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<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME

テクノロジーで音質をイノベートする。DEVIALETのプリメイン「Expert 220 Pro」の本質を徹底追求

2022/01/21 角田郁雄
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■フランスのテクノロジー集団・DEVIALETの洗練されたデザインと音質を堪能

あけましておめでとうございます。読者の皆さんはどんな年末年始を過ごされましたか? 私は、家の片付けと、少しですけれど料理にチャレンジしました。これが結構、やってみると楽しいのです。オーディオでは、年末から聴き応えのあるハイレゾ音源が登場しました。また、フランスのDEVIALET(デビアレ)のネットワーク・インテグレーテッドアンプ「Expert 220 Pro」も年末ギリギリに我が家にやってきたので、各種設定を行い、その音楽描写を堪能していました。

DEVIALET プリメインアンプ「Expert 220 Pro」(価格:1,375,000円/税込)

というわけで、新年第1回目は、この「Expert 220 Pro」の技術、使いこなし、音質について紹介します。

2022年最初のオーディオSUPREMEはDEVIALETに注目!

まず魅力的に感じたことは、何と言ってもこのクローム仕上げの光沢のあるアルミボディですね。シンプルなデザインですが、ハイエンドなフレイバーを漂わせていて、音量調整と設定を行う大型ノブのついたリモコンのデザインもいい感じです。

「Expert Pro 220」を角田氏の自宅リスニングルームでテスト!

では、どんな再生ができるかを説明します。入力としては、フォノイコライザー対応のRCAアナログ入力1系統、RCAライン入力1系統を装備します。デジタル入力としては、光TOS、RCA同軸、AES/EBU、USB、ネットワークを装備し、Wi-Fiにも対応します。そのほかに、AirPlay、Spotifyなどのストリーミング、Roon再生にも対応します。実に豊富な機能を装備していますね。最大出力は220W(6Ω)で重量は5.9kgです。

「Expert 220 Pro」のリアパネル。左上にSDカードを挿入できるスロットがあり、保存したコンフィグデータをここに挿入することで使用できる

実際の使用にあたっては、デビアレのホームページでアカウントを作り、オンラインのコンフィグレーターで、ファームウェアをSDカードにダウンロードし、各入力やその機能を設定します。

各種設定はブラウザ上から行える

例えば、ライン1にフォノイコライザー機能を割り当てることができ、MM/MCの選択、イコライザーカーブの設定、負荷抵抗と負荷容量などの設定ができるほか、代表的なカートリッジの設定が行えます。例えば、世界的にも有名なDENON「DL-103」を選択でき、自動的に最適な設定がプリセットされます。これをRAM(Record Active Matching)と言います。

またCDプレーヤーの接続設定では、アナログ接続だけではなく、光TOS、RCA同軸のデジタル入力設定も行えます。USBやネットワーク再生の設定も行えます。こうした設定も実に楽しいです。

■スピーカーごとに動作を最適化させるSAM機能の魅力

さらに魅力的なことは、SAM(Speaker Active Matching)という機能です。これは、スピーカーのウーファーの動作を最適化、制動力向上を目的とし、高域や中域ユニットとのタイムアライメントも整えます。デビアレでは、すでに1000種類以上のスピーカーをSAMに対応させ、プリセットできます。愛用のB&W「802D3」も、もちろん選択できました。

リモコンによる操作画面

さらに設定ではマルチアンプ方式にも対応し、例えばB&Wのオリジナルノーチラスをステレオモードで4台、モノラルモードで8台、並列駆動することができます(※注:ノーチラス用には専用のデータをデビアレに支給してもらう必要があり、WEBのみでは設定不可)。そのために、カットオフ周波数が設定でき、フィルターも1次から4次まで設定できます(一般的なスピーカーでは、フルレンジモードで2次に固定されます)。これらの設定が完了したら、SDカードにダウンロード(保存)します。

驚くのはSAMの効果です。アナログ、ハイレゾ再生を問わず、低域は明らかに引き締まり、ハイスピードでボトムエンドを打つかのような高い音圧が体験できます。またSDカード設定後も、リモコンの右スイッチで「ACCORDO」を選択し、大型ノブで0〜100%まで強弱可変させることでウーファーの力感を変化させることができます。左右バランスやトーンコントロールも調整可能です。

リモコン操作で「ACCORDO」を操作すると、ウーファー制動力が変更できる

SAMの効果は、低域だけではなく、高域と中域ユニットにも影響しているようで、マーラーの交響曲やアグレッシブなジャズでは、鮮烈とも言える力感に溢れたシンバルや金管楽器の響きが聴けます。この音は、アナログ録音のレコードに迫るほど倍音が豊富で、楽器数の少ない穏やかなヴォーカル曲(例えば、ダイアナ・クラールのアルバム)を再生すると、解像度と空間描写性が高まった印象も受けます。聴き慣れた96kHz/24bitのハイレゾ音楽も、音の透明度が極めて高く、とてもデジタル再生とは思えないアナログ再生に迫る、厚みのある音質を体験させてくれます。

■独自のクラスDアンプを搭載。徹底して外来ノイズを排除する

次に搭載技術を紹介します。底板を外し内部を観察したいと思ったのですが、完全に固定されていて外せませんでした。ですから、本国サイト、輸入元資料、海外の資料や内部写真などを参考にして、主な技術を探りました。

デジタル入力付近に、デジタル制御部(Core Infinity)があり、TOSや同軸入力のほか、XMOSによるUSBレシーバー、LANレシーバー、Wi-Fiトランシーバーなどが配置され、1GHzのクワッドコアARMプロセッサーやFPGAなどで制御されています。

またアナログ入力は、ADコンバーターで96kHzまたは192kHz/24bitにデジタル化され、各種設定に対応した処理がPCM信号で行われた後、最終的にDAコンバーターでアナログ信号に変換されます(旭化成のサンプリングレートコンバーターなども使用しているようです)。ここでアナログ化された信号は、中央の大型基板に接続されているようです。

これが、デビアレ独自の出力段、ADH(Analog Digital Hybrid)です。これは、クラスDアンプの前段にクラスAのアナログ増幅回路を設置した、独自のクラスD出力段です。アナログならではの繊細さ、柔らかさ、豊潤な倍音、そして増幅のリニアリティをクラスD出力段に加えることにより、高音質なアナログ音質を加え、音楽の躍動感を鮮明にしたのではないかと思っています。しかも、このADHをSAMでデジタル制御しているのです。

この基板上では、FETによるA級回路、PWM変調器、スイッチングMOS-FETと思われる素子が1/3ほどの面積で配置され、主たる出力段を構成しますが、2/3は、コンデンサー、コイルインダクター、パワーチョークコイルなどで埋め尽くされています。どのように機能しているのか分かりませんが、おそらく徹底して外来ノイズを排除していると想像しています。

電源部はシールドされたスイッチング電源ユニットで、これとは別に大型のコンデンサーを6式搭載し、負荷に強く安定した高品位な電源供給を行なっているようです。

特筆すべきは、諸特性にも優れていることです。S/Nは130dB、全高調波歪み率+ノイズ特性は最大出力で0.0005%、出力インピーダンスは0.001Ωという低インピーダンス特性で、優れたダンピングファクター特性値を実現しています。それにしても、精密感に溢れた内部技術にはオーディオマインドを掻き立てられてしまいます。

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