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ケーブルだけでガラッと変わるアナログ再生の楽しみ

レコード再生のワンモア・ステップ(2)オマケの“赤白ケーブル”から卒業したい!

2022/07/17 飯田有抄
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アナログならではの音の魅力と楽しさを体験し、このところすっかりレコードにはまっているクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん。しかし、新しいテーマに取り組むたびに次々に課題や疑問が現れて、その奥深さに戸惑うことも。そこで、それらの問題を解決してうまく鳴らすための企画、第2回目のテーマは〈ケーブル〉に着目します。

ケーブルの違いについて教えてくれるオーディオ評論家の井上千岳さん(左)と筆者の飯田有抄さん(右)

「ラインケーブル」「フォノケーブル」「アースケーブル」はどう違うの?



もう何年・何十年と「オーディオをやっている」方々にとっては、すでに当たり前すぎて説明不要なことはたくさんあるだろう。ところが私のような初心者にとっては、何かの正式な(?)名称が分からなくて、買いたくてもどう調べたらよいか分からないことがある。けっこう混乱するのが、ケーブルだ。

プレーヤーとアンプを繋いだりする“赤白のケーブル”……ひとつ機材を購入すると“オマケ”のように付いてくるあのケーブルが、どうも頼りない。取材でメーカーさんや雑誌編集部の試聴室などに伺うと、ああいう頼りない赤白ケーブルで接続されたシステムなんて見たことがない。どうやら“ちゃんとしたもの”に買い換えた方が良いのではないか。きっと音は変わるんじゃなかろうか。

ラインケーブル(RCAインターコネクト)。右が赤白のオマケRCAケーブルで、左がゾノトーンのオーディオ用ケーブル「6NAC-Granster 3000α RCA」(29,700円/税込/1.5mペア)

ネット上にはいろいろあって、どんな名称で調べればよいのかもよく分からない。そして「測定数値に違いはないから、ケーブルなんて何でも良いのだ」説も目に入った。本当にそうなのか。そこで今回はまず、オーディオ評論家の井上千岳先生に“赤白のアレ”について詳しく教えていただいた。

RCAアンバランスとXLRバランス、ケーブルの種類と名称を整理



入門者ほどこだわるところかもしれないが、まずはケーブルの種類と名称を井上先生に伺った。機材と機材をつなぐケーブルには2種類ある。アナログケーブルと、デジタルケーブルだ。後者について今回は置いておくとして、アナログケーブルにはさらに、スピーカーケーブルとラインケーブルがある。今回私が「オマケじゃなくてちゃんとしたもの」が欲しいと思っているのが、この「ラインケーブル」だ。正式には「インターコネクトケーブル」と呼ばれる。

で、このラインケーブルにはまた2種類ある。一つは、主に業務機で使われるバランス接続用の通称「バランスケーブル」で、「XLRケーブル」とか「キャノンケーブル」などとも呼ばれる。これは端子のピンが、プラスとマイナス、そしてグラウンドとかアースと呼ばれる3つがある。

同じインターコネクトケーブルでも、端子の違う2種類がある。左がXLRケーブルで右がRCAケーブル。XLRケーブルはバランス接続で、端子の数は+(ホット)、ー(コールド)、アースの3箇所。RCAケーブルはアンバランス方式で、接点の数は+とーの2箇所

プロが使用するスタジオなどでは多くの機材が使われているため、さまざまなノイズが乗りやすい。バランス接続はノイズ除去の効果が高いために用いられるそうだ。高級オーディオ機器などにもこの端子がついていたりする。

もう一つが、一般的に使われるアンバランス接続用のケーブルだ。つまりここで私が問題にしている“赤白ケーブル”である。「RCAケーブル」とも呼ばれるし、単に「ラインケーブル」という場合、通常はこちらのケーブルを指すことが多い。

オーディオ用のケーブルでは、奏者の演奏のニュアンスまで伝わってくる



重要なのは、オマケの赤白ケーブルではなく、やはりオーディオ専用のものを使用することだという。「40年ほど前までは、ケーブルなんてただの電線だから、繋がってさえいれば音が出るから何でもいい、というのは確かに一般的な考え方でした。実際、線を変えて特性を測定したところで、可聴帯域の数値そのものに違いは出ないのです。ところが人間の耳というのはすごいもので、数値では測れないところにも、実際は大きな違いを感知できるんです」。そう語る井上先生がオススメしてくれたのが、ゾノトーンの「6NAC-Granster3000α RCA」だ。

実際に、オマケ赤白ケーブルと6NAC-Granster3000α RCAとで、ピアノ曲やオーケストラと合唱の曲を聴き比べしてみた。同じ音源なのに、驚くほど違った! オマケ赤白では全体的に音が塊でやってくるというか、平面的である。ところがオーディオ専用のラインケーブルにすると、強弱のダイナミクスや奏者が繊細にコントロールしている音色の変化も伝わった。こんなに違うものなのか! と正直驚いた。

「2種類のケーブルは、太さが全く違いますね。“オマケ赤白”は単にプラスとマイナスが1本ずつですが、オーディオ用のものはそれぞれ2本ずつ、合計4芯が中に入っています。6芯や8芯のものもありますよ。当然伝えられる音の情報量が変わります。素材の銅も、その純度が高ければ、やはり伝導性が上がって音は良くなります。また、プラス・マイナスの線はそれぞれショートしないように絶縁体で覆われていますが、その素材によっても音は変わります。“オマケ赤白”はビニールで覆っているだけですが、オーディオ用のものは高純度のポリエチレンが使われているのです」(井上先生)

ケーブルの構造断面。右が赤白ケーブルでよく見られる同軸構造、中央が2芯同軸構造、左がシールドされた4芯同軸構造

なるほど、すごい説得力。価格はもちろん、その見た目や質感だって大きく変わるわけだ。線を手にしてみると、しっかり重厚感があり、かつ、しなやか。見た目も美しい。やっぱり、オマケから一刻も早く変えなくては!

レコードプレーヤーに必須の「アース線」とは何ぞや?



「アナログレコードを聴く時は、ラインケーブルだけでなく、これが必要です」と井上先生が取り出したのは、「アース線」なるものだ。

先ほどのラインケーブルを、今度はレコードプレーヤーに接続してみたところ、ジー……ブーン……というひどいノイズが聴こえてきた。「ハムノイズ」というものだ。このままではとてもじゃないがレコード鑑賞はムリ。

一般的なアースケーブル(右)とオーディオ用アースケーブル(左)。アース線は引き回しの位置を変えることでも音がクリアになるほどに敏感なので、オーディオ用は素材も含めて入念に作られている

「レコードプレーヤーは音の信号がとても小さいので、MMカートリッジでも1000倍くらいまで増幅しないとCD並みの出力にはなりません。つまり、ノイズもそのまま盛大に増幅されてしまうので、CDプレーヤーと同じように接続すると、こうした大きなハムノイズが発生してしまうのです。それを避けるために必要なのが、アース線です。ノイズの原因になる余計な電流を捨てるためのものです」(井上先生)

フォノケーブルやアースケーブルは、ノイズをより拾わないようにするため、電源ケーブルからなるべく離すなど、引き回しのコツがある。アースを繋いだのにノイズが出るときは、ケーブルの位置を動かしてみよう。またケーブルは、コイルとして磁界の影響などを避けるため、束ねたり巻いたりせずに配置させる

「アース」とは地面、地球を意味する言葉だ。地面はプラスもマイナスもなく、0Vと考えられている。もともとは、洗濯機などの家電が壊れて漏電した場合、人が感電するのを防ぐために、地面に電流を流すための機能である(アース線も繋げられるコンセントプラグがありますね)。

レコードプレーヤーの出力端子。左右chの信号端子(赤白)に加えて、アース線を繋ぐ端子を持つ

トライオードのフォノイコライザー「TRX-EQ7」の背面。左右の信号ケーブルに加えて中央のアース端子へプレーヤーからのアース線を繋ぐ。フォノイコライザーからアンプへはアース線は繋がなくてOK

一方のレコード再生では、ノイズの要因になる「余分な電流を捨てる」ことがマストなので、アース線のための端子がプレーヤーにもアンプにもある。アンプのシャーシ(基板を収めている大きな箱部分)が地面の役割を担い、余計な電流が捨て去られ、ノイズが軽減するという仕組みだ。近年では、プレーヤーそのものに増幅機能を持つフォノイコライザーを載せた製品もあり、必ずしもアース端子はついていないこともある(入門機に多い)。

プレーヤーとアンプ間にアース線も加えて接続したところ、やはりノイズが大きく軽減された。ちょっとアース線を触ってみたり、角度を動かしてみるだけで、さらにクリアになっていく。アナログ再生はなんて繊細なんだろう。この追求が面白い。昨今では「オーディオ専用アース線」も開発されるようになった。「余分な電流を捨てる」機能の充実化は、まだまだ未知の部分も多いそうだ。

さらに、アース線がラインケーブルとセットになったような「フォノケーブル」なるものが存在する。単にアース線が付加されているのみならず、音楽信号を送るケーブル部分も、アナログレコード再生に特化した性能となっているとのこと。実際にゾノトーンの「6NTW-6060(RCA)」で試聴してみると、ラインケーブル+アース線よりも、一段レコードの音が濃厚に深く響いた。フォノケーブルの選択もまた魅力的である。

フォノケーブルにも、右のようなオマケ赤白ケーブルと、左のオーディオ用フォノケーブルある。左はゾノトーン「6NTW-6060(RCA)」(35,200円/税込/1.5mペア)


本記事は『季刊・analog vol.75』からの転載です

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