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精緻な加工技術で、高次元の美しさも実現

最上級の音とデザイン、LUXMAN B-sideのワイヤレススピーカー「ASC-S5」は“ハイファイ”の域

公開日 2019/12/04 06:00 土方久明
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続いて、Androidスマホを用いて、48kHz/24bit接続を可能にする高音質コーデック「aptX HD」でBluetooth接続。先ごろ衝撃のサブスク解禁が行われた嵐の新曲「Turning Up」でポップス音源との相性も確認した。ビートの効いた低域と躍動的で透明感の強いエレクトリックシンセサイザーの音で構成されたリズミカルな楽曲、そしてメンバーの声も明瞭に分離する。楽しい楽曲の魅力を引き立ててくれる秀逸な再生音である。

嵐の新曲「Turning Up」などポップスとの相性も抜群。明瞭かつ低域も効いていて、楽曲の魅力をさらに引き出す

ここまでの試聴を通じて感じたのは、本質的な音の良さだ。実は、本機のエンクロージャーは全面金属で覆われているので、音の飛び出しが悪かったり、曇った音がしてしまうのではないかと心配していたのだが、1つ1つの音の粒立ちも良好で予想以上の再生音だった。

今回、製品デザインを妥協せず追求した結果、音作りはかなり苦労したという。ピュアオーディオ製品の音決めを行っているエンジニアを中心として開発が進められたが、初期は高域のレベルが落ちるだけでなく、ホーン効果で特定の帯域が目立ってしまう事に悩んだそうだ。

そこで解決策として、特性をマイクで測りながら内蔵されたDSPのセッティングを変更し、イコライジングや帯域ごとの圧縮処理、またそれぞれの音の立ち上がりまで考慮するダイナミック特性までも調整したのだという。左右のサテライトスピーカーにはディレイをかけ、タイムアライメントまで調整することで、広がりのあるサウンドステージを構築している。

最後に、本スピーカーをもう1台追加してステレオ再生も試みた。同シリーズから発売予定のフォノイコライザー内蔵ネットワーク対応レコードプレーヤー「ASC-T5」も組み合わせて、無線かつステレオ環境でレコードを再生をしたのだが、これが新鮮な体験だった。再生準備はアプリから初期設定するだけ。つまりアンプも使わず、各機器に電源ケーブルを挿入するだけで音が出てしまうのだ。

2020年発売予定のフォノイコライザー内蔵ネットワーク対応レコードプレーヤー「ASC-T5」と接続、ステレオ再生も試してみた

実際に再生すると、本スピーカーの持つ本質的な能力がステレオ環境でより活きてきて、Jazz黄金期の名盤をさらにオーディオライクな再生音で聴くことができた。美しいデザインかつワイヤレス、そして最終的な音の良さを目の当たりにした筆者は、新しい風を感じた。



ASC-S5は組み付けの精度や美しさを高い次元で実現しており、筆者の知る限り、ワイヤレススピーカーの中でも最上級のデザイン性を持っていると言える。そして、多彩な入力端子も含めた幅広いソースへの対応力、さらにAmazon Alexaによる音声操作にも対応するなど最新のユーザビリティも兼ね備えている。

何より、老舗オーディオメーカーの製品らしい「音楽を良い音で聴く」という最も大切な要素が詰まっている。冒頭に「 “オーディオ製品” として本機を紹介したい」と書いたが、理由はそこにある。

ASC-S5をただのワイヤレススピーカーとして取り扱うのはもったいない。メーカーのモノづくりに対するこだわりを感じる出来映えで、音質を第一に考えたハイファイオーディオを手がけるラックスマンが、ここまで思い切った本気のプロダクトを作ったことに感銘を受けた。さらに今後は、ASC-S5とワイヤレスでグループ化できるワイヤレスサブウーファー「ASC-W5」の発売も予定されているとのこと。本シリーズのさらなる展開が楽しみで仕方ない。

ASC-S5の価格は決して安くないが、「良質な音でひたすら音楽を聴きたい」と思う本格志向の方にとっては最適解のワイヤレススピーカーといえる。また、便利かつ良い音で音楽を聴きたいと願うユーザーにとっても、ピュアオーディオの世界とAIスピーカーを利用した快適なライフスタイルをつないでくれる、大きな架け橋となるだろう。

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