PR 公開日 2024/12/02 06:30

連載:世界のオーディオブランドを知る(2)オーディオの“一等星”であり続ける「マランツ」の歴史を紐解く

Presented by オーディオランド

■時代はアナログからデジタルへ。次世代デジタルオーディオディスク「SACD」開発



1980年代を目前に、オーディオはアナログからデジタルへと大きな変化を迎えていた。その立役者が、オランダの巨人フィリップスだった。1970年代始めに光学式ビデオディスクを発明、1981年に日本のパイオニアからレーザーディスクとして発売される。光学式ディスクを小型化し、音声信号をデジタル符号化して記録しようという試みがそれに続く。デジタルオーディオディスク「DAD」である。

この音楽専用デジタルディスクに、1979年ソニーがエラー訂正等の技術で合流、1980年にコンパクトディスク(CD)の最終規格が完成する。しかし、膨大な技術特許数を持ち、ソフト面でクラシックの牙城ポリグラムを擁するフィリップスにも弱点があった。同社はコンスーマー分野では生活家電メーカーであり、高級ハイファイオーディオの販路は未開拓、商品企画面でも経験が不足していたのである。

CDの投入にあたり、フィリップスには世界規模のパートナーが必要だった。白羽の矢が経ったのは、日米にまたがってコンスーマーオーディオの経験深いマランツだった。1980年、フィリップスはスーパースコープ社から日本マランツを買収、アメリカとカナダを除く商標権も取得し傘下に収める。1982年にはソニー「CDP-101」、マランツ「CD-63」がCD初号機として同年10月に発売された。3年後、画期的な低価格(59,800円)の「CD-34」が日本で発売されると月産最大7,000台、総計10万台に迫る大ヒット作になり、その1年後の1986年、CDは日本での生産枚数でレコードを抜き一気に音楽ソフトの主流となる。

「CD-34」

CDではフィリップスを縁の下で支える役割だったマランツ。しかし、次世代デジタルオーディオディスク開発で表舞台に立ち、主導的な役割を果たすことになる。当時HiFi製品の商品企画と音質検討に従事し、その後はサウンドマネージャーとしてマランツ製品の音決めの責任者となる澤田龍一氏はこう回想する。

「ヨーロッパでのSACDの発表会で『フィリップスはいつ製品を出すのか?』と報道関係者から訊かれ、フィリップスのトップが『1999年内にマランツブランドで出す』と言うので、『えっ、そんな話聞いてません!』となりました笑」。現在のマランツ・サウンドマスターの尾形好宣氏は、この時入社4年目、CD開発部の電気設計担当であった。「開発は大わらわでした。岩手県の生産工場でクリスマスに缶詰になり、工場のメンバーとやっと20台組み上げて出荷して面目を施した思い出があります」

次世代スーパーCDは、パナソニックやパイオニアの推すマルチビットのハイレゾハイサンプリングのDVDオーディオと、マランツとソニーが推進するDSD高速1ビットのSACDの一騎打ちになった。1999年、ソニー「SCD-1」と同時に登場したマランツのSACD一号機が「SA-1」。次世代デジタルディスク戦争の帰趨はご承知の通り。マランツの迅速かつ確かな開発能力が勝利をもたらしたのである。

「SA-1」

■創始者のデザイナー魂を引き継ぎ、今もオーディオの“一等星”であり続けるマランツ



2001年、日本マランツはフィリップスからマランツの商標権、営業権等のいっさいを取得する。デジタルの時代になりオーディオは進展するフォーマットへの柔軟で迅速な対応と、ICの開発スピードが帰趨を決めるようになり、総合家電メーカーのいち部門である時代は終わった。

逆に多品種少量生産に対応する資材調達の合理化、研究開発強化のため横の連携が求められ、翌2002年にマランツはデノンと経営統合を果たし、「ディーアンドエムホールディングス」が誕生する。製品の開発で両者の独自性は守られ、マランツの看板技術の高速電圧増幅モジュールHDAMが、現在は「HDAM-SA3」にまで発展した。21世紀に入って台頭し、欧州製が先行していたネットワークオーディオにおいては、2013年に「NA-11S1」を発売、この分野でもリーディングメーカーに躍り出た。忘れてはいけないのが、ホームシアターをマランツのアンプが音で支えていることである。

「NA-11S1」

「マランツのAVサラウンドアンプの音質は、あくまでステレオピュアオーディオアンプを拡大したもの」と尾形氏は語る。他社が一体型構成にとどまるなか、マランツはモアチャンネルと音質の追求を両立し、セパレート形式をラインナップ最上位に置く。現行のフラグシップ「AV 10」「AMP 10」は、ドルビーアトモスのメルクマール(里程標)である15ch再生を実現したシステムである。理想を追求するかたわら、生活との融合を忘れない。

写真左が「AV10」、写真右が「AMP10」

薄型テレビとのマッチングとスペースセービング性に優れた薄型AVアンプ、シンプルなステレオ構成のAVアンプで先駆けたのもマランツである。アイコニックな円形インジケーターを前面パネルに配した一連の新世代アンプのデザインも魅力だ。担当デザイナーは語る。「ストリーミングで簡単に音楽が手に入るようになり、良い音で聴くというのはひとつの贅沢。その贅沢を担う部分がマランツの提供する製品で、それにふさわしい佇まいを考えた」。ソウル・B・マランツのデザイナー魂が、21世紀に引き継がれているのだ。

新たな出発の創立71年目を迎え、マランツはデュアルモノシンメトリカルクラスDパワーアンプ+HDAMフルバランスプリのプリメインアンプ「MODEL 10」、メカエンジン「SACDM-3」、ディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering」を搭載するSACDプレーヤーの集大成「SACD 10」を送り出した。  

「SACD 10」

時代の変化にしたたかに向き合い、経営の変転をものともせず、マランツは墜ちることのないオーディオの一等星であり続ける。世界中に数多いメーカーのなか、マランツの特徴は伝統と革新だ。自社の培ってきた技術をベースに、果敢に次を創造するマランツの姿勢は、フローとストックで成り立つオーディオそのものである。音楽がハイファイがある限り、マランツスターの青い星は輝き続ける。


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