少しの工夫で音が変わるのもレコードの面白さ

知識ゼロからのカートリッジ選び。“カートリッジ交換”でレコード再生をさらにグレードアップ

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飯田有抄

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2021年08月14日
■「レコード針の交換」、意外とハードルが高い!? 仕組みを知れば心配ご無用

LPレコードの人気復活が注目されて久しい昨今、懐かしさとともに再入門した人や、新鮮な気持ちでアナログ生活に突入した世代の人もいることでしょう。

アナログレコードの可能性には、いま改めて注目が集まっています。レコード再生は「どこに手をかけても音が変わる」、まさにオーディオならではの楽しみが詰まっています。今回は、アナログ再生のグレードアップの基本、“カートリッジ交換”について学びましょう

アナログプレーヤーを買ってきて、LPレコードの世界を堪能しているうちに、だんだんやってみたくなるのが、音質の向上ではないでしょうか。どこかにちょっと手を入れたり工夫したりすることで、ガラリと音の印象を変えられるのがアナログの面白さ。デジタルよりも手応えを得やすいのも、レコード再生の魅力かもしれません。

そこで頭をよぎるのが「レコード針の交換」ですよね。ところが、いざやってみよう!と思うと、どの部分のどんな部品から交換すればいいのかよくわからなくなって、思いのほかハードルの高さを感じてしまう人もいるのではないでしょうか。カートリッジって、いったいどの部分? え、ヘッドシェル付きってなに? などなど、調べ出すといろんな種類や部品が出てきて、初心者はますます混乱してしまう……筆者もそれで挫折して、なかなか替えられずに月日が経ちました。

そこで今回は、レコード針の交換の第一歩をだれもが踏み出せるように、針に関する部品の種類や仕組みについてご紹介します。ご協力いただいたのは、カートリッジメーカーとしてスタートしたオーディオテクニカの、商品開発部ホームリスニング開発課マネージャー小泉洋介さん。分かりやすく教えていただきました!

オーディオテクニカのカートリッジマイスター、小泉洋介さん(右)にカートリッジの基本を教えてもらいました!

レコード針の基本構造について知ろう

まず、レコード針の付いているアームの先端は、下の図のようになってますよね。「針を交換してみたい」と思ったら、この部分から先の交換をイメージしてください。ここは、「ヘッドシェル」と「カートリッジ」に分けることができます。

カートリッジはレコードの音溝から音楽信号をピックアップする重要なパーツ。カートリッジは、(多くの場合指かけのある)ヘッドシェルに取り付けられ、シェルリード線でアームと接続されています。ちなみに、ヘッドシェル一体型のカートリッジもありますよ
 
なお、「ヘッドシェル」と「カートリッジ」の両方を買わなくても、「カートリッジ」だけ買って交換することもできます。両者を接続しているリード線というのがありますが、この線だけを交換することもできます(素材によってガラリと音が変わったりします!)。

ところでカートリッジには、「MC型」と呼ばれるものと、「MM型(VM型)」と呼ばれるものの、大きく2種類があります。それらの違いはとても重要なので、後述しますが、MM型(VM型)はさらに「ボディ」と「針」とを別々に分けて買うこともできます。MC型はボディと針が一体化しているので、分けて買うことはできません(理由は後述)。

カートリッジをさらに細かく観察すると、ボディと交換針に分けられます。オーディオテクニカのMM(VM)カートリッジのほとんどはこの構造ですが、ブランドごとに細部は異なります。ただし、MCカートリッジはボディと針が一体になっています

上の写真で緑色に囲った部分は「交換針」とか、単に「針」と呼ばれることがありますが、本来の“針”のイメージといえば下の写真の部分ですよね。ここはダイヤモンドでできている「針先(スタイラスチップ)」「カンチレバー」「ダンパー」で構成されています。

針先をさらに細かく見てみると、カンチレバーという5mm程度のバーの先に「スタイラスチップ」(多くはダイヤモンド)が取り付けられています。音楽信号はこのチップがピックアップしています!

さて、どんどん細分化していきますが、針先はさらに、「丸針」「楕円針」「ラインコンタクト針(特殊ラインコンタクト・マイクロリニア・シバタなどのバリエーションがある)」の大きく3種類に分かれます。

こうした部品や構造によって、音質や価格に違いが出てくるわけです。自分がどんな選択をすればいいのか、続きを読んで判断するヒントにしてみてください。

■MC型とMM型の違い

まず、先ほどから登場している、MC型とMM型の違いです。

MC型=Moving Coil型
カンチレバーの針先と反対側にコイルが付いていて、コイルを動かすことで発電する仕組みのカートリッジです。20ミクロンという、とても細いコイルを巻いています(ちなみに髪の毛は一般的に50ミクロン)。製造は職人の手作業で行われるため、比較的値段が高くなります。出力電圧はおおよそ0.4〜0.5mV。フォノイコライザー(←あとで少し説明します)による増幅率が高くなければならないため、ノイズに埋もれやすくなる危険性がデメリット。ただし、レコード盤に刻まれている音の情報を比較的繊細に拾い上げ、情報量の多い再生が可能です。高い増幅率を要するので、フォノイコライザーなど接続機器もそこそこ良い物を使うことが必要。構造上、コイルが出力端子に直に繋がっていなければならないので、ボディと針先は一体化、別々に買って交換はできません。また、後述しますがコイル部分に鉄を使う「鉄芯型」と、非磁性体のコアにコイルを巻くかコイルが中空となっている「空芯型」の2種類に大きく分かれます。

MCカートリッジの発電の仕組み。カンチレバーの根元にコイルが巻いてあり、コイルが振動して発電します。機構上、針とボディが一体となっているので、取り外して交換することはできません(画像出典:カートリッジナビ)

MM型=Moving Magnet型
カンチレバーの針先と反対側にマグネットが付いていて、マグネットを動かすことで発電する仕組み。出力電圧は約4〜5mVと、MC型のおよそ10倍。フォノイコライザーの増幅率はMC型よりも低くて済むため、ノイズに埋もれにくい。レコード盤に刻まれている音の情報を比較的パワフルに拾い上げ、力強い再生が可能。比較的安価で入手できるので、入門者に適しています。ボディと針先は着脱可能なので、気楽に針の交換を楽しめます。

MMカートリッジの発電の仕組み。根元のマグネットが動きコイルに磁界が発生します。針先とボディを別々に購入して好みの組み合わせを実現することもできます

ざっくりと両者の違いをあげるとこうなるのですが、もちろんMC型もMM型も使用する素材によってグレードや個性や価格の違いがあるため、一概にMCの方がMMよりも上位、とは言い切れません。接続するアンプやスピーカーとの相性もありますし、どんなジャンルの音楽を自分が再生したいかによっても感じ方が変わります。迷ったら、まずは自分にとって買いやすいものから交換してみて、徐々にステップアップするのがいいかもしれません。

ちなみに、VM型とは、MM型の一種です。オーディオテクニカが1967年に特許を取得した機構です。通常のMM型カートリッジは、カンチレバーの根元にマグネットがひとつだけ付いているのですが、オーディオテクニカはマグネットを2つ、V字型に配置しました。それによって磁気回路を分けて、音の分離が際立った再生ができるようになりました。

オーディオテクニカの特許技術である「VM型」はMM型の一種です。マグネットがV字型に取り付けられていることからこの名がつけられました

針先の形状、素材なども音質のポイント

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