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<対談>貝山知弘×マランツ澤田氏

マランツ歴代ディスクプレーヤー5モデルを聴く − 「SA-10」へ連なる進化の軌跡とは

公開日 2017/09/21 10:52 聞き手:貝山知弘 構成:編集部 小澤貴信
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貝山氏 出来の悪いものほど、音質を検討して調整するのに時間がかかるということですね。

澤田氏 その通りです。ただこういった生い立ちの要素とは別に、外部要因によって音質検討に時間がかかることもあります、「これは非常に良い製品になるぞ」と思ったものの、音質検討を進めている途中で、この部品が使えなくなったとか、回路に致命的な欠陥があって変えざるを得ないとか、あるいは安全規格が変わって厳しくなったから変えないといけないという、良かったはずなのに変更が必要になったという、ということがあります。

優れたモデルほど音質検討に時間はかからないと語る澤田氏

貝山氏 そのような意味で、外部要因で一番影響を受けるのはアンプよりもプレーヤーですよね。ドライブメカのようなより複雑な機構がありますから。

澤田氏 はい。プレーヤーは部品の入れ替わりも激しいです。それから現代ならではの悩みとしては、今のプレーヤーは様々なディスクに対応しなければいけないということがあります。CD-34のころはCDだけかかれば良かったのに、現代ではSACDからデータディスクまで、いろいろと検証しなければいけません。ただ、結果としてメカのアクセスは早くなりました。

着実に進化する一方で、マランツとしての音の方向性はブレない

貝山氏 今回の試聴では、時代ごとのアプローチがわかると共に、収斂というかその積み重ねが次のモデルへと非常に上手く繋がっていっていることが、実際に音を通して実感できました。製品の開発に大勢の方が関わるなかで、こうした積み重ねを実行することはなかなか難しいと思います。ブランドとして、目的が明確に定められていなければできないことでしょう。

澤田氏 今回はキーとなったテクノロジーが導入された際のモデルをピックアップして聴いていただきましたので、よりその流れは明確だったと思います。私も実際に一緒に聴かせていただいて、改善されるポイントはそのつど変わっていますが、少なくとも音の方向が右にいったり左に行ったりはしていないと感じました。

貝山氏 それは私自身も感じました。音の方向性にブレがないです。

澤田氏 こうしたことが可能だったのは、マランツという会社の規模が適度だったことと、比較的早い段階でサウンドマネージャーという職務を設置したことがあると思います。

貝山氏 確かにその通りかもしれません。例えば、かつてアンプとプレーヤーで開発チームが異なるというメーカーがありましたが、やはりそれぞれの主張があって、ブランドとして音を統一することは難しいよう感じました。

貝山氏は、ディスクプレーヤーの開発における近未来について澤田氏に質問を投げた

澤田氏 マランツもアンプとプレーヤーでエンジニアは異なりますが、音質検討は同じサウンドマネージャーが行いますし、音づくりはひとつの流れの中で行っていると言えます。

ディスクプレーヤーの近未来

貝山氏 改めて伺いたかったのですが、マランツにおいて、回路をディスクリートで組むべきという考え方はやはり大きな位置を占めているのでしょうか。

澤田氏 比較をすれば、良くできたディスクリートの方が良いです。もちろんICの良さもありますが、なんといってもディスクリートの方がパーツが大きいですからね。こんなことを言うとまたアナクロだと言われそうですが、アナログにおいてはやはり物量、デバイスの大きさが効いてきます。

ディスクリートDACの優位性には、より物量が投入できるという側面もあります。また汎用のICには、汎用だからこそ必要な補正回路などオーディオ再生にとっては余計ともいえるものも載っています。ディスクリートで回路を組む場合、必要なものだけをシンプルに組むことができます。これはオーディオ再生にとって有利なことです。また、マランツはアンプからスタートした会社ですので、自前でディスクリートの回路を組むノウハウを蓄積していることも大きいです。

貝山氏 現代のオーディオにおいてディスクリートにこだわることは、部品の確保ひとつをとっても非常に難しいことだと思います。

澤田氏 SA-7S1を開発していた2005年頃には、部品の確保も難しくなってきて、ディスクリート回路にこだわることをやめようと考えたこともありました。HDAMが作れなくなったときのことまで検討していたのです。しかし、そういった状況も少しずつ改善されてきています。サイドビジネス的にオーディオ専用部品を手がけるサプライヤーも出てきました。

貝山氏 澤田さんはディスクプレーヤーの近未来をどのように見ていますか。

澤田氏 ディスクプレーヤーの未来で最も憂えるのはドライブメカがいつまであるのかということでしょう。こうした懸念もあるからこそ、SA-10ではメカを自社で開発しました。よくあの段階で、新規メカの開発にGOサインが出たと思います。ドライブメカを自社で手がけているという強みは、これからも活かしていけると思います。

貝山氏 本日は貴重な試聴ができました。ありがとうございました。

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