リアルウッドシリーズ3機種を比較レビュー

「竹」のデノンヘッドホン最上位「AH-D9200」は下位機とどう違う? 木の種類で音はこんなに変わる

岩井 喬

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2019年02月07日

オープン型並みの開放感と素直な音色で、表現力を数段増した「AH-D9200」

そして新たなフラグシップであるAH-D9200は、AH-D7200でも十分広がりのあった空間性を数段上回る、オープン型にも匹敵するヌケ良く自然な音場表現力を獲得している。ゴージャスな分、余韻表現に多少キャラクターが残っていたAH-D7200の弱点を克服する、癖のない空間表現を実現しているようだ。

デノン「DA-310USB」を使用して本機の試聴を行った

音色としては安定的で落ち着きのあるものとなり、バランス感も益々向上。個々のパートを誇張なく際立たせてくれる、フォーカス力の高さと、低域方向の階調性、制動性が高まったことでの分離良く明瞭なリズム表現を身に着けた。

オーケストラは管弦楽器の際立ち感を粒立ち細やかにトレースし、ハーモニーも重心低く沈み込みよい響きとして描き出す。ローエンドはダンピング良く、旋律のアタック&リリースがより鮮明に捉えられるようになった。アコースティックギターやピアノ、ホーンセクションはハリ感がブライトに際立ち、アタックのキレ良く、余韻の澄み切った爽快な描写となる。

11.2MHz音源のボーカルもエッジを明確にまとめ、リバーブも滲みなく清々しい響きとして表現。ボトム感も素直であり、音像はくっきりヌケ良く爽やかに浮き上がる。口元のクールな艶は瑞々しく、息継ぎも自然だ。ロックのリズム隊は密度良くまとめ、スネアの響きもきつくならずスムーズに描く。音場もスムーズで広がり良く鮮やかなステージを引き出してくれた。

オープン型さながらの音場表現力と、明瞭なリズム表現を実現

最後に自宅リファレンス機材であるラックスマン「DA-06」と「P-700u」の組み合わせでもAH-D9200を試聴してみたが、全体的にしなやかさが増し、上品で流麗なサウンド傾向に変化。中低域の重心も一段と低くなり、リズム隊もどっしりと安定感ある響きとなった。余韻の広がりはふわっと浮き上がり、詰まることなく自然に拡散してゆく。ボーカルの肉付きもリアルで、口元の艶感も上質で潤いに溢れている。

バランス駆動も試してみたが、より音像のフォーカスが向上し、音離れ良く高S/Nな音場が展開。リズムのキレ良く立体的な空間が広がっている。オーケストラの響きも豊潤で旋律のスピード感、レスポンスも上がっているように感じられた。



AH-D5200やAH-D7200はハウジング素材の違いを含め、明確にキャラクターの異なるサウンド性を持ち味としており、単純なグレードの上下関係ではない、音楽をより豊かに楽しめる色合いの差として提示してくれるような部分も見受けられた。

しかしAH-D9200はこれまでの木材削り出しハウジングとは一味違う竹の積層材による適切な振動コントロールにより、響きの質の素直さ、音源へのストレートな反応と密閉型特有のこもり感がない、フラグシップの名に恥じないクオリティを実現している。国内製造という従来モデルでは成しえなかったつくりの良さも手伝い、精緻なサウンドを心ゆくまで楽しめることも本機の醍醐味だ。

他社がハイエンドモデルにはオープン型を投入する流れにある中、得意分野を心得て、その延長線上で最良の音作りを模索してきたデノンのヘッドホンづくりの歴史。このAH-D9200はオープン型に負けない広大な音場感を持つ格別なハイエンド密閉型モデルとしてその名を刻むことであろう。


■試聴音源
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』~第一楽章(96kHz/24bit)
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』~メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』~レディ・マドンナ(筆者自身による2.8MHz・DSD録音)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』~届かない恋(2.8MHz・DSD)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源


(岩井喬)

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