自宅で最後まで残っていたブラウン管ディスプレイがついに映らなくなった。18年間愛用し続けてきたソニーのプロフィール・プロ「KX-27HV2」の寿命が尽きて、修理不能な状態に陥ってしまったのである。ハイビジョンでもワイドアスペクトでもない4対3方式のモニターだが、つい最近までアナログ放送とLDの再生を中心に現役で活躍し続けてきた。
発売された年(1990年)に購入して以来、一度だけ基板交換による修理を経験したものの、それ以外には故障らしい故障もなく、最近まで目立った画質劣化も見せなかった。もしかすると20年ぐらい動いてくれるかなと期待したのだが、さすがにそこまでは難しかったようだ。
しかし、我が家で稼働している家電製品のなかで一番の長寿命であったことは間違いなく、ブラウン管ディスプレイのなかでも際立っている。なにしろこの製品よりも後に購入したワイドテレビやハイビジョンディスプレイはいずれも現役を退いてリサイクル市場に送り込んだし、パソコン用モニターもブラウン管モデルはすべて役割を終え、一昨年に処分した。そのときの経緯はこの欄でも紹介した通り。いまやブラウン管の大量廃棄時代が到来して、正式なルート以外での回収や買取りなど、そのときに懸念した混乱がすでに現実になっている。
プロフィール・プロは家庭用モニターとして一つの完成形を見せていただけでなく、趣味として映像を楽しむための本格派ディスプレイとしての資質をそなえていたと思う。原信号の忠実再現と家庭環境での見やすさを両立させつつ、当時としては豊富な調整機能を用意してマニアックなユーザーの要求にも応えた。用途の多様性を象徴する秀逸なデザインには現代でも通用する普遍性があったし、実際にスタジオやイベント会場でも不可欠な存在になり、家庭から飛び出して活躍の場を広げていった。
自宅でのブラウン管時代終焉を目の当たりにしてあらためて感じるのだが、ディスプレイの主役が薄型テレビになった現在、かつてのプロフィール・プロを置き換える製品がなかなか現れないのは残念としか言いようがない。そもそも家庭用のモニタータイプはパイオニアのPDP-5000EXぐらいしか存在しない。
このプラズマモニターは非常に優れたモデルで、プロフィール・プロのコンセプトに一番近い存在と言っていいかもしれないが、発売から2年を経てさすがに万能とは呼べなくなってきた。稠密なフォーカス感と豊かなテクスチャーはいまでもトップレベルだが、黒の沈み込みの深さで同じメーカーのKUROをはじめとする新製品群に抜かれてしまった。愛用している立場としては複雑な心境だが、技術の進化の速さを考えれば仕方のないことだろう。
しかし、PDP-5000EXとKUROを開発したパイオニアが、家庭用高画質モニターの価値観を確立するうえうで最短距離に位置していることは間違いない。パネルの自社生産にタイムリミットが設けられてしまったのは残念だが、逆にそれだからこそ高画質に挑戦する姿勢を今後もずっと維持し続けて欲しいものである。
かつてプロフィール・プロを世に送り出した肝心のソニーはどうだろうか。パネル生産には距離を置いているとはいえ、BRAVIAのブランド力が飛躍的に向上したいま、高画質モニターに再挑戦する機は熟したと言っていいのでないか。家庭用テレビと放送機器の両分野で培った技術的蓄積を背景に、「液晶の最高画質」を打ち出すという戦略はありだと思う。有機ELの大型ディスプレイが完成するまで待つという手もあるかもしれないが、新技術は熟成にさらなる時間がかかるわけだから、そこまではちょっと待ち切れない。
テレビ開発の方向転換に追い込まれたビクターにも、ここは一つ発想を転換して新たな飛躍を期待したいところだ。既存モデルのブラッシュアップも大切だが、付加価値の確立を狙うなら、やはり同社ならではの高画質モニターの開発に挑戦してもらいたいと思う。ディスプレイの世界における優秀なブランドの開発力を絶やさないためにも、ぜひ実現を期待したい。