PIEGA Factory Tour

ピエガ本社工場訪問記 −スイスを代表するスピーカーブランドのいま

オーディオ編集部

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2018年12月17日

ピエガのアイデンティティ、リボンユニットの秘密

さて、そんなピエガのなかでも、他のブランドにはないアイデンティティとなるのがリボンユニットだ。冒頭でご紹介したとおり、ピエガのブランド名が示すとおり、ピエガの歴史はリボンユニットの歴史とも言いかえることができる。Master Line Sourceシリーズにしても、やはりこのリボンユニットの高い性能と再現力があってこそ実現できたスピーカーなのだ。

そんなピエガの心臓部も、このホルゲンの本社工場で生産されている。この日、リボンユニットを生産する部屋へと足を踏み入れると、底にはリボンユニットを構成するさまざまなパーツが並んでいた。

リボンユニットをアッセンブルする部屋

この日のテーブルの上にはさまざまなサンプルが並ぶ。そのひとつひとつをバラビオ氏がていねいに說明してくれた

「実は私達は、リボンユニットを製造する際に手袋をしません」。

バラビオ氏は、リボンユニットについて説明を開始するや否や、こう切り出した。

「なぜかというと、ピエガのリボンユニットの製造には、非常に繊細な指先の感覚が求められるからです。手袋をしてしまうと指先から得られる感覚が鈍ってしまうので、私達は手袋をせずにクオリティに気を配りながら作業を進めていく工程を採っています」。

コイルがプリントされた振動膜

特殊なジグを使用して、振動膜はベースとなるフレーム枠に接着される

そう話しながらバラビオ氏は、薄い振動膜を手にする。振動膜そのものの重さはわずか0.005g。空気よりも軽いこの膜にプリントされたコイルの長さは、なんと長いもので3.8mにも及ぶそうだ。

振動膜からは細かくコイルが出ているが、これをていねいにハンダ付けする

「私たちがリボンユニットのノウハウとして誇れることは、COAXシリーズで採用したC211やC111のようにミッドレンジまでカバーできる非常に大きなリボンユニットを構築できることです。ちなみに、このリボンユニットはひとつあたり4時間、組み上げにかかります。つまり、COAXシリーズの場合は、ひとりのスタッフあたりで一日の勤務時間で2ペアしかできません。これがMaster Line Sourceになればペアで8つ必要になるので、32時間。これを熟練したスタッフで並行して製造しています」。

なぜ、ここまでの時間がかかるのか。そんなことを疑問に思っていると、バラビオ氏が「ちょっとこれを引き離してみてくださいよ」と一対のマグネットを渡してくれた。これが本当に離れない。その様子を見ながらバラビオ氏が説明を続ける。

リボンユニットに使用されるマグネットは非常に強力

磁力計でそのマグネットの磁界の強さを解説

「このマグネットはリボンユニットのフレームの裏に取り付けられるものですが、世界に数あるマグネットのなかでも一番強い磁力を持つものです。この磁石をフロントとリアで反発させながら固定するので、普通の人ではおそらく作業すら困難でしょうね。ちなみにいまから18年前、弊社のKurt Sheuchがこのマグネットに目をつけてオーダーした当時は、針先くらいの小さいサイズで使用するのが一般的だったそうで、受注を受けた企業から“本当にそのサイズで合っているのか?”と言われたそうです(笑)。こうした素材への探求は、いまなおピエガに受け継がれる伝統みたいなものですね」

振動膜へプリントされたパターンもよく見ると非常に複雑だ。また、表面には凹凸がつけられているが、これももちろん歪みを下げたり理想的な音響特性を獲得するために採用されたものとなる。このリボンユニットをマウントするアルミのフレームにも、工夫が盛り込まれている。

振動膜の表面は複雑な凹凸がつけられている

「リボンユニットをマウントするアルミフレームですが、そのスリットには、ゴム系の素材を挟んでいます。これはフレームとしての強度を抑えながら、エンクロージャー同様に“動くべきところだけを動かす”ためのアプローチです」

スリットの間に挟み込まれるようにして使用されるゴム系の素材

このゴム系の素材を挟むことで鳴きは完璧に抑えられる

こうして仕上がったリボンユニットは、おそらく世界のどのユニットよりも平面なものである。つまりリボンという極めて軽い素材を同軸構造で、なおかつ同じ位置から音を再生できる世界的にも例のないユニットということができるだろう。

リボンユニットの完成形

定規を当てると、完璧にフラットと言っても過言ではないほどの仕上がりであることが分かる

どこで聴いても「音楽が鳴る」サウンド

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