公開日 2010/09/09 14:02

BJ ELECTRICの手のひらサイズパワー&プリアンプ「SMシリーズ」を岩井 喬が聴く

「BJ ELECTRIC」は平成3年にオーディオメーカー出身の石河宣彦氏によって創業したオリジナルの音響製品、及び音響用ケーブルの製造開発を行っているブランドで、湘南(藤沢市)に本拠地を構えている。シンプルで省スペースなコンシューマー製品以外にも、プロ向け製品の開発も行っており、音楽そのものに寄り添ったストレートな表現力を持つ本格的な音場空間の創出を目指している。

その製品群のなかでも中核となるアンプ製品、“手の平サイズのハイエンド”を目指す「SMシリーズ」から、パワーアンプ「SM-P1」とプリアンプ「SM-PRE」を今回試聴させてもらった。ともに同じサイズの小型筐体+スイッチングACアダプターが組み合わされた構成となっており、デスクトップ上においても邪魔にならないコンパクトさが最大の魅力だ。ボディは3mm厚の押し出し材、フロントパネルに5mm厚のアルミを用いた堅牢な構造を採用。機械的な強度を得たことで、電気系統の振動を抑えてより分解能の高いサウンドを実現したという。また内部配線には古河製PCOCC導体を採用し、基板を用いない手配線によって構成スペースを立体化し、理想的なショート・シグナルパスが得られている。

SM-P1

SM-Pre

詳細は公開されていないが、内部構成は極めてシンプルな回路を採用しているということで、音質の優れたパーツを吟味し、余計な付加回路を省略した設計となっている。「SM-P1」は外付けパーツが少なくて済むパワーICを搭載。入力はアンバランスRCA・1系統のみで、スピーカー端子も小スケア用のプッシュコネクト式を採用。そしてボリュームを装備しているので、プリアンプがなくとも本機単体で使用することも可能だ。また「SM-PRE」はアンバランスRCAライン入力は2系統、同ライン出力1系統を装備している。

試聴では「SM-PRE」と「SM-P1」のペアを自宅環境(SP:「ADAM HM2」、CDP:「TEAC VRDS25」)に接続し、スピーカーケーブルには同社製SP-C(古河製PCOCC導体採用)を用いた。なお「SM-P1」は使用時に熱を発するので、ある程度通気のことも考慮して設置するよう心がけたい。両機のサウンドだが、大きさを感じさせない本格的なもので、「HM2」のような中型クラスのモニタースピーカーでさえ制動良く鳴らしてしまう。目の覚めるようなアタックと、キレの良いリリースが付帯音のないピュアなサウンドを生む。「ブルックナー」ではSN良く、奥行きも感じられる。管弦楽器は細身だが、ホールトーンはすっきりとまとまり、鮮度も良い。「AP」でも誇張のないリアルなストリングスのハーモニーが厚く響き、ピアノの余韻は澄んでいる。ボーカルの立ち上がりは素早く、中域の厚みのある音像で透明感ある質感だ。「オスカー」ではピアノの粒立ち良いタッチと弾力良い弦のキレを感じるウッドベース、ナチュラルなドラムが融合し、立体感ある有機的な質感を楽しめる。「メニケ」ではキレ良いエレキのリフが、深みのあるディストーションの刻みを聴かせる。リズム隊はエナジー溢れる音像で、僅かな低域の膨らみがリッチさを生む。ボーカルも明瞭だ。

そして「SM-P1」単体でのサウンドだが、ややフォーカスが甘くなり、倍音のまろやかさが強く感じられるようになる。マイルドなタッチで音像も厚く、弦楽器や声のハーモニクスは艶めく。

■試聴ソース
・ユーベル・スダーン/東京交響楽団『ブルックナー:交響曲第7番』(N&F:NF21202、略称:ブルックナー)
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(ユニバーサル:UCCU-9407、略称:オスカー)
・『Pure〜AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』(F.I.X.:KIGA2、略称:AP)
・デイヴ・メニケッティ『MENIKETTI』(DREAM CATCHER:CRIDE35、略称:メニケ)

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