公開日 2013/10/04 11:49

【第62回】高橋敦、ガチ購入! GENELECのパワードモニター「6010B」導入ストーリー

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
高橋敦
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低音処理イコライザースイッチの効果を試す

個人的には、低音にも不満は感じられない。もちろん普通サイズのブックシェルフスピーカーと比べれば厚みも沈み込みも及ばない。しかし超ニアフィールドリスニングという低音の再現には有利な条件のおかげもあるのか、絶対的に足りないという印象ではない。

エレクトリックベースの線はむしろ太く感じる。ベースの音色のレンジの中での低音側はもちろん弱めだが、ベースとしての中音域が充実しており、そこにうねるようなドライブ感がある。その点はモニター機としては意外だが、これは設置環境に影響されているところでもあるだろう。

…という流れでここで、前述の低音処理のプリセットイコライザースイッチの機能の詳細と実際の効果を確認していこう。

改めまして、背面のこのスイッチについて確認していく

スイッチはオン/オフのディップスイッチ3つで構成されている。左からBASS -2dB、BASS -4dB、TABLETOPのスイッチだ。BASSスイッチは両方ともオフにした-0dBから両方ともオンにした-6dbまで2dB刻みでセッティングできる。TABLETOPスイッチは200Hz周辺を-4dBする。デスクトップにスピーカーを設置した際にデスク面に反射して低音が盛り上がってしまう現象への対策だ。

まずはマニュアルに英語で記載されているセッティング例を日本語に意訳したものを載せておく。


僕の場合はデスクトップ設置であり、そのデスクの両サイドにはマガジンラックが立っているので、いちばん下の「角や狭い空間への設置」に該当する。

…のだが実際にしばらくにわたって一通り試したところ、いちばんしっくり来たのはいちばん上のフラットセッティングだった。先ほどの音質レビューもそのセッティングでの印象だ。

それぞれの効果としては、TABLETOPをオンにすると低音がすっきりするのは確かだ。しかし一方でベースのブリブリとしたドライブ感は薄れ、少し物足りない。このスイッチがカットする200Hzという帯域はベースの太さへの影響が大きい。良くも悪くもその感触を左右するのだ。

またBASSを減衰させるスイッチも効果は明らかで、まさに単純に低音を低減する。しかしこれもやはり僕としてはどうも、低音のプッシュにかける印象になってしまった。

…まあ我々はモニター用に使うわけではないので、好みに合わせてセッティングすればよいだろう。あと僕の場合は、普段は比較的小音量での再生が多いことも、このセッティングに落ち着いたことに関係しているかもしれない。一般的に音量が小さくなると低音を感じにくくなるためだ。

まとめ

最後に、ここまでに述べたことの他に感心したところをふたつ挙げておこう。

まずアルミダイキャスト製のキャビネットがほとんど共鳴しない上に、ゴム素材の脚部Iso-Podのおかげもあって、スピーカーとデスクの天板の共振が全くと言ってよいほどにないこと。この点はデスクトップスピーカーにおいては実に重要で、本機の設置環境込みでのトータルの音質に貢献していると思われる。ここで共振が起きてしまうと音のブレやら低音の過剰な膨らみやら、よいことがない。

もうひとつは、左右のスピーカーの間にノートパソコンという異物が存在してもその影響を受けにくいこと。試しにノートパソコンを普通に使っている状態とディスプレイを半ば閉じてその音響的な影響を最小化した状態を比べてみても、それによる定位の大きな変化は感じられない。ディスプレイを普通に立てている状態だとそれが音の伝わりを乱して、特に音場中央のボーカルの定位などは崩れてもおかしくないところなのだが、そういうことがない。

推測であるが、これは本機が直接音を重視した設計になっているおかげなのではないだろうか。スピーカー設計において、ドライバーから放射される音を直接耳に届かせる直接音と、部屋に響いた音を届かせる間接音のバランス想定は、大きな要素だ。本機に採用されているDCW技術は「間接的な反射音を低減し、スピーカーから放射される直接音の比率を向上」とされている。そのため周囲の反射物の影響を大きくは受けず、常に良好な定位が実現されていると想像できる。

というか本機は、自宅での音楽制作を想定した製品だからパソコンとの組み合わせは当然考慮されているはずで、そういった設置で問題ないのは当然とも言える。

というわけでGENELEC 6010B。原稿執筆時点で購入から4週間ほど経っているが、後悔の全くない買い物だった。音楽を聴く際のスピーカーリスニングの比率が盛大に高まり、様々な曲をライブラリから掘り出しては聴き直す毎日が続いている。よい買い物をしました!(自画自賛)


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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