【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

インターネットをメディアに、日本のジャズシーンの先端を高品位なサウンドで紹介するサイト「JJazz.Net」が話題を集めている。今回はサイトの番組制作に関わるキーパーソンの方々に、ライターの折原一也氏がインタビューを行った。高品位な音楽をデスクトップで楽しむ方法について紹介しよう。


折原氏(以下敬称略) はじめに「JJazz.Net」の誕生から、現在のかたちになるまでの歩みについてお話しいただけますでしょうか。

宮澤氏(以下敬称略) 「JJazz.Net」のサービスは日本の音楽シーンを、特にジャズを中心に世界へ向けて、インターネットを使って紹介していこうというコンセプトのもとに、バイリンガルのストリーム放送を基本として2000年にスタートしました。その当時はいわゆるナローバンドというか、まだダイヤルアップの時代だったので、かなり先駆け的なサービスだったと思います。その後リスナーの数も増え続け、2003年に花井を当社のチーフプロデューサーに迎えてから、日本の音楽シーン全体をとらえるスタイルに番組の方向性も変わってきました。

花井氏(以下敬称略) 当時の番組コンセプトの変化については、例えば有名な海外の「モントルー・ジャズ・フェスティバル」がそうであるように、サービス名に“ジャズ”を冠しながらも、良い音楽であればジャンルを問わずに、数多く紹介していこうというスタイルを取りながら、インターネット上でジャズ・フェスティバルのような形のものを表現したいと考えました。

JJazz.Netのサービスはインターネットラジオなので、曲を流すのに全て原盤の承諾を得なければなりません。私がJJazz.Netの番組づくりに関わり始めた頃は、お付き合いのあるレーベル数は50前後でしたが、現在は300レーベルほどに広がっています。

【取材協力】JJazz.Net [http://www.jjazz.net/]
花井雅保氏
(株)シナジー JJazz.Net
プロデューサー
宮澤裕行氏
(株)シナジー 
JJazz.Net
マネージャー

折原 先頃JJazz.Netのサイトを見せていただきましたが、番組構成がリスナーの“ライフスタイル”に合わせてカテゴライズされていて、とても興味深く感じました。

宮澤 全ての番組を貫くコンセプトは“大切なものに出会うために”というものです。音楽を「ジャンル」でカテゴライズしてしまうことで、リスナーの方々に変な先入観を与えてしまわぬよう、良い音楽に出会ってもらうために気を配っています。花井が当社にやって来た後、このコンセプトがサイト全体に活かせるように、ビジュアルからコンテンツ更新のタイミングまで全てをリニューアルしました。

JJazz.Netの番組は毎週月・水・金の3回更新。質の高い音楽番組をインターネットを通じて提供している
>>JJazz.Net [http://www.jjazz.net/] のホームページはこちら

花井 当初は週1回の更新でしたので、月間に4回更新で3番組を提供していましたが、現在は月曜・水曜・金曜の週3回更新で、月間に12番組を送り出しています。今注目の作品を紹介する音楽番組から、ライブ番組、インタビュー番組など、JJazz.Netとしてオリジナリティの高いものを提供しています。ひとつひとつの番組には、12の異なる“ストーリー”を持たせて、毎月更新しています。どの番組もそれぞれの楽しさがあり、どんな人でも楽しめるというものにしたいと心がけています。

折原 その“ストーリー”について、何か一つの番組を例に挙げてご紹介いただけますか。

花井 例えば「THE PARK」という番組があります。リスナーの方々にリラックスして楽しんでもらいたいと考え、“季節感”の演出を大切にしています。秋の頃であれば、10月と11月では11月の方が深まってくるというような感じです。他にも、「THE STATION」は一番ストレートにジャズをコンセプトにした番組ですが、いわゆるジャズのミュージシャンでなくても、例えばジャズのスタンダード曲を演奏していたら紹介してみたり、逆にジャズのミュージシャンがボサノバのスタンダードを演奏したタイトルは、「THE PARK」の方で紹介したり、JJazz.Netなりの切り口で、様々なリスナーの方々に新しい音楽との出会いを提供したいと考えています。

折原 その選曲に関しては花井さんが行っているのでしょうか。

花井 私ともう一人のチーフプロデューサーが担当しています。プログラムの配置についても、それぞれがひとつのコンピレーションアルバムのようなものになるよう、作品性の高いものを心掛けています。リスナーの方々から時折、「今回の番組をぜひCDにして欲しい」というご要望をいただいた時に、番組を楽しんでいただけていることを実感し、よろこびを感じます。


折原 サービスがスタートした頃から現在までに、リスナーが番組を視聴する環境も大きく変わってきたものと思います。番組配信方法に関しても、やはり大きな変化があったのでしょうか。

宮澤 JJazz.Netでは番組がスタートした当初から、RealPlayerをベースにした番組提供を行っています。当時に比べて、プレーヤーの表現力もウェブブラウザ機能を搭載するなど、とても豊かになりましたので、アーティスト紹介にも例えば現在かかっている作品のジャケット写真の紹介や、アーティストのホームページへのリンクなど、色々な表現ができるようになっています。また、現状ではアフィリエイトのスタイルですが、紹介したCDをインターネットからすぐに買えるようにもなっています。音楽自体の表現についても、2chから5.1chサラウンド再生にプレーヤーが対応してきていますので、大きく進化しています。

折原 レギュラーの番組についても、256kbpsでの配信というと確かに相当レベルが高いように思いますが、音質についてはいつ頃から現在のクオリティになったのでしょうか。

宮澤 サイトのリスナー数が増えるとともに、ライブ収録番組の本数も増えてきました。ライブ収録ではいわゆるCDのビットレート以上の高音質で録音しています。やはり非圧縮では難しいのですが、これをなんとかできる限り生の状態でリスナーにお届けできないかを試行錯誤してきたところ、アーティストのオノセイゲン氏にアドバイザーとして参加していただき、256kbpsをスタンダードにしようと決めたのが今年の4月でした。それまでは私たちも128kbpsをベースに配信していたんですが、その倍のクオリティになると、サウンドの表現の幅が格段に広くなります。例えばドラムスのシンバルの高音域がしっかり伸びるんです。

折原 5.1chのサラウンド番組についてはどのように提供しているのでしょうか。

JJazz.Netのサラウンド番組の詳細は、NTT東日本が提供する「フレッツ・スクウェア」のガイドページにて紹介されている

宮澤 5.1chサラウンドの番組については、NTT東日本さんが提供されているBフレッツの「フレッツ・スクウェア」で放送しています。本編のJJazz.Netは12のカテゴリーで放送していますが、フレッツ・スクウェアのサービスでは、ご登録いただいているユーザーの属性に合わせて、本編の12カテゴリーからジャズを中心とした4つの番組をセレクトしています。その他にもフレッツ・スクウェアならではのスペシャルな番組として、5.1chサラウンドの「オリジナルライブ収録番組」をお楽しみいただくことができます。プレーヤーは5.1chに対応しているWindows Media Playerを使って、WMA形式で提供しています。音源を収録してミックスダウンした後に、最終的な音楽ファイルの形式を選ぶのですが、ダイレクトにWMAにすることで音質劣化のない高品位な番組としてお届けできるようになります。

折原 番組のクオリティとしては、5.1chのものはどれぐらいのビットレートで配信されているのでしょうか。

宮澤 帯域を全て音声情報に割り当てられますので、現状では768kbpsの高品位でお届けしています。Bフレッツの光ブロードバンドサービスでは、これでもまだ余裕がありますので、本当に安心して提供させていただいております。

折原 JJazz.Net本編の番組についてですが、現在は無料視聴が可能な番組と有料会員制のものとがありますね。

宮澤 サイトのサービスが充実してきて、バックナンバーも含めてコアに聴きたいというニーズが強まってきましたので、純粋にサーバーコストやいわゆる権利処理的なものコストをお客様にご負担いただくという形で会費制を導入しています。現在無料放送の番組内容も相当充実させていますが、バックナンバーも過去4ヶ月間に放送した番組を常時50タイトルほどアーカイブしていますので、たっぷりとお楽しみいただけるようになっています。

折原 収録環境に関しても、NTTさんのBフレッツで始めた5.1chサラウンド番組の登場で以前と大きく変わってきたということはあるんですか。

花井 それはありますね。現在は月に最低3本は、つまり毎週1本くらいのペースでライブ収録しています。

宮澤 現在は都内の幾つかのライブハウスから協力をいただいて収録を行っています。当初はまさにオンマイクのステレオ収録ということで、マルチトラックで2ミックスという形でやっていましたが、その後、音楽好きの人たちが集まるライブハウスの、活況のある雰囲気も録りたいということで、主にアンビエントをしっかり録ろうという方向性に変化してきました。ライブ番組については「臨場感そのままにお伝えします」というコンセプトでやっています。

やはり5.1chになると、2ミックス・ステレオ録音の機材に加え、さらにリアの音を収録するためのセットが必要になります。基本的にはアンビエントマイクをフロントステレオ、リアステレオというセッティングにして、あとはステージ上のオンマイク、PAの音源、ステージ際のセミオンマイクを使って、ステージ全体のサウンドを録音した後に、全部をミックスして5.1chの音をつくります。使用するマイクは、会場のPAマイクを除いて8本から10本、ミニマムで6本ぐらいです。

■5.1chサラウンド番組の収録現場を訪問!
赤坂 B flat(11/8) Bobby Shew with Osamu Yoshida Silver Lining公演
ステージ上にはライブの臨場感を出すため、プレーヤーの最も近い位置にアンビエントマイクを2本設置(写真手前)
観客席の音声を収録するため、フロントステレオ、リアステレオを2本ずつ組み合わせた専用のマイクを設置
96kHz/24bitの高音質で録音。マルチトラックミキサーにて5.1chのサウンドをコントロールする
写真のタスカム「DV-RA1000」のほか、ポータブルDATやフラッシュメモリー型レコーダーでバックアップを行う

折原 サービスが始まってから現在までに、デジタル録音機材も相当進歩したのではないでしょうか。

宮澤 そうですね。これもいわゆる音楽業界のIT化なんだと思うんですけれど、非常に高音質で録音ができ、シンプルにセッティングできる機材が今は数多くあります。システム構成としては、パーソナル・スタジオ・システム「PRO TOOLS」をメインにマルチトラックミキサーと、バックアップ用にはDVDにDSD録音ができるタスカムのレコーダー「DV-RA1000」や、オーソドックスですけれども、DATやフラッシュメモリーレコーダーでもバックアップをとっています。

花井 インタビューの収録についても、アーティストの方がリラックスした雰囲気の中で生まれる本音のトークとか、いわゆる公共の電波ですとなかなか現れない表現、表情というものが垣間見えるような番組をつくるよう心がけています。そういう現場でもポータブルの録音機器が活躍しています。


折原 JJazz.Netの番組のように、インターネットを活用した高音質音楽コンテンツが登場したことによって、デスクトップで楽しむ音楽環境が今後ますます充実してくるのではないかと思います。

今回はボーズのフロントサラウンドシステム「Companion 5」でJJazz.Netの番組を試聴した。デスクトップでも手軽に高品位な音楽再生を楽しむことができる

宮澤 そうですね。そういう意味では、今回ボーズさんが発売されたデスクトップタイプのサラウンドシステム「Companion 5」のサウンドを聴かせていただいて、今後いわゆるデスクトップオーディオであったり、ホームシアターのセットに光ブロードバンド回線がつながって行くような世界で、高品位なホームエンターテインメントがより発展して行くのではないかと思っています。やはり、音楽については演奏者からCDにプレスする方、そして私たちのように番組をつくる者まで、全てのつくり手がすごく音にこだわっていますので、そういうこだわりが、限りなく忠実に伝わってくるスピーカーがあることはとても心強く感じます。

花井 今でもデスクトップなりノートPCに内蔵されているスピーカーで聴いている方も多いと思います。パワードスピーカーで音が良いものはあると思いますが、実際に5.1chで再生できるスピーカーは、デスクトップ用というかたちではなかなかないと思います。しかもUSB接続でこれだけ良い音が出てきますので、JJazz.Netのリスナーもこの世界観を待っていました。

折原 最後にJJazz.Netとして、今後こんな方向へ進化していきたいという方向性について聞かせていただけますか。例えば更新頻度をもっと増やしていくとか。

花井 それも案としてはありますね。今は、月・水・金と決めていますが、これを一歩進めるとしたら毎日更新というかたちになると思います。また、サイトとして扱うジャンルを音楽以外にも広げて行きたいと考えています。どのジャンルもそうなんですけれども、音楽自体は例えば映画や小説など、他のクリエイティブなジャンルとも色々な接点があります。他のジャンルと結びつくことで、リスナーの方に様々な角度から音楽と出会うきっかけみたいなものを提供したいですね。

今回のインタビューはBフレッツの魅力が体験できる、エスコルテ青山1Fの「IP ZONE AOYAMA」で行った

折原 動画の配信についてはいかがでしょうか。

宮澤 JJazz.Netとしては、インターネットラジオの特性を最大限に活かした番組づくりを行っていきたいと思っています。やるとすれば、動画を使用した方が面白いというものに限ったかたちになると思います。場合によっては映像が入ってしまうよりも、逆に音楽だけ、音だけという方が、リスナーにビジュアルやシーンを自由にイメージさせる余地を与えると言うか、クリエイティブな要素を残せるのだと思います。そういうことを心掛けながら、動画はTPOに応じて使い分けて行ければと考えています。

花井 また今後は海外向けの番組にも力を入れていきたいと思います。番組の内容を英文で、海外に住んでいる外国人向けに日本の最新の音楽を紹介していくという手法を考えています。

折原 現在の放送に関しても、英語版もつくられていますよね。

花井 そうですね。あちらをより徹底していくというイメージです。JJazz.Netでいま紹介しているアーティストの方には、海外で人気の高い方も多くいます。また新しいアーティストにもこれから海外で人気が出そうな方も多くいますので、そういう方たちを積極的に世界へ向けて紹介するメディアになりたいと思っています。

音楽配信の流れが加速するなか、高音質でストリーミング配信を行うJJazz.Netのサービスは、クオリティにも十分配慮されオーディオファンの期待に応える内容である。

特にダウンロード型じゃなくストリーミングにこだわっているJJazz.Netは、PCと上質な音楽を使って私たちの部屋を快適な音楽で満たしてくれる、ジュークボックスのような感覚で楽しむ用途にマッチするはずだ。NTT東日本が提供するBフレッツを始めとする高速回線の普及もこれを後押ししており、今後の発展にも期待できる。

PCを使って音楽を楽しむ再生機器の環境についても、ボーズのCompaction 5を始めとした高音質スピーカーの登場によって、よりいっそう高音質に楽しめるようになりつつある。オンラインの音楽配信を視野に入れて、オーディオシステムとは別のサブシステムとして、PCを使った視聴環境を充実してみるのもこれからますます面白くなるだろう。

(レポート:折原一也)


■Bフレッツの魅力を体験しよう

東京・青山の最新ランドマーク「escorter AOYAMA(エスコルテ青山)」の1Fフロアには、NTT東日本のBフレッツを活用したライブ映像が体験できる映像空間「IP ZONE AOYAMA」がある。隣接する「Cafe growna growna Tokyo」では、イタリアンテイストのコーヒーなどを楽しみながら、高速ブロードバンドも利用することができる。

Cafe growna growna Tokyo
営業時間
平日 9:00〜22:00/土日祝日 10:00〜20:00


IP ZONE AOYAMA
営業時間
年中無休 10:00〜20:00


>>escorter AOYAMAのホームページ
>>NTT東日本 フレッツ・スクウェア ガイド
■JJazz.Netの番組はこのスピーカーで楽しもう

前方2本のスピーカーでリアルなサラウンド感を実現する「TrueSpace」、あらゆる音源を5.1chで再生する「Bose Digital」により、デスクトップで気軽に“ペアサラウンド”が楽しめるスピーカーシステム。

BOSE フロントサラウンドシステム
Companion 5

2006年11月20日発売
¥59,850(税込)

>>ボーズの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
毎月レポートを掲載
HOMETHEATER FAN SOUND ADVENTURE 2008 J SOUND ADVENTURE 2008 J SOUND ADVENTURE 2008 J SOUND ADVENTURE 2008 J SOUND ADVENTURE 2008 J SOUND ADVENTURE 2008 J SOUND ADVENTURE 2008 J SOUND ADVENTURE 2007 December SOUND ADVENTURE 2007 November SOUND ADVENTURE 2007 October SOUND ADVENTURE 2007 September SOUND ADVENTURE 2007 August SOUND ADVENTURE 2007 June SOUND ADVENTURE 2007 May SOUND ADVENTURE 2007 March SOUND ADVENTURE 2007 February
NAVIGATER'S EYE
SOUND ADVENTURE 2008 J SOUND ADVENTURE 2007 June SOUND ADVENTURE 2007 April SOUND ADVENTURE 2007 Junnuary
LONGRUN CHECK
折原一也氏×uMusic Sound Adventure