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【特別企画】USB入力搭載のPCスピーカー最高峰

最小スペースで最高水準のサウンド。クリプトンのアクティブスピーカー「KS-55」でニアフィールド再生を堪能

公開日 2018/12/13 06:15 岩井 喬
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さらにクリプトンならではと言えるのが、振動を効果的に吸収する「〈ネオフェード〉カーボンマトリックス3層材」によるインシュレーターを3個用いたスピーカーベースの付属だ。このベースが設置面からの影響やスピーカーそのものの振動伝達を抑え、クリアで解像度の高いサウンドクオリティをより高めてくれる。またフォールデッドダクトによるチューンドバスレフ方式によって小さな筐体を感じさせない豊かな低域再生を実現した。

スピーカーベースが付属する

このようにKS-55は、これまでのKSシリーズの集大成ともいえるものだ。一方で、培ってきたノウハウを基に2ウェイ・一体型構造を継承しつつも、より取り回しの良さを目指して小型化にこぎつけた。クリプトンならではのスピーカー作りやデジタル技術を盛り込んだコンパクトモデルとして、有線接続でのサウンドは従来からの方向性を堅持しているのである。

やはりBluetooth対応に話題が集まっているが、上位モデルの技術を継承して音質を強化しつつ小型化を実現して従来のコンセプトに基づいた完成度を高めた上で、さらなる機能拡張を行っている点にこそ注目したい。


「最小スペースで最高水準のサウンド」を実現できるスピーカー

こうしてクリプトンの技術力を結集しつつコンパクト化まで実現したKS-55が目指したのは何か。それはデスクトップ用途を想定してこれまで以上に設置性を追求し、最小スペースで楽しめるスピーカーとして最高水準のサウンドを実現させることだ。

アルミ製エンクロージャーを採用する

昨今においても、パーソナルな環境で音楽を聴く場合に、ノートPCの内蔵スピーカーで聴くというケースは少なくないだろう。むしろヘッドホン環境が整ってきたため、スピーカーから音を出さないことが増えたというケースさえ耳にする。そうしたライフスタイルが広がりつつある中、改めてスピーカーから放たれる音の良さ、ヘッドホンなど身に着けることなく、解放された状態でストレスなく音楽を楽しめる環境の再認識というテーマも掲げて、KS-55は開発されたのだ。

ゆえにまずはスピーカーとしての基本性能、音の良さの追求があり、2番目に現在のライフスタイルに欠かせなくなってきたワイヤレス環境への対応としてのBluetooth機能の実装を検討したということである。だからこそ、Bluetoothのサウンド品質の良さも追求する中で、現段階で最良といえるaptX HDという解答を見出したわけであり、決して “ワイヤレス最優先” という設計ではないことにも注目すべきだ。


小音量であってもスピーカー再生ならではのサウンドを存分に楽しめる

左右合計50Wという、筐体サイズから考えれば非常に大出力を誇るKS-55であるが、使用シーンとしてはいわゆる「近接環境=ニアフィールドリスニング」が最適な設計となっている。

ニアフィールドリスニングの良いところは、スピーカーとリスナーとの距離が近いため、さほど音量を上げなくてもバランス良く立体的な音場感を得られる点だ。デスクトップ用として競合製品は複数あれど、木材や樹脂製エンクロージャーのアクティブスピーカーでは振動抑制の点で不十分なことも多く、材質由来の色づき、不要振動を抑え込めないことで発生するノイズなどが要因となり、S/Nの点でも不利となる。

試聴もニアフィールドにて行った。後述するように、実際の試聴環境を想定して、本試聴でのスピーカーまでの距離は86センチとした

とはいえアルミなどの金属筐体をただ使えばよいというわけではなく、不要共振を抑えること、設置面からの影響の少ない設計とするなど、スピーカーを取り巻く環境全てに配慮しなければならない。その点でKS-55はスピーカーベースを標準で用意するなど、金属筐体+αの対策が講じられている。

またKS-55のアルミ製エンクロージャーのメリットとして、共振を抑えつつ剛性の高さを実現した構造であり、同じサイズの木材系エンクロージャーに比べ強度が高いため、構造材の厚みを薄くでき、その分内容積が増え低音域の量感アップを実現できているのだ。

中でもKS-55の小音量時の音場再現性、音像のクリアで引き締まった定位感の表現は白眉である。樹脂系や木材系エンクロージャーではあいまいで混濁しがちな微少音の再現性、余韻の階調性も正確かつ明瞭に引き出す。わずかな振動板の動きであってもロスなく的確に聴き取れること、それがS/Nの良さにも結び付いている。

本機のリモコン

優れたデジタル部や増幅段の設計の良さはもちろんだが、実直なクリプトンのスピーカー設計からくるメリットが小音量時に発揮されるのだ。全く音が出せないという環境では難しいかもしれないが、小音量であってもスピーカー再生ならではのサウンドを存分に楽しめる意義は大きい。

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