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WIREWORLDの最新ケーブル“10シリーズ”徹底レビュー!新DNA Helix構造の効果はいかに!?

公開日 2025/04/24 06:30 井上千岳/園田洋世
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WIREWORLD(ワイヤーワールド)のオーディオケーブルが、現行の「8シリーズ」から「10シリーズ」へと刷新された。同社の特徴的なDNA Helix designがさらに進化を果たすとともに、Composilex絶縁材も改良。オーナーであり、設計者でもあるデヴィット・ザルツ氏の飽くなき探究心が生み出した新世代のオーディオケーブルである。

WIREWORLD XLRインターコネクトケーブル(左上から右下へ)「Equinox 10 XLR」(86,900円/1.5m)、「Solstice 10 XLR」(30,360円/1.5m)、「Platinum Eclipse 10 XLR」(814,000円/1.5m)、「Gold Eclipse 10 XLR」(451,000円/1.5m) ※すべてペア価格、以下税込

 

構造面に改良が加えられたワイヤーワールドの新シリーズ

1992年の設立以来、ワイヤーワールドでは何度もラインナップのリニューアルを行ってきた。直近では2018年に一斉に入れ替えが行われ、これがシリーズ8となった。そして今回シリーズ10の発表である。8からいきなり10ということだが、なぜか9は飛ばしたそうだ。

シリーズ6以来ワイヤーワールドの基本構造は、DNA HelixとComposilex絶縁材で定着している。数本ずつ束ねた素線(ストランド・グループと呼ぶ)を横に並べ絶縁材で固定した芯線の層をプラス/マイナス/アースと何層か重ね、全体を緩く捻った構造がDNAヘリックスである。螺旋状になるのでヘリックスの名がある。

Composilexは独自の樹脂系絶縁素材で、当初はテフロンを中心としていたが、「Composilex3」からテフロンを排除した。そして今回はやはり4を飛ばして「Composilex5」。

構造面ではストランド・グループの本数を増やしている。大体従来の2倍程度になっているようだ。

RCA、XLRインターコネクトケーブルの構造図

これは導体面積を増やして抵抗を下げようという意味ではない。同社によると信号エネルギーは導体そのものよりも、導体間に生じる電磁場を通って移動するのだという。だから導体本数が増えるとその組み合わせは2乗に増えるから、信号エネルギーの経路は大幅に増すことになる。ストランド・グループの本数を増やしたのにはそういう意味があるわけだ。

Composilex5の組成がどう変わったのかはあきらかでないが、電気摩擦によるノイズを最小限に抑え、これまでよりさらに静寂な背景を実現したという。

以上が大きな変更点である。個々の製品についてはまた別にリポートする機会もあるだろうから、ここではジャンルと価格帯を幾つかピックアップして特徴を聴いてみることにしたい。

 

RCAケーブル -高低両端までのバランスが良好

ラインケーブルは人気モデルであるエントリー・クラスの「Solstise 10」をまず聴いておきたい。銀プレートOFCの3層構造で、ストランド・グループは従来の13から14になった。

WIREWORLD RCAインターコネクトケーブル(左上から右下へ)「Equinox 10 RCA」(86,900円/1.5m)、「Solstice10 RCA」(30,360円/1.5m)、「Platinum Eclipse 10 RCA」(814,000円/1.5m)、「Silver Eclipse 10 RCA」(207,900円/1.5m)※ペア価格

高低両端まで大変バランスがよく、にじみや刺を生じることがない。バロックは大柄な鳴り方を避けてまとまりのいい整った再現だ。古楽器のヴァイオリンがことのほか典雅で瀟洒な表情を見せ、チェロやリュートも軽く弾んでいる。

ピアノはおおらかで広々としているが、どこなくひっそりした感触があるのも面白い。そして表情は緻密に変化して音楽が豊かだ。

オーケストラは小粒ながらピンと張りつめた緊張感が乗り、偏りのないレスポンスで整然とした再現が展開されている。流れのままに音を送り出しているが、大音量では強い瞬発力を発揮する。

最後に最上位のラインケーブル「Platinum Eclipse 10」である。OCC‐7N銀単線の4層構造で、ストランド・グループは40と倍増した。

情報量によるものなのか、一音一音のエネルギーが高く、音の持つ意味が重い。バロックを聴いていると、深いリアリティというものを感じないわけにはいかない。ヴァイオリンは艶やかでやや粘りを帯び、チェロの雄弁さにもちょっと聴けないレベルのものがある。

ピアノは屈託がなく、表情は穏やかだが多彩さをたっぷりと示す。オーケストラは鮮烈でダイナミズムの広さが格別。弱音の生々しさからトゥッティの強烈なフォルテまで細かな起伏を繰り返しながらクライマックスへ向かってゆく表現の大きさが非常に雄弁だ。音楽を聴いているという実感が底の方から湧いてくる思いがする。

 

スピーカーケーブル -瞬発力に富んだ鮮明な出方

次にベーシックなスピーカーケーブル「Luna 10」である。OFCを導体とし、全体でプラス/マイナス各2層のDNAヘリックス構造。ストランド・グループは従来の2倍の32に増えている。

WIREWORLD スピーカーケーブル(上から右下へ)「Luna 10」(41,250円/完成品・2.5m)、「Equinox 10」(211,750円/完成品・2.5m)、「Platinum Eclipse 10」(4,141,500円/完成品・2.5m)※ペア価格

このクラスとしては異例なほど音数が多く、瞬発力に富んだ鮮明な出方である。音色にも偏りがなく、エネルギー・バランスが均一に取れている。

スピーカーケーブルの構造図

バロックは鮮度の高さと活きのよさが際立つ。ヴァイオリンの音色が艶やかで、楽器どうしの分離がよくアンサンブルが明瞭だ。

ピアノは厚手のタッチだが、ずっしりとしていながら重苦しいどんよりとした感触ではない。澄んで音離れのいい響きである。きめ細かな余韻に乗って、和音が大変表情に富んで聴こえる。

オーケストラは情報量の豊かさが充実した音調を引き立てている。非常にナチュラルな音色でバランスがよく、楽器それぞれの描き方も丁寧だ。新鮮な音調である。

フォノケーブルもラインナップ。写真は「Micro-Eclipse 10」(80,300円/1.5m)

 

デジタルも刷新、LANとRCA同軸ケーブルを聴く/園田

WIREWORLDが「シリーズ10」を発表し、デジタルケーブルも一新した。ここではデジタル同軸ケーブル2機種と、LANケーブル1機種を試聴してみよう。

WIREWORLD デジタルケーブル(左上から右下へ)「Platinum Starlight 10 (XLR)」(401,500円/1.5m)、「Micro-Silver Eclipse 10 (XLR)」(67,100円/1.5m)、「Silver Starlight 10 (RCA)」(68,200円/1.5m)、「Platinum Starlight 10(RCA)」(418,000円/1.5m)※すべて1本の価格

まずデジタル同軸ケーブル「Silver Starlight 10」(以下「SSV10」)。導体は「OCC-7N Silver-clad Copper」(大野式連続鋳造法により作られた7N銀を原子レベルで密着させた銅)。構造は特許取得済の「Tri DNA Helix」。絶縁体は同社の最新複合絶縁技術「Composilex 5」で、摩擦電気ノイズを最小限に抑え、従来の絶縁素材よりもクリーンな音質と静かな背景音を実現するという。

デジタルケーブルの構造図

竹内まりや『マンハッタン・キス』は、一音一音にエネルギー感が強く漲る。ヴォーカル音像の密度が高い。低域が気持ち良く伸びる。子音にキツさがない。

タン・ドゥン『交響曲1997「天、地、人」』はノイズフロアが低く、チェロの音色が濃い。鐘の倍音が豊か。音場は特に前後左右方向に拡大。かなり大胆に音色を強く濃く表現するケーブルだ。 

次にフラグシップのデジタル同軸ケーブル、「Platinum Starlight 10」。導体は最高級導体「OCC-7N Solid Silver」(大野式連続鋳造法により作られた7N銀の単線)。構造と絶縁体は「SSV10」と同様である。

竹内まりやは「SSV10」よりさらにエネルギッシュ!どの音像も密度が高いうえに立体感もある。タン・ドゥンはノイズフロアがさらに低くどの楽音も濃いのだが、特に解像度で差が出た。鐘も太鼓も児童合唱も実にきめ細かく描かれる。演奏会場の空気感もよく出ている。強烈なエネルギー感と高い分析度を両立させたケーブルだ。

最後はLANケーブル「Starlight 10」。導体は「Silver-clad OFC」(銀を原子レベルで密着させた無酸素銅)。構造は「Tite-Shield Technology」。12個の内部シールドによりノイズを分離するという。

WIREWORLD LANケーブル「Starlight 10」(61,600円/1.0m)

宇多田ヒカル『忘却』はノイズフロアが圧倒的に低い。中央に定位する心音の音像が引き締まり密度を高めて実在感が凄い。Didoのライヴは音場が広い!そしてヴォーカルも伴奏も歓声も拍手も皆解像度を大きく高めている。

どれも素晴らしい出来だ。「シリーズ10」、他のケーブルも聴きたくなった。

(提供:ナスペック)


本記事は『季刊・オーディオアクセサリー196号』からの転載です

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