ネットワーク再生に特化して音質を高めた野心作

“音質追求型”のエントリー・ネットワークプレーヤー。マランツ「NA6006」をレビュー

土方久明

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2018年10月04日


その中でも、一番のポイントはND8006と同じESS製DAC(ES9016K2M)を採用したことだろう。先述したとおり、CD再生機能を外したとしてもコスト的にはかなり厳しかったことは想像できるが、さらに、アナログオーディオ部は前モデルNA6005では片面基板を搭載していたのに対し、NA6006では上位モデルと同じ両面基板を搭載するなど妥協のない設計だ。

ND8006と同じESS製DAC(ES9016K2M)を採用

天板を外して内部を開けた下記の写真を見て頂きたい。スタンバイ用電源部とアナログ/デジタル回路用電源部、デジタルオーディオ回路、アナログオーディオ回路がフルサイズの余裕あるシャーシ内に独立して搭載されている。これが最もエントリークラスの製品とはにわかに信じがたい。コスト的な部品調達に長けた総合オーディオ/AV機器メーカーのアドバンテージも垣間見える。

筐体の内部

ネットワークインターフェイスは、有線LANと無線LAN(Wi-Fi)に対応しているが、ここで注目したいのは無線LANの仕様。従来モデルが2.4GHz帯のみの対応だったのに対し、NA6006は、2.4GHz/5GHzに対応した上、複数のアンテナを使って通信を高速化する無線通信技術MIMO(マイモ)にも対応している。

これにより、マイモに対応するルーターと本機を組み合わせれば、Wi-Fi接続の速度と安定性が向上し、より安定した再生が可能になる(個々の通信環境に左右されるが)。オーディオルームにLANケーブルを敷設しにくい環境にお住いの方や、より手軽にネットワーク再生を楽しみたい方にとっては注目の部分だろう。ただし、筆者宅のルーターはマイモに対応していないので、今回はスタンダードな有線LAN接続で試聴した。

■この価格帯の製品では中々聴けない本質的な音の良さ

まずは、ネットワーク再生を行う。NASにI-O DATAのfidata「HFAS1-H40」を用いて、女性ジャズボーカルのノラ・ジョーンズ 『It Was You』(96kHz/24bit FLAC)を聞いた。音が出た瞬間に「これは良いぞ」と思わず声が出る。本機は力強い低域とスピード感がある高域をサウンドキャラクターとして持っており、ベースやピアノなどの表現に活動感があるのだ。さらに、イントロのボーカルは生々しく、スピーカー中央にリアルな音像となって現れる。

次にUSBメモリ(SanDisk製64GB)をフロント前面に挿入して、メモリー内に保存された、マルタ・アルゲリッチ、小澤征爾 の『ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第1番&交響曲 第1番』を聴く。楽器の数が多く解像度が要求される上に、ソリストのアコースティック楽器の質感表現を求められるのが協奏曲だが、上下の帯域レンジ、SN比、ダイナミックレンジなど、この価格帯の製品では中々聞けない本質的な音の良さが聞き取れる。もちろん価格の大幅に違うレンジの製品にあるような1音1音の音を埋め尽くす滑らかな表現は不足するが、価格を考えると十分すぎる音質だ。

また、ESS製DACチップを採用したことで、チップの機能を利用したデジタルフィルターやロックレンジアジャスト機能を利用できるようになった。前者は、シャープな音や滑らかな音に音調を可変できる機能で、後者はクロックのロックレンジをアジャストしてより高音質を狙うことができる。

今回はロックレンジをアジャストしつつ効果を確認した。反田恭平 『月の光〜リサイタル・ピース第1集』(96kHz/24bit FLAC)はピアノソロの音源で、効果が確認しやすいのでよく使用している。ロックレンジをナロー設定側にしていくと、聴感上のSN比が上がり、空間の奥行きや余韻の表現が明瞭になる。ただし、ただ単純にナロー側にしていくだけだと音が途切れることがあり、ソースによりベストな設定を探る楽しみもある。本機は光入力、インターネットラジオ、NAS(USB-A、Bluetoothと共通設定)の3つそれぞれを個別に設定できるなど至れり尽くせりだ。

大バーゲンプライスのネットワークプレーヤー

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