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創業45周年、オーディオクエストの真価に迫る。オーディオ評論家が語る高音質ケーブルの魅力と進化

公開日 2025/06/09 13:00 角田郁雄
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創業45周年を迎えた米国のハイエンド・ケーブルブランド「オーディオクエスト」。その魅力にあらためて惹き込まれたオーディオ評論家・角田郁雄氏が、長年の使用体験をもとにブランドの歩みとケーブルの魅力を語る。自身のリファレンス環境にも採用し続ける理由とは? オーディオクエストの真価に迫る。

オーディオクエストの愛用ケーブル「Niagara」と「Rocket 88.2」を手にする角田氏

 プロの現場で出会ったNASAの単線ケーブル

オーディオクエストのケーブルには強い思い入れがある。私が購入した初めての海外製高級ケーブルであったからだ。その導入の動機は1998年から99年までさかのぼる。当時はレコーディング&マスタリングエンジニアの道へ進むつもりで、プロ・オーディオの輸入商社に2年間勤務した。

その際にハリウッドのハイエンド・スタジオのいくつかを訪問する機会が得られた。当時は高音質CD制作の真っ盛りの時期。各スタジオではアナログマスターの音を忠実に生々しく、デジタル化する方法を模索していた。

時を同じくしてハイエンドなAD/DAコンバーターも数多く登場した。dBテクノロジーやプリズム・サウンド、アポジー、dCSなどの機器が活躍し始めたが、実際にデモをすると、当時はピュアな音質を一定に保つまでには至らなかった。

そこにはいくつかの問題点が考えられたが、そのひとつがラインケーブルのクオリティにあった。そこで当時のエンジニアたちは、ハイグレードなラインケーブルをいくつか探して試用を始めた。そのなかのひとつが、製品化されていないNASAの単線ケーブルというものであった。高純度な銅単線を使用し、外被はテフロンの2芯シールド構成。

当時のスタジオ向けケーブルは細かい線材を束ねた撚り線構成が主流であったのだが、比較したところ、好みの問題などもあったが、多くのエンジニアたちがNASAの単線を選び、私も好んで使うようになった。

この単線ケーブルは音が非常にクリアで、ピアノの余韻に美しい透明感を感じ取ることができた。オーケストラのヴァイオリンパートの高い音階では響きの輪郭が極端にシャープにならない。コンサートで体験するようなシルクやビロードのような滑らかな響きとともに空間に奏者の実在も感じることができた。

 

単線への希求から出会ったオーディオクエストのケーブル

しかしながら帰国すると単線のラインケーブルはどこにも見当たらない。いつかは発売されるだろうと思いつつ数年が過ぎた。この間、いろいろな変化があり、現職の道に進みつつあった。オーディオ評論家の道を歩みはじめ、初めてアメリカのエアーのアンプを導入した。2005年頃のことだったと記憶する。

オーディオクエストのケーブルを知ったのはその直後のことである。雑誌の取材でその存在を知ることとなった。単線構成であり、現在の製品にも使われるLGCからPSSの導体を採用し、絶縁体にはポリエチレンやFEPのエアチューブを使っていた。これらが高域特性や中音域に影響する静電容量を低減する技術であることは知っていたが、それに留まらず伝送ノイズを低減するための卓越した技術を多く採用していた。

さらに驚いたのは信号の伝送中に絶縁体内でランダムに発生する静電気を分極化して安定させるため、高い電圧のバッテリーを使用した技術である。±の電極を2線とし、一定の間隔をあけて信号線と並行してシールド内部に仕込んでいた。これが現在も採用するDBS(当時は36V)である。この方式は導体には非接触でオープンな状態。自然放電するだけだ。果たしてこれで実際の音質効果が得られるのであろうか?と疑問を持った。

そこで、オーディオクエストのケーブルを取り扱うマランツ・コンシューマーマーケティング(当時)の澤田さんにお願いし、リバー・シリーズのDBS搭載のバランスケーブル「Columbia」(1.5m)を購入する覚悟でお貸りした。このケーブルにはDBS非搭載の製品もあったので、同時にお貸りして比較試聴もしてみることにした。

 

ストレートで一切の色付けなし。DBSがさらに静寂性を高める

実際に自宅で試聴してみて感じたことは、DBS非搭載のケーブルであっても、音の透明感や空間描写性は非常に高い。再生機器に一切の色付けも行わず、音楽信号を極めてストレートに伝送している印象を受けた。

ところがDBS搭載モデルを試すと、弱音の再現性がさらに高くなり、より静けさが引き立つのがわかった。ダイナミックレンジも拡張され、特に高域の再現性がより開放的に聴こえた。解像度も確実に向上する。すぐにDBS搭載の「Columbia」を購入することにした。

これをきっかけにしてオーディオクエストのケーブルが引き出す特性と音の再現性に惚れ込み次々と導入を開始した。より伝送特性に優れた「Niagara」「Sky」などの上位製品を徐々に購入し、SACDプレーヤーやDACなどの最上流機器で使い始めた。スピーカーケーブルはDBS搭載の「Mont Blanc」を購入。プリメインアンプ用には8mペアの「Roket88.2」も導入した。

 

アキュフェーズのシステムをオール・クエストで統一する

使い初めてから数年は、他社の単線製品とも組み合わせたが、現在は1つのシステムには同じブランドのケーブルだけを使うと決め、いまオーディオクエストのケーブルはアキュフェーズのモデルラインとB&W「802D3」で構成されたシステムに使っている。

アキュフェーズの最高峰システムには高速伝搬を目的としてテフロン性の基板を採用している。この高速伝搬を最大限に引き出すにはオーディオクエストのケーブルが最適であると考えている。そこには単線が備える高速でストレートな再現力と、テフロン被膜による静電容量への対策が大きく起因しているはずだ。

 

アキュフェーズのシステムは全てのケーブルをオーディオクエストで統一。インターコネクトケーブルには「Sky」「Niagara」「Columbia」を愛用する

 

一方でこれらオーディオクエストのケーブルを使用してから10年以上が経過した。DBSのバッテリーを調べたらLEDチェッカーが点灯しなくなっている。そこで電池を交換したのだが、音がスカッと抜けて透明度や弱音の再現力が蘇ってきた。電気交換によってDBSの強力な効果をあらためて実感することになった次第だ。

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B&W「802D3」でアキュフェーズのシステムを再生する際は「Mont Blanc」のスピーカーケーブルを使用する

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DELANASには「Diamond」のLANケーブルとUSBケーブルを使用

ハイレゾ伝送は銀線が最適。最高峰のダイヤモンドを使用

ネットワークオーディオ環境でもオーディオクエストのケーブルが活躍している。特にハイレゾ伝送では銀線が優れた伝送特性を示すこともあり、PSS(パーフェクト・サーフェス・シルバー)導体で72VのDBSを搭載した最高峰「Diamond」のUSBとLANケーブルも使用している。私はハイレゾ再生の魅力を普及する当初からアピールしてきたが、ここでもオーディオクエストのケーブルが一躍を担ってきたことは間違いない。

オーディオクエストの創業者であるビル・ロウさんとも何度かお会いしている。その時も彼は「オーディオケーブルで音が良くなることはない。しかし、ケーブルによって使用する機材の特性を最大限ピュアに伝送することはできる……」と断言していた。

こういったポリシーからブレることなく、多くの時間と試作を重ね、製品化を進めているオーディオクエストのケーブル。読者の皆さんにも、このケーブルが備えている特性の素晴らしさをぜひとも体験して欲しいと思っている。

 

プリメインアンプの試聴用に8mペア分導入した「Rocket 88.2」とDBS用の12V電池。電池は全てのケーブルの交換を完了した。DBSのケースも劣化しているため近々交換を予定している

 


(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー197号』からの転載です

 

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