月17日まで、大阪の国立国際美術館で開催されるサウンド・アートの第一人者、藤本由紀夫氏の個展「藤本由紀夫展+/−」にて、ボーズの一体型オーディオシステム「Wave
Music System」213台を使った壮大なオブジェが展示されている。今回はこの作品が完成するまでの軌跡を辿りながら、藤本氏のアートの魅力に迫る。 |
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歌謡曲の歌詞などでよく知られる大阪の中ノ島。国立国際美術館は2004年に万博記念公園からこの地に移ってきた。完全地下型という構造は大阪の中心部という立地を考えれば必然なのであろう。この美術館でとてもユニークな作品展が開催されるという話を聞き、開催日を翌日に控えたプレス招待日に現地を訪れた。
フットサルのコートがすっぽりと入ってしまうくらいの展示室に足を踏み入れた瞬間、まるで大きなエアコンが設置してある空調室にいるような錯覚を覚えた。決して耳を劈くような轟音ではないのだが、広々とした空間をノイズが満たしている。そのノイズを耳にしたとき、ある種の既視感、いやこの場合は“既聴感”と呼ぶべきだろうか。よくよくその音に耳を傾けてみるとホワイトノイズであることに気づく。AVアンプに搭載されたスピーカーのコンフィグレーションなどで使用される「ザー」とか「ゴー」と聴こえる測定用のノイズである。そして、その音の発信源は“サウンド・アーティスト”として、国際的に高い評価を受ける藤本由紀夫氏の最新の作品であった。
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▲近代的な空間内に藤本氏の“サウンド・オブジェ”が佇む国立国際美術館の展示室 |
▲幅10m、高さ3mの巨大なラックに231台のWave
Music Systemが収納された、藤本氏の最新作品 |
藤本由紀夫氏は1950年、年名古屋市生まれ。1975年、大阪芸術大学音楽学科卒業。電子工学を利用した音楽活動を経て、80年代半ばより身の回りのオブジェを用いた「音」を発するユニークな作品を制作し、「サウンド・アート」と呼ばれる新たな表現領域の第一人者として国際的に良く知られている。国内外で個展やグループ展を多数開催。近年では、2001年の第49回ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館代表作家の一人に選ばれた。また、西宮市大谷記念美術館で一年に一日だけを会期として、1997年から2006年までの10年間にわたり実施された「美術館の散歩」では、展示室のほか、ロビーや地下室、学芸員室、和室、倉庫、庭園など、美術館全体を作品化し、関西では新聞の社会面で取り上げられるなど、大きな話題を呼んだ。
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◆藤本由紀夫氏
サウンド・アーティスト。1950年、名古屋市生まれ。1975年、大阪芸術大学音楽学科卒業。現在は京都造形芸術大学教授としても活躍する。藤本氏は“サウンド・オブジェ”と呼ばれる、音を発するオリジナリティあふれる作品により、これまでにもユニークな作品を数多く発表し、国際的に高い評価を獲得してきたアーティストだ。今回レポートするBOSEのWave
Music Systemを使った作品は「藤本由紀夫展+/−」で初めて発表された新作としても大きな注目を浴びている。 |
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今回、藤本氏が取り組んだ作品は、幅10m、高さ3mのラックに収められた、213台ものボーズ社製サウンドシステム「Wave
Music System」による巨大な音楽のインスタレーションである。冒頭でも触れたように、作品から聴こえてくるのはホワイトノイズなのだが、実際には1台1台のWave
Music Systemが異なる楽曲を再生しているのだ。事実、作品に近寄って、適当に選んだ1台のWave
Music Systemに耳を当ててみると、ささやくような音量ではあるが、どこかで聴き覚えのある楽曲が聴こえてくる。
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▲1台1台のシステムから異なる楽曲が再生され、展示スペース内をホワイトノイズが包み込む |
▲プレス記者会見に臨む藤本氏。作品の製作過程についても細かな解説を行った |
作品の製作過程を藤本氏にたずねたところ、事前にコンピューターでシミュレーションを行い、全体の音量が最大でも暗騒音に対し25dB程度になるように、それぞれのシステムの音量を設定しているのだという。展示会のテーマにもなっている「+/-(plus/minus)」には、一つ一つの音を足して行き、一つの塊となった音を作る作業と、反対に塊から一つ一つの音を削り取っていくという作業の両方を同時に見せ、現代社会における“ノイズ”と人との関係を表現しようとする創意がある。プレス招待日に開催された記者会見の中で、「ノイズ自体が作品なのか」という記者からの質問に対し、藤本氏は「現代生活において私たちはよく“ノイズを消したい”と言うが、本来“ノイズ”という音は存在しない。複数の音が幾重にも重なり合い、聴き手である人間がそれぞれの音を認識できなくなったときに“ノイズ”と判断される」と答え、“ノイズ”という音に対する独自の見解を打ち出した。なるほど、それぞれのWave
Music Systemは誰もが知っているアーティストの曲を再生している。しかし、213もの音を同時に聴かされると、それを音楽として判断することは不可能であることがわかる。
■「藤本由紀夫×Wave
Music System」展示作品完成への軌跡
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●Wave
Music Systemを収納するための、縦15マス×横15マスの巨大なラックが展示室に運び込まれた |
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●つづいて213台のWave
Music Systemが会場に到着 |
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●1台1台を開梱、電源ケーブルを配線しながらAVラックへ収納していく |
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●ラックへの設置も大詰めを迎えた |
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●AVラックへの収納を終えた後、今度は1台ずつ手作業でCDを読み込ませる |
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●Wave
Music Systemの壮大な“サウンド・オブジェ”が完成した |
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しばらくの間、作品から再生されるノイズに心を無にして向かい合っていると、やがて不思議なことが起こった。一瞬だが楽器の音やボーカルが聴き取れるようになったのだ。もちろんどのシステムが何の曲を演奏しているかまではわからないが、それぞれの音が確かに聴こえたのだ。藤本氏はこうも語っていた。「今後、私たちには塊となった情報から自分に必要なものだけを取り出す能力が要求されるようになってくるだろう。この社会の変化を、私はこの新しい作品を通じて表現したかった」
今回の藤本氏の展示から、非常に不思議で魅力的な体験を得ることができたように思う。普段、音に触れる機会は少なくないつもりだったが、単なる測定用の信号以上には考えたことのなかったホワイトノイズから、感性に訴えかけてくるメッセージを受けたことにより、その作品はあらためて“音”をじっくりと見つめ直すきっかけを与えてくれたように思う。 |
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■「藤本由紀夫展
+/-」 Yukio Fujimoto plus / minus 開催要項
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●会場:国立国際美術館
〒569-1044 大阪市北区中之島4-2-55
ホームページ http://www.nmao.go.jp/index.html
●会期:2007年7月7日(土)〜9月17日(月)
月曜日休館
●会館時間:午前10時〜午後5時、金曜は午後7時(入館は午後4時30分まで)
●観覧料:一般830(560)円、大学生450(250)、高校250(130)円、少・中学生無料
※( )内は20名以上の団体料金
●主催:国立国際美術館 |
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