公開日 2019/01/15 12:17

PCをクライアントにして、ラズパイを強力無比なミュージックボックスに!

海上忍のラズパイ・オーディオ通信(54)

実際、VolumioやMoodeAudioでも、HTTPサーバを停止させた「1bc」でも支障なく動作した。ここに挙げた3つのディストリビューションは、ゼロ・コンフィギュレーション・ネットワーキング実装の「Avahi」に対応しており、サーバのIPアドレスを「1bc-dev.local」のようにホスト名+.localで記述できるため、セットアップに手間もかからない。

Cantataの特徴的な機能は2つ、「充実したアーティスト情報」と「ローカルファイル再生機能」だ。前者はRoonを彷彿とさせるフィーチャーとして、後者はスマートフォン版MPDクライアントには見当たらないフィーチャーとして興味深い。

前者は(MPDから取得した)アーティスト名や曲名/アルバム名を頼りに、WikipediaやLast.FMなど外部サイトからアルバムアートワークやアーティスト情報を取得、Cantataのウインドウ上に表示する機能。

ツールバー右端の「i」ボタンをクリックすると、WikipediaやLast.FMで検索されたアーティスト/アルバム関連情報が大量に表示される

その外部サイトに掲載されている情報に限られるものの、音楽を聴いているときに眺める読み物としては有用で、単純なファイル再生では得られないユーザエクスペリエンスを期待できる。スマートフォン向けMPDクライアントにはありそうだがなかった機能で、この点だけでも利用する価値はある。

後者は、クライアント側にある楽曲ファイルを再生する機能。PCで入手した楽曲ファイルをRaspberry Pi(MPD)で再生しようとすると、NASにコピーしたりUSBメモリに書き込んだうえで差し込んだり手間がかかるが、Cantataでは曲/アルバムを選択して「→」ボタンをクリックすればOK。これだけで、PC上の曲の所在地(URL)がMPDに送信されて再生が始まる。

Mac上にあるiTunesライブラリの楽曲もこのとおり、AirPlayを使わずに再生できる

HTTPを利用した一種のネットワーク再生であり、楽曲ファイルの移動/コピーを伴わないため、再生開始までのタイムラグが短いこともポイントだ。HTTPサーバを内包するCantataだから可能な機能であり、かなり実用性が高い。

ローカルファイル再生中にRaspberry Piにリモートログインし、MPDがどのようなURLを受信しているか確認したところ、Cantata側で楽曲ファイルのメタデータを分析し、URLにエンコードする形で送信していた(スクリーンショットを参照のこと)。

再生中にMPDの状態を確認すると、メタデータがエンコードされたURLをもとに再生されていることがわかる(192.168.12.27がCantata側のIPアドレス)

だからアーティスト名/曲名はもちろんのこと、ジャンルや録音年などの情報も表示される。AirPlayとは異なり192kHz/24bit FLACなどのハイレゾ音源も再生できるため(メタデータは表示されないもののDSDもOK)、DLNA/OpenHome代替ネットワーク再生システムとしての可能性も見えてくる。

ただし、ローカルファイル再生の対象となる楽曲ファイルは、Cantataがアクセス可能なファイルシステムに存在しなければならないというOSレベルの制約がある。

Windowsの場合、「D:」や「Z:」などのドライブレターを割り振ることさえできれば、USBメモリであろうがSMB共有ドライブであろうが問題ないが、Macの場合外付けボリュームおよびネットワークドライブは「/Volumes」という不可視属性の領域にマウントされるため、そのままでは利用できない。エイリアスを作成してもCantataは認識してくれないので、しばし考え込んでしまった。

CantataのWindows版。ドライブレターを割り当てれば、USBメモリであろうがネットワークドライブであろうが再生対象となる

とはいえ解決策は必ずあるもの。Terminalを起動し外付けボリューム/ネットワークドライブのシンボリックリンクを作成、その領域(デスクトップ)をCantataで表示したところ、あっけなく認識された。Mac版Cantataでローカルファイル再生を試す場合には、ぜひこの方法をお試しいただきたい。

「disk」としてマウントされたネットワークドライブの「music」というフォルダ(/Volumes/disk/music)のシンボリックリンクを、デスクトップ(~/Desktop)に作成した

(海上 忍)

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