PR 公開日 2025/09/08 06:35

オーディオクエストの最新スピーカーケーブル「Brave Heart」レビュー。精密かつ濃密な再現力こそ進化の証

より柔らかく、静寂な伝送領域に到達

世界的な知名度を誇る米国発のケーブルブランドのひとつであるAUDIOQUEST(オーディオクエスト)。同社から最新のスピーカーケーブル「Brave Heart(ブレイブ・ハート)」が発売された。オーディオクエストが贈る新時代のスピーカーケーブル、その伝送能力はいかなるものか?オーディオ評論家の井上千岳氏による試聴レポートをお届けする。

AUDIOQUEST スピーカーケーブル「Brave Heart」2mペア:712,800円/3mペア:985,600円(ともに税込)

“奇跡の素材”グラフェンほか、最強のノイズ対策を全て投入

オーディオクエストの新しいスピーカーケーブルである。ラインナップとしては最上位のMythical CreatureシリーズとFolk Heroシリーズのグレードに属するが、全体の位置付けは例えば導体径で見ると、Mythical CreatureシリーズのTHUNDERBIRDとWILLIAM TELLの中間というところにあたる。価格は税込み2mペアで712,000円と、大体この2モデルと似た価格帯と言っていい。

特徴は多々あるので少しずつ説明するが、最初に基本的な構造を捉えておくと理解しやすくなる。

導体はPSC+の単線。高純度銅に2段階のアニールをかけて、表面をより滑らかにしたものだ。また導体生成時の引き抜きにより方向性も揃えている。この導体を改良されたポリプロピレン・フォームで被覆して芯線とする。このモデルではプラス/マイナス各3本の芯線を装備し、導体径は総計で12AWGとなっている。

その周囲に初めて採用されたグラフェンと、カーボンメッシュのネットワークによるシールド層を装備する。グラフェンは黒鉛を極薄に剥離させたシート状の物質で、蜂の巣のような六角形の格子構造を持つ。平面ではダイヤモンドよりも強いとされ、導電性・熱伝導性にも優れた奇跡の素材とも呼ばれる。ただ分離が難しく、実用化されたのは20年ほど前である。このほか銀の量が12倍に増量したシールドドレイン線を備え、スピーカー側のマイナス端子へ落とす構造だ。

「Brave Heart」の内部構造

さらに独自のDBSは72V。絶縁材にバイアス電圧をかけることでノイズを抑え、フィルター効果を線形化し、誘導ノイズの拡散を防ぐ。ケーブルを常に最適なエージング状態に置くことで、性能を万全に引き出す構成である。

そして上級モデルにだけ用いられるZERO-Techも採用されている。プラス/マイナスの絶縁材どうしの相互作用を排除することで、ケーブル自体に特性インピーダンスを持たせないという独自の技術で、これが電流伝送の損失を抑制しRFノイズを直線的に減衰させる。耳障りなノイズが劇的に減少する構造である。

これら幾つもの技術によってノイズの排除・抑制を、極めて高度に進めることが可能になっている。これが大きな特徴のひとつである。

端末は赤銅によるスペードまたはバナナプラグ。接続はハンダではなく、冷間圧接による。ブレイクアウトとプラグケースは金属ではなく合成素材とし、RFノイズの誘導を防いでいる。

72V DBS (ダイエレクトリック・バイアス・システム)を採用

「Brave Heart」に投入された技術や素材を示すアイコン

取り回しやすさが劇的に向上

さて最後になるが、本機最大の特徴はその形態にある。同社でもこれまではそうだったが、通常はプラス/マイナスの芯線をまとめて1本にし、端末の手前で分岐したうえで処理を施す形になっている。

しかしこのモデルはその逆で、アンプからはプラス/マイナス別々で出力され、ブレイクアウトで一旦まとめられて端末処理が施される形状を採用した。これによって十分な導体サイズを採用しながら、柔軟性が向上し取り回しが容易になっている。新機軸である。

スピーカー接続側はプラス側とマイナス側のケーブルがまとめられており、ドレインワイヤーはこのスピーカー側のみマイナスに接続される

アンプ接続側はプラス側とマイナス側のケーブルが独立。物理的にも柔軟性が向上したため、アンプ側への接続が大幅に簡単になった

全帯域に音がみっしり詰まり、音楽の作りの全てが見通せる

音質はきめ細かくスケール豊かな音調である。弾力的で当たりがよく、肉質感もしっかりして安定している。レスポンスに偏りがなく、高低両端へも楽々と伸びて息苦しさ見せることが全くない。

バロックはそのきめ細かな再現性がよく現れて、ヴァイオリンやヴィオローネなどの弦楽器あるいはリュートなど、どれもひとつひとつの音がていねいに引き出されてくるのを目の前で見るようなイメージがある。艶やかで古楽器らしいしっとりとした輝きが乗り、アンサンブルが鮮やかに展開されている。ただそれが軽く流れてしまうのではなく、一音一音にしっかりした意味を持たせながら緻密に描き出しているのが再現力の高さの現れと言ってよさそうだ。

楽器どうしの分離もよく、音楽の作りが全て見通せるような鳴り方で、高域から低域まで音がみっしりと詰まっている。要するに密度が高い。そういうイメージである。

ピアノはどうかというと、芯が太く質感が厚手で手応えが強い。しかしだからといってピラミッド型のエネルギー・バランスとは違って、レスポンスはどこまでも平坦。高域へも軽々と伸びている。ただその響きにずっしりとした存在感を感じるのである。いかにも人の手が弾いているという感触。だから音楽の投げかける表現が常に色濃くものを言っているし、表情の変化にも強い意味がある。陰影の豊かに利いた再現である。

コーラスは濁りのないハーモニーが、大変きれいな響きで広がっている。その響きが次第次第に空間に満ち渡ってゆくような、スケールの大きな表情の積み重なりが見えるような出方である。声の実体感が厚い。肉質感が充実しているからかもしれないが、女声コーラスとはいっても決して軽いものではないことがよくわかる。説得力の強い再現である。

オーケストラは強靭な立ち上がりが鮮烈に描かれ、どの部分も歯切れがよくまた響きは厚い。低音弦のずっしりとした出方は色彩感に重みを与えているが、それがベースとなってどの楽器にも深い陰影が乗っている。彫りの深い明暗の対照に富んだ再現と言っていい。

このためティンパニや大太鼓の唸りにも凄みが増し、景色が移り変わる度に起伏が大きく高まってゆく。こういうスケール感の出方というのは、なかなか簡単には得られるものではない。クライマックスの峻烈さも響きの厚さに支えられていっそう強靭だ。

音楽信号という情報が余すところなく伝わり、エネルギーも同じようにロスなく流れてくる。緻密な描写力に富んだ内容の濃い再現は、様々な技術による総合的な進化の証と言って過言ではない。

■試聴音源(CD)
・『ヴィヴァルディ/四季、海の嵐他』フェデリコ・グリエルモ(Vn)、新イタリア合奏団(マイスター・ミュージック/MM-4529)
・『アルベニス/入江のざわめき』細川夏子(ピアノ)(マイスター・ミュージック/MM−3092)
・『ドイツ・ロマン派の合唱曲集〜ラインの乙女』ラファエル・ピション指揮、アンサンブル・ピグマリオンほか(ハルモニア・ムンディ/HMC 902239)
・『サン=サーンス/交響詩集』フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)、ル・シエクル
(ハルモニア・ムンディ/KKC6761/2 2CD)

■AUDIOQUESTのスピーカーケーブル「Brave Heart」の仕様

●構造:独立した円形構造(12AWG)●導体:PSC+(Perfect-Surface Copper+ )単線
恒久的な分子最適化(PMO)●グラフェン+カーボンメッシュネットワーク●シングル4%銀シールドドレイン●72V DBS (ダイエレクトリック・バイアス・システム)搭載

(提供:ディーアンドエムホールディングス株式会社)


本記事は『季刊・Audio Accessory vol.198』からの転載です

 

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