公開日 2019/03/15 06:45

誰でも美少女ボイスになれるのか? おじさんがローランド「VT-4」を使って分かったこと

【特別企画】vTuberからも注目のボイスチェンジャー機能


これは記事執筆時点での最新ファームウェアVer.1.02にてアップデートされた「常時、ピッチとフォルマント変換する設定」の追加で実現したもの。つまり、ため息などの小さい音やくしゃみなどの突発的な大きな音でも、ボイチェン状態で出力されるという意味だ。

これまでは、こうした雑音とされるような音にも変換処理をして意図しないノイズなどが発生してしまわないよう、変換をキャンセルするようになっていた。事故を防止するありがたい機能ではあるが、逆に思わぬ事故の可能性にもつながる。そう、vTuberが、地声を晒してしまう危険性があった。

しゃべる声量は常に一定をキープするわけではなく、その内容によっては声を潜めたり、笑って大きな声を出してしまうこともあるだろう。その時にエフェクトが剥がれると、「え、いま、おじさんいなかった?」という怪奇現象が起きてしまう。

編集して出す動画なら、処理が反映されなくとも録り直しで済むだろうが、ライブ配信などでは致命傷。VT-4は、たとえ変なノイズが生じても、 “vTuberとしての声” を守ってくれる信頼できる装置になったというわけだ。この機能で、VT-4の価値はさらに高まった。

ちなみに、正確にはアップデートで常に変換する設定のオン/オフが選べるようになったということなので、むしろおじさん要素も推しのような場合は、ノイズ対策で変換キャンセル状態にしておいても良いだろう。

じゃあVT-4なら美少女になれるの?

長くなったが、ここまでがプロローグ。これからVT-4を使ったら美少女ボイスが出せるのかについて検証していきたい。

メインで使うのはPITCHとFORMANTの2つ。両方とも、女声にするためにプラスに上げていく方向で用いる。

「PITCH」「FORMANT」スライダーはスムーズに操作可能。真ん中が±0の位置となる

ただし、「おじさん声だからマックスに上げとけ」では女声にはならない。PITCHをただマックスにすると、声の高めなおじさん。FORMANTだけをマックスにすると犯罪者のおじさん。そして両方マックスにすると、声の高めな犯罪者のおじさんの声になった。

危険度数が高まるばかりで、女性らしさがない。数人の男性編集部員で試したところ、どうも声の太さ、低さにかなり大きく左右される模様。もとから高めな声であるほど、最終的に自然な声になるようだ。

ここが第一の壁。VT-4を買ったら、すぐさま声は変わるが、おそらくその声は美少女ボイスではない。ここをあらかじめ知っておかないと、ちょっとガッカリしてしまう。

だが、まだ諦めるには早すぎる。もとから高めの声なら自然なのであればと、素で喋るのではなく裏声で試したところ、ずいぶんと良い感じになった。

なお裏声か、地声のまま高く出すかは、やりやすい方、そして結果としてより声が可愛くなった方を選べばいい。しかし、裏声を出し続けるのはそこそこ負担があり、1分も喋ると喉が枯れて声にガラガラとしたものが混ざりだした。また地声のまま高さを上げると、ボリュームも一緒にあがったり、その割にあまり高さが変わっていなかったりと、それぞれに慣れが必要なことは確かだ。

さて、もとの声を高くすると、PITCHが高いとキンキンしてくるし、FORMANTが高いと “ケロケロ” した声になる。これはこれでキャラ付けとしてはアリだが、PITCHとFORMANTを最大となる+5のうち、+2〜3あたりに留めるとより自然な印象になった。

「さあ、ここまでやった。そろそろ美少女になったかな?」と思い、録音した声を聞いてみると、可愛くなかった。もともとの声が可愛くないとはいえ、それにしても美少女ではない。自然で、高く、多少線の細い声にはなっているが、vTuberの動画を見て「こんな声が出せたら」と目指したものではない。

ここが第二の壁。美少女ボイスには、可愛らしさが必要なのだ。PTICHとFORMANTといった要素はVT-4がなんとかしてくれた。あとは自分の “声力(コエヂカラ)” を鍛えるのみ。

先の遅延の項目でも触れたが、自分は美少女であるという思い込みが重要なのだ。おじさんであることは忘れなければならない。喋っている姿は「やばいなこいつ」という通報案件ものであったとしても、逆にそれでいい。なぜなら美少女であれば、そのくらいのあざとさはプラスに働くのだから。

同じ声の高さでも、鼻声っぽく出す、猫なで声にする、抑揚を大げさにつける/あえてつけない、言葉遣いに特徴をつけるなどで、最終的に出力される声はかなり変化する。クールなのか、元気っ子なのか、自分の思う「可愛い」のぶつけどころだ。

一方で、オーディオインターフェースとしての性能が高い点は、やっぱり安心のローランド製である。

VT-4には3.5mmのマイク入力のほか、本格的なマイクも使用できるXLR端子を備えているので、別に専用マイクを用意することで余分なノイズをかなり防ぐことができる。ヘッドホンに付属のブームマイクとダイナミックマイク、コンデンサーマイクを試してみたが、マイクの性能が上がれば明らかに声がクリアになり、加工後の声質が良くなった。

コンデンサーマイクだって使用できるのもVT-4の特徴だ

よくよく考えれば、美少女ボイスを出すために設計された機械ではないのにも関わらず、普通の女の子声レベルに持っていけるほどボイスチェンジャー機能が高いのがおかしい。ふと、普通に声を録音してみたら、そのクオリティの高さに驚かされた。トータルな目で改めて見てみると、この性能は完全に “買い” だ。

☆ ☆ ☆


さて、こうして色々なチャレンジを繰り返して分かったのは、このVT-4のみでおじさんが美少女ボイスを実現するには相応の努力が必要だということ。

筆者も素の自分に比べたら驚くほどの変化であり、その効果を実感している。しかし、やっぱり “女の子らしさ” が足りていない。喋りが男なのだ。一切の照れを捨てたつもりだったが、演技力というべきものが備わっていなかった。

何度もいうが、声の出し方もさることながら、意識が重要なように思う。これまで考えたことがなかったが、女の子らしい喋りには、口調以外にも女の子たらしめるポイントがあるはずだ。それをしっかりとカバーしていくことで、だんだん声の出し方そのものも変わっていくだろう。

VT-4がベースを作ってくれるので、あとは本人の力で追い込むだけ

つまり、VT-4さえ手に入れればみんながすぐに美少女になれるかといえば、そうではない。それでもVT-4は美少女になりたいおじさんにとって、間違いなく有能なアイテムだ。

もちろん、おじさんでなくとも良い。ここまで美少女化のみ考えてきたが、 “イケボ” を目指してVT-4を使うこともできる。ヴォコーダーとして音楽的用途に活用するのは本筋なので間違いない。

“良い音の、良い声” というハードルの高い要望を、VT-4は叶えてくれる。確実に声のレベルを1つ上げるなら、VT-4の導入をオススメしたい。

(特別企画協力:ローランド株式会社)

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