ニコンのカジュアルな実力派「Z fc」、Z初のマクロ「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」特別レビュー

■カメラらしい佇まいとトップレベルの画質を融合

実際に持ち歩いて使ってみると、なんとも心地よい。自身がフィルム一眼レフ育ちということもあるが、「Z fc」を首に下げ、真上から見下ろした時の佇まいに、他機種にはない満足感がある。

一見では重そうにも見えるボディだが、その質量は約445g（バッテリー、メモリーカード含む）。キットの標準ズームレンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」を装着しても約580gと十分に軽量で、バッグに入れっぱなしにしてもかさばらず、一日中首から下げていても苦にならないレベルだ。

操作はダイアル中心で、カメラの電源をいちいちONにしなくても撮影モードやISO感度、シャッター速度、露出補正値が一目で把握できる点も、実に安心感がある。もちろん撮影モードを「AUTO」にすればフルオートでの撮影も可能なので、操作に不慣れなカメラ初心者、入門者の方も安心して使えるだろう。

また、ファインダーの見え味も良好で、AF速度も十分に軽快。瞳AFや動物AFにも対応しているので、スナップはもちろん、子どもやペットなど、動体撮影も難なくこなせる。連写速度もAF／AE追従で秒間最高11コマ（拡張時：メカシャッター使用、JPEGおよび12bit RAW記録時）と高速だ。

画質は、現行のAPS-Cミラーレスの中でもトップレベル。キットレンズとして用意されている「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR SL」、「NIKKOR Z 28mm f/2.8（Special Edition）」両レンズの性能がきわめて高いこともあり、とても自然でキッチリとした写りが印象的だ。

動画性能も必要十分に備え、クロップなしの4K UHD／30pに加え、フルHD／120pのハイフレームレート動画も、1カット約30分まで録画できる。背面ディスプレイもバリアングル式を採用しており使い勝手も上々。もちろんWi-FiやBluetoothにも対応し、撮影した静止画、動画をすぐスマートフォンに送ることも簡単だ。

本機をじっくり試用して、強いて気になる点を挙げるとすれば、往年のフィルム時代のモデルと比べて、ダイアル操作の感触の精密さに若干の物足りなさを感じるが、そこは本機のクラスや価格帯を考慮すれば、ある程度納得せざるを得ない部分だろう。

デジタル化によってカメラが「嗜好品」から「実用品」へと大きくシフトしていく中、「趣味のモノ」、「自分の思考を表現するモノ」といった、カメラが本来備えていた価値が置き去りにされてきた感が否めないが、そうした流れに一石を投じたのが、この「Z fc」といえるだろう。