37歳の化け猫が、森山未來の声で喋る! 日常と死後の世界を股にかけたひと夏の大冒険
サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2024年公開の『化け猫あんずちゃん』をご紹介します!
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『化け猫あんずちゃん』(2024年・日本)
(配信:Netflix / U-NEXT)
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※商品情報は記事公開時点のものです。最新の内容をご確認ください
いましろたかし原作の同名コミックを、『リンダ リンダ リンダ』『カラオケ行こ! 』の山下敦弘監督と、アニメーション作家の久野遥子監督のタッグで映画化。お寺の和尚さんに拾われ大切に育てられた猫・あんずちゃん(森山未來)は、10年経っても20年経っても30年経っても亡くならず、いつしか人間の言葉を話す化け猫になっていた。
そんなあんずちゃんのもとに、和尚さんの息子・哲也(青木崇高)が11歳の娘・かりん(五藤希愛)を連れて帰ってくる。「母さんの命日に戻ってくるから」と哲也は出ていき、かりんの面倒を見ることになるあんずちゃんであったが……。
実写で撮影した映像をトレースしてアニメーションを制作する「ロトスコープ」という手法をご存知だろうか。山下監督が実写で撮影した映像を久野監督がロトスコープを用いてアニメーション化し、劇中のセリフに関してもアフレコではなく実写撮影時に録音したものを使用するという。
既存のアニメーション作品とは一線を画する製作体制にて生み出された本作。首にガラケーを下げ、原付に乗り、アルバイトもするあんずちゃん37歳。そんな非現実の存在を信じさせてくれるだけの丁寧な日常描写の根底には、ロトスコープによって生じるリアリティが大いに貢献しており、気付けばあんずちゃんをはじめとした不思議な存在の数々を受け入れられていることだろう。
また、映画版オリジナルキャラクターであるかりんの存在が、平坦だった物語に変化とドラマをもたらし、地獄の世界をも巻き込んだ一夏の大冒険へと発展していく。夏の締めくくりにオススメの一本です。
(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会
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| ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 宝島社sweetでの連載をはじめ、WEB、雑誌、ラジオなどで、心から推すことのできる映画を紹介。そのほか、イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30 人のシネマコンシェルジュ」など、幅広く活動中。 |































