海上忍のラズパイ・オーディオ通信(56)

話題のAudio over IP規格「Diretta」で、ラズパイが“ネットワークDAC”になる

海上 忍

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2019年05月28日
ラズパイが「Diretta」をサポートする意味

前回からだいぶ間が開いての連載更新となったが、まずは春のヘッドフォン祭2019でラックスマンとワンボード・オーディオ・コンソーシアムが共催した技術発表会の概要(関連ニュース)をご覧いただきたい。意図が伝わりにくい部分もあったため、今回はその内容を咀嚼してお伝えしたいと思う。

春のヘッドフォン祭2019で、1bc規格=AUDIO OSECHI BOXがDirettaに対応することが発表された

この発表会での一大トピックはAudio over IP実装「Diretta(ディレッタ)」のサポートであり、その結果としての1bc ー ワンボード・オーディオ・コンソーシアムが開発を進めるLinuxディストリビューション ー における「ネットワークDAC機能」の実現である。早い話、ラズパイをUSB-DACのように使える技術が追加されたのだ。この機能は「LAN DAC」と呼ばれることもあるので、そのように言葉を置き換えていただいても構わない。

従来のラズパイ・オーディオは、MPDを中心とする再生/出力が前提で入力はあまり考慮されてこなかった。MPDがデコードした音声は、ALSAを経てDACカードからアナログ出力(またはDDCカードからデジタル出力)されるか、USBで接続された外部のUSB-DACにデジタル出力されるか、そのいずれかだ。S/PDIFのデジタル入力を可能にするカードも存在するが、DSDやPCM 384kHz/32bitを軽々再生できるラズパイに192kHz/24bitを入力する意義は見いだしにくい。

春のヘッドフォン祭2019で披露された“AUDIO OSECHI BOX”「MAIN」(上)と「DISC」(下)

しかし、この再生スタイルでは解決が難しいテーマが一つある。「PCオーディオとの連携」がそれだ。WindowsやMacでAudirvanaやroonといったアプリを利用し、ファイル再生を楽しむ層は多いが、従来のラズパイ・オーディオはここをスルーしていた。

MPDもいわば再生アプリであり競合関係となるため、当然といえば当然だが、充実したアーティスト情報を自動表示してくれるroonのようなアプリで音楽を愉しみたい、というニーズは高い。ハイレゾ楽曲はPCでダウンロード購入することが多いという現実もある。PCならではの利便性、機能性は確かに存在する。

そのPCオーディオとの連携を可能にするのが「ネットワークDAC」であり「Diretta」だ。ラズパイ側でDirettaの信号を受けるプログラム(Diretta Sink)を動作させておき、PCにインストールしたDirettaの信号を送信するドライバープログラム(Diretta Sync)とIPネットワークで通信することにより、PCの再生ソフトの音をそのままラズパイのサウンドシステム(ALSA)に出力する。

DirettaのASIOドライバー設定画面。ここで「Diretta Target」と表示されているのがラズパイ(Diretta Sink)だ

“LANケーブルで直結”できることもポイントだ。DirettaはIPv6を利用して通信を行うため、IPアドレスの管理 ー IPv4ではルーターなどで動作するDHCPサーバーがPCなどのクライアント機器に対し貸し出す形が一般的 ー を気にする必要がない。

さらに、Direttaには通信先(Sink←→Sync)を自動検出する機能が用意されているため、直接LANケーブルで接続するだけでネットワーク設定は完了してしまうのだ。ネットワークオーディオというと、伝送経路にルーターやハブなど複数の要素が入るため、音質改善に独特の難しさが生じるものだが、1本のLANケーブルで直結できるDirettaはシンプルそのもの。音質にもプラスに寄与することだろう。

Windows版Audirvanaで、OSECHI BOX(Diretta Sink)のデバイス情報を表示したところ。DACチップはPCM5122のため、DSDがサポートされていないことがわかる

「Diretta」導入で変わる、ラズパイ・オーディオのこれから

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