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PIEGA Factory Tour

ピエガ本社工場訪問記 −スイスを代表するスピーカーブランドのいま

2018/12/17 オーディオ編集部
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■チューリヒ湖を臨む美しいロケーション

チューリヒ駅からマニュエル氏が運転する車でおよそ30分ほど。途中、チョコレートで有名なリンツの本社があることなどちょっとした街の説明もしてもらいながら、ホルゲンという街にあるピエガの本社件工場に到着した。オフィスの横をすぐ線路が通り、奥にはチューリヒ湖が広がるという美しいロケーション。思わずため息をついてしまうほどのこの恵まれた環境で、ピエガのスピーカーは生み出されている。

スイス・ホルゲンにあるピエガの社屋

本社1階の入り口を入ってすぐに、応接室を兼ねたリスニングルームへ案内された。そこにはもうひとりのグライナー氏がいた。マニュエル氏の弟、アレキサンダー・グライナー氏(Alexander Gleiner)氏である。

二人の父は、ピエガの創設者のひとり、レオ・グライナー氏。現在は父が築き挙げたピエガの歴史をマニュエル氏とアレキサンダー氏が引き継ぎ、これからのピエガの舵取りをしているのである。二人の年齢はまだ30代。こうした若い感性は、決して古くならず、ピエガが常に新しいエッセンスを取り入れたスピーカーを世に送り出すことができる理由にもなっている。

「ここはピエガの全てのプロダクトのサウンドをチェックする場所でもあるんです」とマニュエル氏。つまり、ここでOKが出された製品がやがて世界中の音楽ファンを楽しませるプロダクトとして世に送り出されることになる。「ピエガにとっては、皆様がくつろぐリビングなどの空間で音楽をどれだけ良い音で楽しむことができるのかということが大切なんです」と話すふたりだが、30畳はあろうかというこの部屋も、そんなピエガの理想を追求している場所となる。

本社兼工場に到着するとまず通されたリスニングルーム兼応接室

ここでもうひとり、現在のピエガにとって大切な人物が紹介された。マリオ・バラビオ(Mario Barabio)氏。彼が現在にピエガにおけるリボンユニットの設計および開発の責任者である。その健康的で引き締まった身体は、オーディオ機器を開発しているエンジニアには到底見えない。「彼は、プロのウインドサーファーとして活動しているんですよ」と、マニュエル氏は少々おどけながらバラビオ氏を紹介する。風と水面という自然の力のみを味方につけ滑走するウインドサーフィンと、空気を動かして音楽を鳴らす音という世界。「自然を味方につける」という意味で、バラビオ氏がウインドサーフィンから得る感覚は、開発にインスピレーションを与えているのだろうと勝手ながら推測した。

ピエガのキーテクノロジーであるリボンユニットの開発/設計における責任者であるマリオ・バラビオ氏

ちなみにバラビオ氏の父は、ピエガ創設時に最初の従業員として入社し、リボンユニットを担当した人物だったそうだ。このことはバラビオ氏にとって非常に大きなモチベーションのひとつになっているそうで、伝統を守りながら、いまだからこそできるスピーカーを生み出して行きたいとその意気込みを見せている。

興味深いのは、マニュエル氏もアレキサンダー氏も、そしてバラビオ氏も生まれた時から何らかの形でピエガに関わっていることだ。ここまでしっかりとした世代交代ができているブランドはそう多いものではない。このことを知ることができただけでも、今回の本社訪問の大きな収穫だったということができる。

ひととおりの挨拶を終え、いよいよ、ピエガのスピーカーが生み出される工場の紹介が始まった。

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