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少しの工夫で音が変わるのもレコードの面白さ

知識ゼロからのカートリッジ選び。“カートリッジ交換”でレコード再生をさらにグレードアップ

公開日 2021/08/14 06:30 飯田有抄
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■レコードプレーヤー、接続の基本をおさらい!

ところでレコードプレーヤーって、それだけ買ってきてすぐ音が出せるというわけではないのは、皆さん大丈夫ですかね? 大丈夫ですよね? 昔も今もスピーカー一体型プレーヤーというのもありますが、基本は……

《アナログプレーヤー→フォノイコライザー→アンプ→スピーカー》と繋いでやっと音が出ます。フォノイコライザー内蔵のプレーヤーとか、フォノイコライザー内蔵のアンプとか、アンプ内蔵のスピーカーとか、あれこれ端折れるところもありますが、基本この4つが必要になります。

レコードからピックアップされる音楽信号は非常に小さいため、フォノイコライザーとアンプを使って、スピーカーで再生できるまでに増幅します

エントリークラスのアナログプレーヤーでは、付属MMカートリッジとMM対応のフォノイコライザーが内蔵されていることもあります。このままアンプに繋ぐだけで再生できますが、もしMCカートリッジに交換したいな、と思ったら、MCに対応するフォノイコライザーが別途必要になります。その場合はMM/MCの切り替えができるプリメインアンプや、フォノイコライザーなどを導入しましょう。

ティアックのアナログプレーヤー「TN-3B」には、付属カートリッジとしてオーディオテクニカの「AT-VM95E」相当の製品とMM対応のフォノイコライザーが同梱されています

なお、カートリッジとフォノイコライザーの接続を誤ると、大きなノイズが出てしまったり、明らかにおかしな音で再生されてしまったりします。それだけで機材が壊れるようなことはありませんが、再生する前にはアンプのボリュームを下げて、問題なく再生できるか確認するのが安全です。

例えばオーディオテクニカのフォノイコライザー「AT-PEQ30」ではフロントのスイッチでMM/MCの切り替えができます

※中級者向けの情報としては、「MM入力」しか持っていないフォノイコライザー/アンプでMCカートリッジを聴きたい場合、「昇圧トランス」という製品を組み合わせることで実現できます。昇圧トランスはオーディオテクニカからも「AT-SUT1000」というトップクラスモデルがラインアップされているほか、オルトフォンやフェーズメーション、マイソニックといったハイエンド・オーディオメーカーから発売されており、さらに奥深いレコード再生の世界が広がります。

■オーディオテクニカの主要ラインアップを聴き比べ!

さて、オーディオテクニカさんの試聴室には開発にも使われているという素敵なオーディオシステムがあり、そこでカートリッジをとっかえひっかえ、試聴させていただきました! 

オーディオテクニカの試聴室。テクニクス、トーレンスなど複数のアナログプレーヤーを使用して開発を行っているそうです

レファレンススピーカーとしてソナス・ファベールの「IL CREMONESE」を使用

(1)VMカートリッジ「VM540ML」、MCカートリッジ「AT-OC9XSL」聴き比べ

VM540MLは、じつは筆者も自宅で使用しているカートリッジです。プレーヤーに付属していたカートリッジに比べると、楽器の音の立ち上がりがずっと情報量が多く、家での鑑賞がとても楽しくなりました。


アルゲリッチの名盤で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を「VM540ML」と「AT-OC9XSL」とで聴き比べました。VM540MLでも十分に迫力がありますが、AT-OC9XSLでは金管楽器の高音のキレと華やかさが強くなり、オーケストラの低音域も深みがありつつも、クリアに! 比べてしまえば、VM540MLはちょっとモコモコしていたかな……

取材後、AT-OC9XSLも自宅に導入! もう……手放せない……

(2)MCカートリッジ「AT-ART9XA(空芯)」「AT-ART9XI(鉄芯)」聴き比べ

昨年に発売になったオーディオテクニカの最新カートリッジは、なんとMC型の「鉄芯型」と「空芯型」を同価格でラインアップしています。コイルを巻く部分に鉄芯を使うか使わないかという違いですが、実際に聴いてみると、まったくそのキャラクターが違うので驚きました!


松任谷由実の「曇り空」を聴いてみましたが、AT-ART9XA(空芯)は声や楽器の位置関係が立体的に伝わり、ふわりと浮き立つような音の立ち上がりがとても美しく響きました。一方AT-ART9XI(鉄芯)は音圧を感じるサウンドで、しっかりとした鳴りがお好みの人には心地よいはず。筆者の個人的好みは軽やかな空芯でした。

(3)MCモノラルカートリッジ「AT33MONO」

メニューイン独奏、フルトヴェングラー指揮で、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴きました。モノラル録音ですが、ヴァイオリンの艶やかさ、オーケストラのまろやかな広がりが充実していました。これは丸針のカートリッジだそうですが、モノラルならではの温かみある雰囲気も素敵でした。


(4)フラグシップモデル MCカートリッジ「AT-ART1000」

最後に、驚愕の最高クラスモデル、AT-ART1000が登場。お値段なんと、約60万円(震)。チョン・キョンファ独奏によるサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番と、ジャクリーヌ・デュ・プレの独奏でエルガーのチェロ協奏曲を聴きました。独奏者による弱音からオーケストラによる全奏までの鮮やかなダイナミズムが見事で、もはや目の前にオーケストラと独奏者が存在するかのよう。こうした高級モデルは、限りなく繊細な音のニュアンスを伝えてくれることを実感。パワーよりもきめ細かさ、強度よりも充実度といったらいいのか……。思わず音楽の世界に没入して聴き入ってしまい、うっかりカートリッジだとかプレーヤーだとかの存在を忘れてしまいそうでした。機械のことを忘れ去れてくれる機械って、すごいですよね。


小さな部品ひとつで、広がる音体験。その豊かな遊び場で戯れたいものです♪

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