PIEGA Factory Tour

ピエガ本社工場訪問記 −スイスを代表するスピーカーブランドのいま

オーディオ編集部

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2018年12月17日

20年に渡りピエガに関わるスタッフ達と素材の追求

リスニングルームを出てすぐに紹介されたのは、Premiumシリーズに使用されるリボントゥイーターの組み立て工程だ。

Premiumシリーズに採用されるリボントゥイーターのアッセンブルの様子

リボントゥイーターのフロントパネル。アルミによる重厚なパーツだ

専用のジグへフロントパネルを取り付け、フレーム、マグネットを取り付けていく。アッセンブルされたリボントゥイーターは9V乾電池の電極で通電を確認していくが、この一連の作業の速度が実に速い。「彼はもう20年もピエガで働いてくれています。彼のような熟練したスタッフこそが、ピエガのスピーカーのクオリティを支えているんです」とバラビオ氏。

アッセンブル工程のリボントゥイーターは必ず通電のチェックがなされている

完成したリボントゥイーター

一点一点、しっかりとクオリティを目で確認しながら進められていくその様子は、ピエガのブランド名の「折る」という言葉を彷彿とさせるものだった。

完成したトゥイーター。この写真を見て分かるとおり、ピエガのスタッフは誰しもが明るい

続いて本社工場の2階へ。階段を上がってまずバラビオ氏が紹介してくれたのが、試作を行うためのスペースだった。



本社兼工場の2階の様子

日々この場所から新しいアイデアが生み出されている
「ピエガのスピーカーが生まれる時、まずここで木材を切って試作を行うんです。極めてオールドスクールで大変なやり方ですが、思い浮かんだアイデアはここですぐに形にするためには一番最適な方法なんです」とバラビオ氏。ピエガのスピーカーの原画がここで具現化され、やがてプロダクトとして世界中に出荷されるのである。ちなみに、シッピング用の木箱もここで作られるそうだ。


試作を行う場所のすぐ近くで、ピエガのPremiumシリーズやCOAXシリーズ、Master Line Sourceシリーズがアッセンブルされている
そしてこの試作を行う部屋から、すぐのところでピエガのスピーカーのアッセンブルが行われている。実はピエガはこのホルゲン以外にももうひとつ、ヴェーデンスヴィルという場所での工場を持っているそうだが、そちらは主にエントリーラインのスピーカーのアッセンブルを行っているそうだ。今回、我々が訪れたホルゲンでは、PremiumやCoaxといった、ピエガの上位ラインが製造されているという。


アルミキャビネットについて說明するバラビオ氏
ここでピエガがアルミニウムキャビネットを採用する理由が説明された。このアルミニウムのキャビネットは欧州でも最王手企業のアルミプレス機を使って押出成形されているもの。

「今私が持っているサンプルですが、このキャビネット自体は5mmの厚みです。実はこの厚みが重要で、通常の木材を使用するよりも圧倒的な薄さにもかかわらず、はるかに剛性の高いキャビネットが作れるんです。キャビネットを薄くできるということは、スリムな筐体でも内部の容積が十分に確保できるといううことです。いたずらに大きくするのではなく、リビングにおいて日々音楽を楽しむためにスピーカーがあると考えれば、このアルミキャビネットがどれだけ意味のあるものかがお分かりいただけると思います」。

このアルミキャビネットにも、厚さや剛性以外にさまざまな進化が見て取れる。内部の定在波を抑えるC型のキャビネットの成形もさることながら、ここ最近では内部のダンピング材に新たな変更が加えられたそうだ。


以前のキャビネット。内部にはIdekellというダンピング材が3枚はられている

アッセンブル中の様子。この内側にはられたのがDynaformという素材。1枚で理想的なダウンピング特性が得られ、内部容積をさらに確保することが可能となった
以前のキャビネットに採用していたダンピング材としてバラビオ氏が見せてくれたのが、Idekell(イデケル)という素材。そして現在のダンピング材として紹介してくれたのが、Dynaform(ダイナフォーム)という、より柔軟性に優れた素材だった。これらは一見ラバーに見えるが、原料としてはタールで、車のドアのダンピングに使われるものだそうだ。

「Idekellを採用していた時は、この素材を3枚重ねないと理想的なダンピング性能が得られなかったんです。でもDynaformを使うことでそれが1枚で済むようになりました」と、実際に2つのキャビネットを叩いて比べてみてくれた。確かにそのDynaform1枚という薄いダンピング材を貼り付けた素材のほうが鳴きが少なく「コッ」という小気味よい音がする。


天板の内側にはMDFの板で補強される
「つまり、新しいピエガのスピーカーはダンピング材の面積も少ないので、より効率的に内部容積が稼げるようになったんです」。


内部に使用されているアルミ製の補強板
こうした、よりよい素材への探究心も、現在のピエガの大きな武器になっているのだ。ちなみにこの日アッセンブルされていたのは、COAXシリーズの最高峰、COAX711。こちらのキャビネットは6mmだそうで、その内側に接着剤で前述のDynaformを貼り着けている。

内部に均一にダンピング材をていねいに張り巡らせたうえで、さらにアルミの補強板をつっかえ棒のようにしてネジ止めしている。「こうすることで、本来動くべきところのみが動いて、動かないところは動かないというキャビネットが作れるんです」とバラビオ氏は説明する。

補強材は、内部につっかえ棒のような容量でしっかりと固定される

なお、このキャビネットにマウントするユニットは、SEASとの共同開発で生み出されているものだ。「SEASは世界最高峰の技術を持つユニットメーカーですので、私達はウーファーやミッドレンジなどのドライバーは共同開発という形で使わせてもらっています。こうした優れたパートナーと製品が開発できることも重要です」。

ピエガのスピーカーのコアパーツ達

SEASと共同開発されたドライバー。サスペンションなどに新たな改良が施された

では具体的に、どのような面で共同開発の成果が出ているのだろうか。バラビオ氏によればそれは「ピエガが持つリボンユニットとアルミエンクロージャーと組み合わせた時に最も理想的なユニット」とのことで、具体的には、COAXシリーズで開発されたUHQDドライバーなどはその新しいアイデアを盛り込んだものだそうだ。

「UHQDドライバーの最も大きなポイントは、ボイスコイルにチタンを採用したことと、振動板を支えるサスペンションをより最適化した構造を採用していることです。これによってシステム全体がより高い能率を実現することができました。このユニットについてもSEASと私達は日々次なる進化を目指しています。将来的には、全てをチタンで……なんていうこともありえるかもしれません」。

ピエガでは異色? Master Line Sourceとは?

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