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世界で評価されるターンテーブルブランド、そのこだわりに迫る

独Transrotor本社訪問レポート ― 自社設計、自社生産へのこだわりで生み出される「ハイエンド」

2018/08/24 レポート:三浦 裕(エイ・アンド・エム) 構成:季刊・アナログ編集部
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■コストダウンするよりも「良いもの」を。

今回、ひととおりTransrotorのオフィス兼工場を歩いていて思ったのは、その真面目な製品づくりだ。Jochen氏はなによりも、「メカニカルであると同時に、それは美しくあるべき」としきりに話すが、このことを具現化するような光景がオフィスには広がっていた。

また、Transrotorの特徴として見逃せないのが、その相当に広いラインアップだ。日本に入っていないモデルも含めれば、日本円にして下は数10万円から、上は3000万円を超えるようなラインアップが並ぶ。

試聴室でその姿を見ることができた弩級ターンテーブルArgos。マスダンパーの考え方を盛り込むなどさまざまなアイデアを盛り込んだターンテーブルとなる

Jochen氏の言葉を借りるのであれば、「最初に頑張ってトランスローターを買ってくれた人が、いつかまたトランスローターのターンテーブルでグレードアップしてくれる」という想いを込めたものだ。「自分達の商品としてふさわしい、エントリーモデルを作っています」(Jochen氏)と話すとおり、全ての品質を管理できる自社内での生産にあくまでもこだわりながら、持つ喜びを感じさせてくれるようなターンテーブルをラインアップしていることは、実にトランスローターらしい特徴ともいえるだろう。

時期フラッグシップ、Metropoliceも当然自社内で研磨やアッセンブルが行われている

「できる限り無駄を省いて、より洗練された良いものを作りたいと思っています。それと、例えばお金持ちの方が買ってくださったとしても、それが”飾り”になってしまうのは嫌なんです。買ってくれる人にとっての“ハイエンド”であって、それで音楽を聴いて日々の満足感を得ていただくことが私の願いでもあります」(Jochen氏)

Jochen氏をはじめとしたTransrotorが、徹底的にこだわり抜いて世に送り出した美しきメカニカル・ターンテーブルが奏でるそのサウンドを、ぜひ一度体験して見て欲しい。ここまでこだわり抜かれて生み出されたターンテーブルがその存在を潜め、音楽だけが再生されるさま。この世界観こそがまさにTransrotorがケルンで追求し続けているものなのである




今回、Transrotorのディストリビューターであるエイ・アンド・エム(株)の三浦 裕氏のレポートを編集するにあたって、そもそも同社が、Transrotorを扱うきっかけとなったエピソードをお聞きしたが、それが極めて印象的だった。AIR TIGHT(エアータイト)を牽引する社長の三浦篤氏は、TransrotorのJochen氏と知り合った当時をこのように振り返る。

エイ・アンド・エム(株)の三浦篤氏

「90年代にアメリカのディストリビューターの紹介で、フランクフルトのオーディオショウでTransrotor、そしてJochenと知り合ったんです。当時の背景からすると、これからはデジタル、重量級ターンテーブルなんて流行らないよ、という時代だった、でも、あくまでターンテーブルにこだわって作り続けているTransrotorと、アナログと真空管にこだわっていたAIR TIGHT。面白いのが、Transrotorが自社製品を出し始めた1986年というのは、AIR TIGHT創業の年でもあるんですよね。そういうことで、お互いに共感し合ったみたいなところがあって、初めて知り合ったほとんどその時にTransrotorの輸入代理店になることが決まっていました。それだけ波長があっていたんでしょうね」

よく、優れたメーカーの条件として優れた輸入代理店がつくことも重要と言われるが、Transrotorの場合もエイ・アンド・エムとの関係は、同じオーディオマインドを持つという意味でもプラス方向へ作用しているはずだ。

ブランドの立ち位置を高い水準でキープすることは決して簡単なことではない。今回の訪問記事を読んで分かったことは、Transrotorは創業者であるJochen氏とその息子のDirk氏、そして従業員と関係の深いメーカー、輸入代理店。さまざまな要素が密接に絡み合いながら、Transrotorの価値が高められているということだ。だからこそ、Transrotorは世界有数のターンテーブルブランドとして、その評価を確立することができたのである。(季刊・アナログ編集部)

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