公開日 2023/10/07 07:00

トップクラスの音質で3Dオーディオを鳴らしきる!ハイエンド・AVアンプを徹底比較レビュー

40〜50万円台のハイグレードクラスから5モデルを横並び比較

MARANTZ「CINEMA 40」




MARANTZ 「CINEMA 40」 506,000円(税込)
新たにアイコニックなプレミアムデザインをまとった、9chアンプ搭載のハイエンド機種で、内蔵アンプでは9.4ch、外部アンプを使用した場合で最大11.4chのプロセッシングに対応する。同社の上位モデルから受け継いだ独立基板型の9chフルディスクリート・パワーアンプ、プリアンプ部に独自開発の高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を搭載するなど、同社のHi-Fiアンプを彷彿させる作り込み。

高品位なオーディオグレードのパーツを細部に使われていることももちろんだが、Dolby Atomo、DTS:X、AURO-3D、IMAX Enhanced、そしてMPEG-4 AACやMPEG-H 3D Audioにも対応するため、360 Reality Audioコンテンツも再生できるなど、他と一線を画す3Dオーディオフォーマットへの対応を実現している。また、自動音場補正も「Audyssey MultEQ XT32」のほか、アップデートで「Dirac Live」にも有償で対応。


CINEMA 40の背面部。電源ケーブルは3芯タイプで、着脱も可能。eARC対応のHDMIを1基、サブウーファープリアウトを4基搭載する

CINEMA40の自動音場補正「Audyssey MultEQ XT32」の設定画面。外部アンプ接続で、7.1.4chシステムにも対応。サブウーファーの設定で「指向性」選択するとLRの設定も可能
Hi-Fiを受け継ぐ的確な描写表現と堂々たる音場
マランツのAVアンプは、チャンネル数が増えてもステレオの音質の追求がベースにあり、音楽ライブは演奏に躍動感と聴き手を引き込む乗りを備える。音色の自然さ、テクニックを曇りなく伝えるHi-Fi的な解像感の点で最右翼。効果音が渦巻く音のカオスのようなシーンは、腰の据わった堂々とした音場で、量感と解像感を兼備し、Hi-Fi的に映画の音を聴かせる。余裕のある筐体と重量は伊達でない。

また、音場に透明感がありS/Nも良く、効果音やセリフがくっきりと実在感豊かに際だつ。シリアスで哀しいシーンの打ちひしがれて冷たい音の感触、晴れ渡った時に暖色系の音に彩られる。作り手の狙った音のニュアンスを的確に表出させるため、喜怒哀楽を描く映画にふさわしく、客観的でいてエモーショナルなAVアンプだ。音楽のステレオ再生は、女性ヴォーカルの高域までスムーズに淀みなく伸びる息遣いが生々しく、響きが豊かで音場に深い遠近が生まれる。ピアノのきらめく倍音は、まぎれもないマランツの音だ。


CINEMA 40の音質傾向

CINEMA 40のコンテンツ相性

DENON「AVC-X8500HA」




DENON 「AVC-X8500HA」 550,000円(税込)
デノンのハイエンドモデルであり、今回聴き比べたAVアンプの中で唯一の13chアンプ内蔵のモデル。天井スピーカーを6ch分構築でき、13.2chプロセッシングに対応。また、15.2chプリアウトを有した一段格上の仕様を備える。大電流タイプのパワートランジスタ「DHCT」搭載の13chモノリス・コンストラクション・パワーアンプを搭載しており、ハイグレードモデルに相応しい。

DACは、32bit対応のステレオDACを8基搭載し、さらに32bitフローティングポイントDSPを用いたディスクリート化、専用のEIコアトランスを採用するなど、デジタル部からアナログ部まで、音質を追求したアプローチは枚挙にいとまがない。自動音場補正も「Audyssey MultEQ XT32」だけでなく、アップデートで「Dirac Live」に対応する。


AVC-X8500HAの背面部。電源ケーブルは3芯タイプで着脱に対応。eARC対応のHDMIを1基搭載。プリアンプモードにも対応する

AVC-X8500HAの自動音場補正「Audyssey MultEQ XT32」の設定画面。内部アンプのみでトップスピーカーのフロント/ミドル/リアを含む7.1.6chシステムが構築できる
実存感と豪快さを両立して全て克明に出し切る
毎年開発の手を緩めず、休みなく進歩していることが伝わる完成度の高さである。音楽ライブは、エネルギーの重心が一段下り、ベースはずっしり沈み、ドラムソロはスケールが一回り大きく、聴き手がセットに近づいたような実在感と豪快さを味わうことができる。時には荒々しい音も出るが、それもAVアンプの個性の一部だ。

映画は、情報全てを克明に出し切る一徹さと迷いのなさが頼もしく、どんな映画でも不足がない。アクション描写は豪快そのもので、爆弾が街中を転がっていく時の暗騒音の量が違う。しかし、音の重心がどっしり下がり煩くないため、音場空間が広々として聴き手を呑みつくすサウンドなのだ。セリフの解像感も十分で、俳優の口中で唾液が粘り着くような生々しさ。音楽のステレオ再生によるロックは、楽器の分離と定位、音量バランスが的確で定位が揺るぎなく、ベースが太くタイトに引き締まって歌う。生々しいバンドサウンドとドライブ感がそこにある。映画からステレオ音楽再生まで盤石の信頼を寄せられるアンプ。


AVC-X8500HAの音質傾向

AVC-X8500HAのコンテンツ相性
<取材で使用したレファレンスモデル>
超短焦点プロジェクター EPSON 「EH-LS800B/W」 オープン価格(直販サイト451,000円税込)
フロア型スピーカー BOWERS & WILKINS 「703 S3」 990,000円(税込/ペア)
センタースピーカー BOWERS & WILKINS 「HTM71 S3」 414,700円(税込/1本)
ブックシェルフ型スピーカー BOWERS & WILKINS 「705 S3」 563,200円(税込/ペア)
ブックシェルフ型スピーカー BOWERS & WILKINS 「706 S3」 368,280円(税込/ペア)
ブックシェルフ型スピーカー BOWERS & WILKINS 「707 S3」 293,700円(税込/ペア)
サブウーファー BOWERS & WILKINS 「DB4S」 330,000円(税込/1本)


EPSON「EH-LS800B/W」

Bowers & Wilkins「700 S3シリーズ」

次ページ取材した5モデルのSPECをチェック

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