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【特別企画】Dreamからドライバーを進化させた最新モデル

DITA「Fealty/Fidelity」を聴く − 音楽性/忠実性をそれぞれ追求した“双子”のイヤホン

公開日 2018/07/18 10:11 佐々木喜洋
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軽量なので長時間の装着でも快適に音楽が聴ける

Twinsの名の通り、FealtyとFidelityでイヤホン自体の形状は同じだが、Fealtyはシルバー(Iridium Silver)でFidelityはグレイ(Barium Grey)だ。ケーブルは確かにこれまでのモデルより柔らかくなり、取り回しについても気になることはないだろう。イヤホン本体はやや大柄だが、とても軽く作られているために装着の負担は少ない。

ケーブルは耳かけ装着が推奨されているが、耳への収まりもよく、装着感はとても良好だ。イヤホン本体が軽いので長時間の装着でも苦にならないだろう。

Dreamからの進化も実感できる豊かな中域再現と唯一無二の低域再現

試聴ではまずAstell&Kernの「AK380」を使って、Fidelityから聴いた。Dream譲りのシャープかつ切れ味の良さが印象的で、高域は瑞々しく、すっきりと上に伸びていくようで心地良い。中域はDreamのやや乾いた感じとは異なって、音に厚みがあってリッチなニュアンスが感じられる。この点についてはダニー氏も話していたとおりで、Dreamからの改良が感じ取れる。

Fidelity

低域はDITAユーザーが期待する通りに、たっぷりとした深みが堪能できる。低域の量感もあるが、張り出しすぎないところが絶妙なチューニングだ。総じて、音源に対して忠実な再現を行うのがFidelityと言える。

また、プレーヤーをAstell&Kern「A&Ultima SP1000 SS」に変えると、細部までを描き出す解像感の高さに圧倒される。SP1000のサウンドに追従できるポテンシャルの高さを、改めて感じさせられる。

巧みな演出が音楽を楽しませてくれる「Fealty」。忠実性を追求する「Fidelity」

続いてFealtyを聴く。双子を標榜するだけあって全体的な音調はFidelityと同傾向で、こちらも高域の伸びとリッチな中域、そしてDITAならではの豊かな低域を備えている。全帯域にわたる解像力の高さもやはり同様だ。

しかしFealtyの方が、良い意味でより演出感のある表現であり、Fidelityと比べて音にメリハリがある。音の輪郭がやや強調される印象と言ってもよい。この演出感が、音楽を音源そのもの以上に楽しく聴かせてくれる。ただしそこに過剰な強調感はなく、ハイエンドモデルらしい上質かつ上品な音にまとめ上げているのはDITAらしいところだ。

Fealty

実際に、2つのイヤホンで様々なジャンルの音楽を聴いてみた。ロックやポップスのように躍動的な音楽をFealtyで聴くと、ドラムやベースの音によりパンチや迫力があり、うなりを上げるギターやシャウトするヴォーカルが耳元近くに飛び込んでくるような臨場感が味わえる。音調は多少賑やかに聴こえるが、それがこうした音楽では明るく華やかな印象となる。同様の音楽をFidelityで聴くと、Fealtyで聴いた印象と比べれば全体にやや落ち着いた音調で、抑制された雰囲気になる。

一方でクラシックなら、Fidelityが向いていると感じた。音が適度に整理され、各パートの楽器の音色がナチュラルに再現される。その落ち着いた音調は、演奏の雰囲気もよく引き出してくれる。また、弱音部と強奏部でダイナミックレンジが大きいオーケストラ曲では、Fidelityのほうが余裕(ヘッドルーム)をもって音楽を再現してくれる。こうした曲はFealtyだとやや賑やかに聴こえてしまう。

もちろんこれは筆者の感想である。クラシックをより躍動的に聴きたい人もいれば、ロックのソロギターをしっとり聴き入りたいんだ、という人もいるだろう。こうした好みがより、聴く曲の選択も含めてより明確になるジャンルはジャズではないだろうか。落ち着いた女性ヴォーカルなら、Fidelityのほうが艶やかでしっとりとした音楽の雰囲気を味わえる。熱気を感じるようなジャズトリオのライブでは、Fealtyのほうが思わずリズムを取りたくなるような軽快で生き生きとした演奏を楽しめる。

ただし、これは聴き手がどのように曲を解釈したいかという音楽の永遠の課題にも関わるものだ。これこそダニー氏が、Fidelity/Fealtyをひとつのモデルにできなかった理由であり、「Choose Your Master」というTwinsの命題そのものでもある。



Twinsシリーズ、すなわちFealtyとFidelityは、DITAの特徴である切れ味の良さや低音域の充実感はそのまま引き継ぎながら、中音域の豊さをさらに進化させた。また、ケーブルの柔軟さ、プラグの信頼性なども改良するなど、製品としての完成度もさらに高めてきた。DITAというブランドがまた一段の成長を遂げ、よくこなれた製品を作るメーカーになったともいえるだろう。

FealtyとFidelityはの音質傾向のちがいは、聴いてみればすぐにわかるだろう。この音の差は、ツインズ・コンセプトが示す通り、聴き手1人ひとりの好みに応えるものだ。ぜひ試聴して、自らの好みに応じたモデルを選んでほしい。もちろん、2つとも入手して曲に応じて楽しむというぜいたくな選択もある、ということも書き添えておく。

(佐々木喜洋)


特別企画 協力:アユート

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