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【特別企画】フラグシップにふさわしい表現力

ラックスマンの歴史と新技術の融合、真空管コントロールアンプ「CL-1000」が実現したリアリティと力強さ

2020/02/25 山之内 正
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メータ指揮ベルリンフィルの演奏で聴いたブルックナーの第8番からも、同じ印象を受けた。同じリズムを刻む複数の楽器を鮮明に鳴らし分ける解像力の高さは、同社のアンプ群の中でも一際抜きん出たものがあり、特に管楽器の人数が多い大編成のオーケストラを大型スピーカーで聴く醍醐味を堪能することができた。

長いクレッシェンドの中盤に差し掛かっても金管楽器群が息切れせず、弦楽器とともに頂点を目指していく力強さは圧巻だ。なめらかさや柔らかさなどの美点はそのままに、強靭で骨太な音を生み出す力も新たに獲得している。

強靭で骨太、力強い音楽表現も実現する

大編成オーケストラに圧倒されたあと、パワーアンプをMQ-300に切り替えて聴いたハイメ・ラレードのヴァイオリンも忘れがたい音であった。部屋の空気が一変して親密な雰囲気が生まれ、ピアノの和音が聴き手の全身を柔らかく包み込む。そのなかに浮かび上がるヴァイオリンは楽器の大きさだけでなく形までもが目に浮かぶほど立体感があり、変奏でテンポが上がると今度は弓の動きが見えてくる。

M-900uとの違いは、ヴァイオリンがどの音域でも芯のある音で鳴ること。楽器が隅々まで鳴り切り、ニスの光沢にも通じる艷やかな響きが生まれることもこの組み合わせならではの美点だ。



ラックスマンは2020年に創立95周年を迎える。つまり、あと5年でちょうど100年。オーディオメーカーの中でも伝統の深みは抜きん出ているが、今回のCL-1000が技術と音の両面で新たな立ち位置に踏み込んだように、前に進む動きにも力強さがある。100周年記念モデルを予想するのはまだ少し早いが、CL-1000で到達した力強い音楽表現から、これからブランドが進んでいく方向を垣間見た気がする。

(山之内 正)

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