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【特別企画】ハイレゾも圧縮音源も高品質に楽しむ

DSD“リマスタリング”の効果は絶大! KORGのNutube搭載DAC「Nu 1」はマニア心くすぐるオーディオ機器だ

2018/12/19 土方久明
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なおNu 1のこだわりの点として、入力、出力ともバランス端子を搭載し、さらに入力された信号はフルディファレンシャルで伝送されることがあげられる。また、バランス・アンバランスとも、プリアンプのボリューム調整が有効となる出力と、ボリュームを経由せずDACから直接出力ができる2系統の出力、つまり合計4つの出力を備えている。ただしNutubeを通した音は、バランス・アンバランスともボリューム経由の出力に限定される。

都度書いているのだが、まったく新しい構成のオーディオコンポーネントに対峙すると、筆者も含めてオーディオファイルは、まずは女性ボーカルを聴きたくなることが多いと思う。ということで今回も、プリンスが生前最後に認めた女性ボーカリスト、キャンディス・スプリングス『インディゴ』(44.1kHz/24bit)を再生した。

「AudioGate」を利用してハイレゾ音源を再生

音が出てすぐに分かったのは、素の状態でのNu 1の音はソース音源に対して正しい解釈でサウンドを鳴らすということだ。ボーカルは立体的かつ口元の動きがわかるようにリアル、バックミュージックを含めた音楽全体の情報量が高く、聴感上のSN比も秀逸。Nu 1からは原音を忠実に再現しようとするはっきりした意図を感じる。

次にレニー・クラヴィッツ『ライズ・ヴァイブレイション』からトラック2の「Low」を聴くと、同じようにフラットなトーンバランスで、キックドラムにスピードがある。聴感上の解像度が高く見通しもよい。そして口元の表情がわかるリアルなボーカルはキャンディス・スプリングスでも感じた本機のアドバンテージだ。さらに、ピアノやベースなどのバックミュージックがリアルかつ的確にサウンドステージを形成する。D/Aコンバーターとしての性能はかなり高いと言える。

次に、フロントパネルに備わる「Nutubeボタン」を押してNutubeを有効化して、Nutubeの持つ「HDFC」(倍音検出帰還回路=ハーモニック・ディテクティブ・フィードバック・サーキット)の効果を確認した。Nu 1は、Nutubeの効果を3段階で選択できるので、まずは中間の「II」にしてみた。

フロントのノブからNutubeの “効き具合” を調整できる

どれだけ変わるのか? これは遊び機能なのか? と試聴前は興味津々だったが、Nutubeを通した音ははっきりいって絶品だ! 先ほどは少々ドライ気味に聴こえていた(それはそれで正しい解釈なのだが)キャンディス・スプリングスの声に深みが付加されて、血色が良くなる。情報量の欠落はほぼ感じず、全帯域の弾力感が出て楽しい音がする。これはまさに、真空管サウンドに興味を持つオーディオファイルが期待する “真空管らしい音楽性に溢れた音” そのものだ!

レニー・クラヴィッツでも倍音成分が増すのか、中高域の音色が艶やかになり、音に響きが乗ってくる。低域のキックドラムは、シャープなだけでなく弾力感も付加された。

Nutubeの音は、皆が真空管アンプに期待している温かみのある音を、上下のfレンジを犠牲にせず、高音質を維持しながら出してくるサウンドといった感じだ。Modeを「I」にすると、その効果が若干弱まり、mode「III」にすれば強くなる。その変化量は大きいため、自分の好みに合わせて楽しむことができる。

ストリーミング再生も “DSDリマスタリング” して楽しめる

次にオーディオゲートから「Nu 1 Control Panel」を呼び出し、オノ セイゲン氏がプロデュースした「S.O.N.I.C.リマスタリング・テクノロジー」機能を試す。先述したとおり本機能は、入力されたPCM信号をリアルタイムでDSDに “リマスタリング” しつつ、かつ様々なパラメーターを適用し音色、音調を可変できる。

「Nu I Control Panel」から「S.O.N.I.C.リマスタリング・テクノロジー」機能の設定が可能(画面はMac版のもの)

試聴音源はレニー・クラヴィッツだ。Nu 1 Control Panelから設定ウインドを開くと、100種類以上ものプリセットが表示される。また、プリセット番号が100番台のものは、ソース音源に対して加えられる変化量が少なめ、200番台は大きく変化させ、300番台は特定の楽曲に合わせたプリセットとなるそうだ。それぞれに個性的な名前が付いており、「J-Pop」、「FUSION」などのスタンダードなものから、「Natulas Woman2015」「Hotel CA」などという興味深いプリセットもある。

様々なネーミングが施された多数のプリセットが用意されている

まずは「Silky」という滑らかそうな名前のプリセットを試すと、本当に1つ1つの音がスムーズに繋がる滑らかな音に変わった。これは面白い。次に70年代の音をエミュレートしたと思われる「70S」にすると、ボーカルの存在感が大きく増す。

普通なら機器を変えたり、ケーブルを変えたりして得られるような音調の変化を、本機は音の良いDSDドメインで楽しむことができる。こんなオリジナリティ溢れる機能は見たことがない。おそらくプリセットの不思議な名前は、音のイメージが湧きやすいように命名したのではないかと思った。

そして、DSDに変換してフィルタリングをかけるということは、ハイレゾ以外の音源、例えばYouTubeやSpotify、Apple Musicなどの圧縮音声のストリーミングサービスの音にも効果があるということだ。

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