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ただし音質は48kHz/24bitまで

リンのネットワークプレーヤーでAmazon Music HDが聴ける?“ストリーミング端末”を活用しよう!

公開日 2022/04/09 06:30 土方久明
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■500万円のフラグシッププレーヤーの実力をストリーミングでも!

リンのDSMシリーズは現在、すべてHDMIありのモデルをラインナップしている。どのモデルでも使い方は一緒だが、今回はあえて、ヘッドユニットにトップモデルである税込528万円のKLIMAX DSM/3/H(なお、型番最後のHはHDMI入力付きを意味する)を投入、スピーカーはパッシブタイプの「KLIMAX 350 PASSIVE」、パワーアンプに2台の「KLIMAX SOLO」と、合計で税込1,485万円のハイエンド構成。

リンのパッシブスピーカーのフラグシップ「KLIMAX 350 PASSIVE」でAmazon Music HDを聴く!

そして注目したいのは、KLIMAX DSM/3/Hが、HDMI端子を持つオーディオ機器として非常に洗練されたソリューションを提供していることだ。

試聴に入る前に、これらの機材について軽く解説しておこう。KLIMAX DSM/3は最新のフラグシップネットワークプレーヤー(ストリーマー)。2007年に民生業界初となる初代DSを発売してからネットワーク再生を牽引してきたリンの知見が全て投入され、シャーシからDAC回路まで全領域に渡り刷新された1台である。特別なグレードのアルミブロックから8時間を要して超精密に切削加工された品位の高いシャーシ。DACチップを使わない、ディスクリート方式のDAコンバーター、ORGANIK(オーガニック)の搭載など、その仕様は「ついに来たか!」と発表時にファンを感心させた。さらに光LANに対応するSFPポートの実装など、ここでは書ききれないほどの充実した内容を誇る。

独自のDAコンバーター「ORGANIK」のクオリティはHDMI入力でも活用できる

本試聴ではHDMI入力を利用するが、デジタル入力も豊富で、RCA同軸(S/PDIF)が2系統、TOS入力、USB Type-B入力がそれぞれ1系統、そしてHDMI入力は4系統も備わる。また、部屋固有の定在波、特に影響のある80Hz以下の低音の定在波を強力かつ高精度に補正できるSpace Optimisation(スペース・オプティマイゼーション)機能が備わることも大きなアドバンテージだ。

2台のKLIMAX SOLOは、リン最上位のモノラルパワーアンプ、アルミインゴットから精密な削り出し加工で製作されたシャーシ、ローノイズのスイッチング電源を搭載し、4Ωで650Wものパワーを実現する。僕も使っているので、本アンプの音はよく知っているが、ハイパワーかつノイズフロアが低い音で、様々なタイプのスピーカーを強力に駆動できる。

プリ機能までを「KLIMAX DSM/3/H」が担当、パワーアンプには「KLIMAX SOLO」を2台用意

今回はKLIMAX DSM/3の高精度なボリューム回路を生かして情報量の欠落を最小限に活かすため、KLIMAX SOLOとラインケーブルで直結した。

KLIMAX SOLOで駆動するスピーカーは、リンのパッシブ駆動タイプ最上位モデルとなる5ウェイのKLIMAX 350 PASSIVE。高音域から中音域までは、リン独自技術の3Kアレイテクノロジーによる3ウェイユニット+アッパーベースユニットで受け持ち、低音域は200mmのローベースユニット2基を搭載。内蔵する合計1000ワット×2基のアクティブサーボ型のアンプで強力に駆動される。

KLIMAX 350 PASSIVEの低域部はアクティブ駆動

余談だが、リンというと、KLIMAX EXAKT 350など全ユニットをパワーアンプで駆動する、いわゆる “EXAKTタイプ” のスピーカーを連想する方も多いと思う。ソースからスピーカー直前までロスレスのデジタルドメインで結ぶオーディオマインド溢れるスピーカーだが、それに対してKLIMAX 350 PASSIVEは、一般的なパワーアンプで駆動できるので、他メーカーのコンポで組まれたシステムにも容易に導入できるのが嬉しい。また、オプションで200色以上のカラーが選択できるので、インテリアにこだわったリビングやオーディオルームに合わせて映えるようにセッティングできる。

■まずは「Fire TV Stick 4K MAX」から! ローカルのハイレゾファイル再生とも比較

それでは、いよいよここからは3台のストリーミング端末の音をレビューしていきたい。今回は、Amazonの「Fire TV Stick 4K MAX」(6,980円/税込)、「Fire TV Cube」(14,980円/税込)、「Apple TV 4K」(21,780円/32G/税込)の3台を用意した。いずれもネットワークやアカウント等の初期設定を済ませ、KLIMAX DSM/3のHDMI端子に挿入、さらにストリーミング端末の動作ステータスを確認する小型モニターをHDMIで接続して行った。

ネットワークやアカウント等、端末の初期設定はいずれも10分もかからずに終了。早速試聴に!

なお1つご留意いただきたいのが、この方式で得られるレゾリューションは、ストリーミング端末側の制約で最大48kHz/24bitまでとなることがある。またレゾリューションの最終確認は信号がダイレクトに入力されているDSMの表示部で行なったが、モニター上には別のレゾリューションが表示されることもあった(表示上のバグだと推測)。また、これらのスペックは記事執筆時での仕様であり、今後ストリーミング端末のアップデートやストリーミングの仕様が変われば変更が起きる可能性もある。

試聴曲は3タイトル。(1)ポップス系の女性ボーカル 中島美嘉「SYMPHONIA」(96kHz/24bit FLAC)、(2)男性ボーカル ホセ・ジェイムズ『リーン・オン・ミー』(44.1kHz/24bit FLAC)から「ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」、(3)クラシック山田和樹、読売日本交響楽団「マーラー:交響曲第1番 ニ長調 「巨人」/花の章」(96kHz/24bit FLAC)だ。

まずは比較用のリファレンスとして、fidataのサーバー「HFAS1-XS20」から各楽曲のハイレゾファイルを再生した。

高域から低域までワイドレンジで、特に低音域は大変強力だ。スペース・オプティマイゼーションの効果が如実に出ており、音を濁す付帯音が強力に抑えられた芯のある低域が嬉しい。センター定位する音像の立体的な表現や音場の広さも秀逸で、しかも音楽性も高い。流石はリンのフルシステムの音といったところ。

それでは、1機種目は「Fire TV Stick 4K MAX」からスタート。2021年発売で、99W×30H×14Dmmの筐体先端にHDMI端子を持つスティック型の端末だ。CPUはクアッドコアの1.8GHzを搭載。Alexa対応の音声認識リモコン(第3世代)が付属するので、テレビを見ながらリモコンを操作して再生指示を出す形になる。

「Fire TV Stick 4K MAX」を突き刺したところ。背面に少しスペースの余裕が必要

DSMのフロントディスプレイに48kHz/24bitと表示され、「やった! HDMI端子からデジタルで信号が流れている」と嬉しくなった。本楽曲は96kHzなので、ダウンサンプリングされるという事前情報は正しそうだ。

小型ディスプレイを活用することで現在の再生状況を確認できる

気になる音質だが、ハイレゾファイル再生と比べると絶対的な分解能については若干低下するものの、帯域バランスの崩れはなく、音色も同一傾向なので安心した。中島美嘉の絞り出すように聴かせるボーカルや、音像の大きさや前後の定位表現も秀逸。

ちなみにホセ・ジェイムズは、44.1kHz/24bitと表示された。こちらはソースのレゾリューションそのもの、空間の空気感やバスドラムとベースの音が重なった時の分解能もしっかりと提示する。Spotifyなどのロッシー音質では難しい表現がしっかり聴き取れる。

ホセ・ジェイムズは44.1kHz/24bitと本来のクオリティで再生

フィラデルフィア管弦楽団、ヤニック・ネゼ=セガン 「ラフマニノフ:交響曲第1番、交響的舞曲」(96kHz/24bit FLAC)については、DSMのフロントディスプレイには48kHz/24bitと表示された。やはり48kHzより上の音源はダウンサンプリングされるようだ。オーケストラを構成する各楽器など、音の情報量を要求されるパートも秀逸に表現しており、音場の広さやバランスも確保。ロスレスのメリットが実際に聴こえてくる。

96kHz/24bitの音源は48kHz/24bitとして再生

■「Fire TV Cube」と「Apple TV 4K」もチェック! 音質面でも差が現れる

次にFire TV Cube(第2世代)を接続した。本体サイズ86.1W×86.1H×76.9Dの、文字通りキューブ型筐体のモデルだ。CPUは2.2GHz×4、1.9GHz×2のヘキサコアと強力である。機能や操作性については、Fire TV Stick 4K MAXとほぼ変わらない。だが音質についてはやはり違いが出た。帯域バランスや音色についてはFire TV Stick 4K MAXと同じ、つまりハイレゾファイルとも遜色ない。

キューブ形状でプレーヤーの脇に設置できる「Fire TV Cube」。スティック型と違い背面スペースがなくても設置可能

しかし分解能についてはほんのわずかだがFire TV Stick 4K MAXより上がっており、聴感上のノイズフロアも若干低い。中島美嘉やホセ・ジェイムズの音像はしっかりと張り出してくるのでバックミュージックとの描き分けも秀逸。山田和樹はサウンドステージが広々としているし、演奏会場の広さもよくわかる。グランカッサなどの打楽器にタッチに芯があって、その周りに漂う空気感の表現なども良質だ。こちらもロスレスのメリットを感じる。

最後はApple TV 4Kを利用して、Amazon Music HDを再生した。実は、本端末はApple TVやNETFLIXなどの映像ストリーミングサービスでも画の情報量が多く、ノイズフロアも低いなど性能の高さを発揮するのだが、音質的な差も聴かせてくれた。

画質の面でも定評あるApple TV 4Kは音質面でもかなり◎

一聴して音が良いのだ。聴感上のSN比が高く、一音一音に立体感がある。中島美嘉はボーカルやピアノなど一つ一つの音像がよりしっかり聴こえる。山田和樹のオーケストラの分解能は一つ上のステージに上がり、スケール感も十分。ここまでくると音楽的にどのような表現をしたいのかが分かるレベルまで達していた。



いかがだったろうか? 実際にセッティングしてみると機材構成は簡素で、既にリンのDSMシリーズを使用しているユーザーであれば導入は容易だ。

音質については、サーバーからのローカルハイレゾファイル再生には及ばないものの、その差は予想よりも小さく、レゾリューション的に有利なAmazon Music HDの世界を十分に楽しむことができる。特にApple TV 4K端末を使用した時はかなり印象が良かった。

48kHzより上の音源はダウンサンプリングされていたが、分解能の高さや情報量はロッシーサービスとは別の次元にあり、それだけでもメリットを感じた。また、3台のモデルはそれぞれ音質や音調に違いがあり、オーディオ的な面白さがあったことも大きな収穫。こんなシステムで縦横無尽にAmazon Music HDが楽しめることに大きな価値を感じた。

日本人アーティストの楽曲がたくさん聴けることなど、Amazon Music HDのアドバンテージは多い。映像も音楽も贅沢に楽しみたいリンユーザーに、ぜひ実践してもらいたい。

(Photo by 君嶋寛慶)

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