オーディオテクニカ「AT33xシリーズ」レビュー! ファン待望の新MCカートリッジ3機種を比較試聴
AT33xシリーズ 音質レビュー:「MLB」「MLD」「EN」の違いは?
MLB/MLD/ENの3機種はカンチレバーの素材と針先の形状が異なり、音の違い、価格の違いにつながっている。具体的に聴いてみよう。
AT33xMLB:「情報量豊かな明快な高域」

カンチレバーはソリッドボロンでスタイラスはマイクロリニア、通称MLつまりラインコンタクトである。
たっぷりとしたなかに窮屈さを伴うことなく、ヴォーカルにしてもソロ楽器にしてもセンターの音像が膨らむことなく、それでいてクラシック音楽のホールトーンやのびのびとした音場の豊かさがそのグレードの高さを感じさせる。
ギターの胴はタップリと響くが緩さということではなく、あくまでも晴々とした音場のなかに輪郭をクリアに聴かせる。また、弦楽合奏のなかでもそれぞれの楽器は明瞭な分解性を聴かせながらもアンサンブルのしっかりとした響きが演奏の素晴らしさをよく伝える。独奏ヴァイオリンなどにみる高域の繊細なノビはそのボウの動きの鮮やかさや楽器そのものの見事な音色などを十分に感じさせる。
前作は2014年に発売されているAT33Saで針先はシバタ針、高域のノビと強さ、鋭さがシステムによっては強めに出る傾向があったが、MLBでは情報量豊かな明快な高域で、刺激性は抑えられている。
AT33xMLD:「耳馴染みの良いリラックス感が漂い親しみやすさを感じさせる」

カンチレバーはジュラルミン。アルミの一種とも言えるがやや粘り気のある素材で、針先はMLB同様マイクロリニア。つまり、MLBとはカンチレバーの違いということになる。
どこか耳馴染みの良いリラックス感が漂い親しみやすさを感じさせるのが、ジュラルミンの良さかもしれない。音に太さを感じさせるというか、タップリとして重心の低い朗々と鳴るサウンドで、当シリーズの特徴を最も感じさせるバランスと言えそうである。
その大らかさやのびやかな雰囲気は、ヴォーカルでは人の体温を感じさせる温かみがあり、朗々と歌い上げるジャズのソロ楽器などは緊張感を強く伴うことなくラクラクと味わえる。
豊かなスケール感とタップリとした響きは厚手と言えるが、細かい分解性のようなところにMLBとの違いがあるような印象で、いくぶん甘めなサウンドと言えよう。
前作は2010年に登場している「33PTG/II」になろうかと思うが、中域のしっかり感などは共通でありながらPTG/IIの軽さ、明るさからMLDのどっしりとしたバランスにやや重心を下げていると言えそうだ。
