公開日 2017/09/21 10:52
マランツ歴代ディスクプレーヤー5モデルを聴く − 「SA-10」へ連なる進化の軌跡とは
<対談>貝山知弘×マランツ澤田氏
■長年マランツのリファレンスを務めた前フラグシップ機「SA-7S1」
試聴モデル5
「SA-7S1」
2006年 700,000円(税抜/発売時価格)
澤田氏 最後に、2006年に発売された「SA-7S1」を聴いていただきます。SA-10が登場するまでの長い期間、マランツ試聴室のリファレンスプレーヤーとして使われてきたモデルです。
貝山氏 私もこちらの試聴室でSA-7S1を使った試聴は何度も行いましたから、馴染み深いモデルです。
澤田氏 マランツは2002年にD&Mグループの一員となりましたが、SA-7S1はD&Mグループが手がけたメカエンジンを採用しています。D/AコンバーターはNPC製「SM5866」を左右独立で1基ずつ使っています。そしてデジタルフィルターは、独自にアルゴリズムを開発してDSPに書き込みました。このデジタルフィルターもライナー・フィンク氏がデザインしたものです。
SA-7S1のトピックは聴感上のS/Nを追求するべくデジタル/アナログの徹底した分離を図ったことで、本機で初めて採用したのがデジタルアイソレーター技術です。NA-11S1やSA-10などの現行モデルにも、このデジタルアイソレーターは引き継がれています。デジタルデータの受け渡しを行うところで電気的な遮断を行ってデータだけを渡すようにして、デジタル部からアナログ部へノイズが流入するのを防ぐのです。
フォトカプラーでアイソレーションを行っていたメーカーは当時ありましたが、フォトカプラーは伝送スピードが遅いという問題がありました。この頃、磁気結合によって高速フォトカプラーの3倍程のスピードを可能にするGMRというデバイスが登場しました。GMRは非常に高価でしたが、S/Nをさらに追究するべくこれを使ったデジタルアイソレーターを完成させました。
貝山氏 SA-7S1の音は今聴いても完成度が高いです。音場がきちんと整っているのが良いのですね。そして細かいところまでよく音がでています。音と音の間の静けさというか、S/Nが圧倒的に高いです。
澤田氏 SA-1もかなり音をしっかりと出しているのですが、少し賑やかな感じがするかもしれません。SA-7S1は音と音の間がとても静かで、これみよがしの凄い音というわけではありませんが、情報をしっかりと引き出しています。余裕を感じますよね。
貝山氏 音楽の細部が引き出すことで、より演奏の本質に迫ることができています。テクニックと音の関係で言えば、例えばバイオリンのピチカートは指の細かな動きまで見えてくるようです。
澤田氏 実は当時はあまりうたわなかったのですが、SA-7S1はこの時代においては非常に高精度のクロックを積んでいます。クロックの効用が言われ始めたころ、ドイツの著名なオーディオ雑誌において測定が行われたプレーヤーのなかで、SA-7S1は1番ジッターが少ないという高い評価を受けていました。また、SA-7S1はマランツのプレーヤー史上で唯一、外部クロック入力を持っていますが、SA-7S1が備えるクロックも非常に高性能で低ジッターなものです。
貝山氏 『サンチェスの子供たち』のドラムスの描写も、これまではただドンとなっているような感じだったのが、SA-7S1では一段とリアルになりました。
澤田氏 SA-7S1ではドラムスのアタックやエコーが、それぞれわかるようになってきましたね。
貝山氏 それから渡辺玲子さんのバイオリンの良さがさらに引き出されています。古楽器ならではの音色をとても上手に引き出しています。録音の良さも、SA-7S1だと際立ちます。
澤田氏 ちなみにSA-7S1が、最後に相模原で音質検討を行ったモデルです。そしてB&Wのトップエンド機が、SA-7S1が登場する前年にダイヤモンドトゥイーターを搭載した「800D」にモデルチェンジして、音質検討も800Dで行いました。ダイヤモンドトゥイーターは静けさのニュアンスの再現がアルミドームとは桁ちがいですから、SA-7S1の完成度の高さにはこのあたりの影響もあったと思います。
■ターニングポイントを担ったプレーヤーから見えてきたもの
澤田氏 今日は最新のSA-10と、4機種の過去のディスクプレーヤーを聴いていただきましたが、いかがでしたでしょうか。各モデルでグレードは異なりますが、それぞれが最新リファレンスであるSA-10に関わる技術を持っている、いわばターニングポイントになったプレーヤーです。
貝山氏 このように一度に聴かせていただくと、これまで気付かなかったことまで明瞭に聴き取れます。時代を経て変わってきたこと、引き継がれたことがよくわかります。
澤田氏 今だからこそお話できることですが、様々な製品の音質検討に関わってきた経験から言えば、本当に素晴らしいモデルというのは、結果として音質検討にそれほど時間がかかりません。もちろんこれは極端な話であって、新たな技術を使ったアプローチを行うときはやはり各部分で入念な音質検討を行います。しかし、音質検討ができるようになった時には、例えばこのSA-7S1のようなモデルでは音質検討を行う必要はほとんどなかったのです。
試聴モデル5
「SA-7S1」
2006年 700,000円(税抜/発売時価格)
澤田氏 最後に、2006年に発売された「SA-7S1」を聴いていただきます。SA-10が登場するまでの長い期間、マランツ試聴室のリファレンスプレーヤーとして使われてきたモデルです。
貝山氏 私もこちらの試聴室でSA-7S1を使った試聴は何度も行いましたから、馴染み深いモデルです。
澤田氏 マランツは2002年にD&Mグループの一員となりましたが、SA-7S1はD&Mグループが手がけたメカエンジンを採用しています。D/AコンバーターはNPC製「SM5866」を左右独立で1基ずつ使っています。そしてデジタルフィルターは、独自にアルゴリズムを開発してDSPに書き込みました。このデジタルフィルターもライナー・フィンク氏がデザインしたものです。
SA-7S1のトピックは聴感上のS/Nを追求するべくデジタル/アナログの徹底した分離を図ったことで、本機で初めて採用したのがデジタルアイソレーター技術です。NA-11S1やSA-10などの現行モデルにも、このデジタルアイソレーターは引き継がれています。デジタルデータの受け渡しを行うところで電気的な遮断を行ってデータだけを渡すようにして、デジタル部からアナログ部へノイズが流入するのを防ぐのです。
フォトカプラーでアイソレーションを行っていたメーカーは当時ありましたが、フォトカプラーは伝送スピードが遅いという問題がありました。この頃、磁気結合によって高速フォトカプラーの3倍程のスピードを可能にするGMRというデバイスが登場しました。GMRは非常に高価でしたが、S/Nをさらに追究するべくこれを使ったデジタルアイソレーターを完成させました。
貝山氏 SA-7S1の音は今聴いても完成度が高いです。音場がきちんと整っているのが良いのですね。そして細かいところまでよく音がでています。音と音の間の静けさというか、S/Nが圧倒的に高いです。
澤田氏 SA-1もかなり音をしっかりと出しているのですが、少し賑やかな感じがするかもしれません。SA-7S1は音と音の間がとても静かで、これみよがしの凄い音というわけではありませんが、情報をしっかりと引き出しています。余裕を感じますよね。
貝山氏 音楽の細部が引き出すことで、より演奏の本質に迫ることができています。テクニックと音の関係で言えば、例えばバイオリンのピチカートは指の細かな動きまで見えてくるようです。
澤田氏 実は当時はあまりうたわなかったのですが、SA-7S1はこの時代においては非常に高精度のクロックを積んでいます。クロックの効用が言われ始めたころ、ドイツの著名なオーディオ雑誌において測定が行われたプレーヤーのなかで、SA-7S1は1番ジッターが少ないという高い評価を受けていました。また、SA-7S1はマランツのプレーヤー史上で唯一、外部クロック入力を持っていますが、SA-7S1が備えるクロックも非常に高性能で低ジッターなものです。
貝山氏 『サンチェスの子供たち』のドラムスの描写も、これまではただドンとなっているような感じだったのが、SA-7S1では一段とリアルになりました。
澤田氏 SA-7S1ではドラムスのアタックやエコーが、それぞれわかるようになってきましたね。
貝山氏 それから渡辺玲子さんのバイオリンの良さがさらに引き出されています。古楽器ならではの音色をとても上手に引き出しています。録音の良さも、SA-7S1だと際立ちます。
澤田氏 ちなみにSA-7S1が、最後に相模原で音質検討を行ったモデルです。そしてB&Wのトップエンド機が、SA-7S1が登場する前年にダイヤモンドトゥイーターを搭載した「800D」にモデルチェンジして、音質検討も800Dで行いました。ダイヤモンドトゥイーターは静けさのニュアンスの再現がアルミドームとは桁ちがいですから、SA-7S1の完成度の高さにはこのあたりの影響もあったと思います。
■ターニングポイントを担ったプレーヤーから見えてきたもの
澤田氏 今日は最新のSA-10と、4機種の過去のディスクプレーヤーを聴いていただきましたが、いかがでしたでしょうか。各モデルでグレードは異なりますが、それぞれが最新リファレンスであるSA-10に関わる技術を持っている、いわばターニングポイントになったプレーヤーです。
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