クリプトンの高音質音楽配信サービス「HQM」が先月29日からスタートしたので、早速ダウンロード購入し、リンのKLIMAX DSで再生してみた。今回はその手順の概略と操作感、音質を紹介することにしよう。
HQM STOREのトップページは、ウィーンの街並みを連想させるイラストを配したデザインが秀逸で、親しみやすい雰囲気が伝わってきた。カタログページで希望のタイトルを選ぶことによってアルバム単位での購入ができるが、初回はユーザー登録が必要だ。支払いはクレジットカードのみだが、SBPSを利用したセキュリティの高い決済処理が行われ、2回目以降、希望する場合はカード情報などを登録して入力作業を省略することもできる。
アルバム1枚分の価格は税抜きで3,000円ちょうど。新録音の場合はCDが税抜きで2,800円だから、96kHz/24bitのマスター音原「Music Master」の方が200円高いが、クオリティの違いに比べればこの価格差はずっと小さいといえるだろう。なお、購入はアルバム単位だが、カタログページでは各曲、各楽章ごとに試聴することができ、便利だ。
支払いを終えたら「My Account」のページから購入済みのタイトルを選び、ダウンロードの操作に入る。この画面で1曲ごとにダウンロードの操作を行うとログが表示されるが、クリプトンが薦めるようにこの操作を既存のダウンロードマネージャーで行うことも可能だ。
効率の良いFLACフォーマットを使っていることもあり、マスター音原とはいっても、データのファイルサイズは収録時間の長い新録音の場合でも1GBを僅かに超える程度。私はダウンロード画面からすべての曲を直接入手したが、アルバム1枚分のダウンロードに要した時間は10分未満と、予想していたよりも短かった。この速度は、同様にマスター音原を発売しているリンレコードよりもかなり速い。
なお、音楽データのダウンロードは1回のみだが、ブックレット(PDF)とジャケット(JPEG)の各データは何度でもダウンロードできる。内容はCDに付属するジャケット、ブックレットと同一なので、プリントすれば同じように利用できる。
パソコンにダウンロードしたデータをNASにコピーするときは、アルバム名やアーティスト名を指定したフォルダに格納すると、DSのコントローラーソフトで指定通りに表示される。
もう少し細かく紹介すると、あらかじめフォルダ名を自分で決めておくことにより、フォルダ表示での一覧表示がスムースになるということだ。その場合も曲情報からアルバム名を自動的に取得し、アルバム一覧に内容が表示されるので、フォルダから検索してもアルバムから検索しても、同じ作品にたどり着くことができる。
ただし、筆者の環境では、コントローラーソフト(SONG BOOK)の画面に画像データが表示されないという問題が起きている。音楽データをコピーしたフォルダに画像データもそのまま保存しており、CDのリッピングではその方法でかなりの確率で表示されるのだが、ダウンロードしたデータの場合はうまく表示されないことがある。解決したらいずれ報告することにしたい。
ダウンロードが完了したら、NASへのコピーに加えて、DVD-Rなどディスクメディアにデータをバックアップしておくこともできる。ハイサンプリング音原なのでそのデータをCDプレーヤーなどでそのまま再生できるわけではないが、NASのHDDがクラッシュした場合を想定して、コピーを作っておくと安心だ。
初回発売の3作品をすべてダウンロードし、DSで再生するまでにかかった時間はほぼ30分。いまさらながら、すべてパソコンの画面上だけの操作で完了し、鮮度の高い音をすぐに楽しむことができるのは素晴らしいことだ。
バウマン&シュトールのデュエットは何度も試聴に使ってきた音原なのでマスター音原特有のリアルな空気感やS/Nの良さは確認済みだったのだが、久々に聴いた遠山慶子のドビュッシーとラヴェルの演奏は、アナログディスクの時代から約30年を経たという事実が信じられないほど、美しく新鮮な響きを堪能することができた。音場の透明感が高く、微妙なニュアンスが手に取るようにわかるのだが、当時のアナログ再生環境ではその微妙な音色をここまで引き出すことは難しかったし、CDと比べても音色の幅はずっと広がっている。
ウィーン・モーツァルティステンのハイドンは、5月下旬にCDが発売されたばかりの新譜なので、今回、約1ヶ月の時差でマスター同等の音原が入手できたことになる。手元のCDと比べても独奏楽器や弦楽器の音色がなめらかさと柔らかさを増し、奏者の呼吸や身体の動きまで見えるような、特別な臨場感に満ちている。DSで聴くと驚くほどリアルな遠近感が出てくるが、それを既存のCDプレーヤーから引き出すのは至難の業だと思う。
今後の発売スケジュールを見ると、アナログ時代の音源と最新のデジタル音原を両方揃えていくようなので、非常に楽しみである。