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【特別企画】Dreamからドライバーを進化させた最新モデル

DITA「Fealty/Fidelity」を聴く − 音楽性/忠実性をそれぞれ追求した“双子”のイヤホン

2018/07/18 佐々木喜洋
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DITAの最新イヤホン、“Twins”シリーズの「Fealty」「Fidelity」をレビュー。同じ設計思想の元に開発されながら、忠実性/音楽性のそれぞれを追求するために双子のイヤホンとして生を受けた両機について、佐々木喜洋氏がDITA audioのCEOへのインタビューを交えつつ、そのコンセプトと魅力を探っていく。

「Fealty」

「Fidelity」

忠実性/音楽性をそれぞれ追求した“ツインズ・コンセプト”

DITAはシンガポールのイヤホンメーカーで、一貫してダイナミック型ドライバーを採用しながら、妥協を排したオーディオファイル向けイヤホンを開発してきた。同社がその技術を結集して開発したフラグシップモデル「Dream」(関連ニュース)は、20万円を超える価格にもかかわらず、すでに売り切れとなったほどの人気を誇っている。

そのDITAの最新モデルが「Fealty(フィールティー)」と「Fidelity(フィデリティ)」だ。カラー以外は外観もほぼ同じで、これら2機種は“Twins(ツインズ、双子)シリーズ”と呼ばれている。

Fealty(左)とFidelity(右)

Fealty/Fidelityの“ツインズ”というコンセプトは、CEOのダニー・タン氏自身が新たに打ち出したものだ。このコンセプトの詳細についての話をダニー氏に聞いてみた。

ダニー氏によれば、ツインズ・コンセプトが示しているのは、「ラインナップの上下ではなく、異なる音調を備えていていること。なおかつ、音調以外はまったく同じように開発設計されていること」だという。つまり、外形はもちろんベースとする音質も共通としつつ、2モデルの差異はドライバーのチューニングだけなのである(色は区別のために変えている)。よってFealtyとFidelityのどちらが良いかということに答えはない。これはダニーCEOにも答えられないという。

このコンセプトを思いついたのは、Dreamの成功によってひとつの頂点を極めた後、ダニー氏が自宅で本を読んでいた時のことだという。その本のタイトルは『Fealty And Fidelity: The Lazarists of Bourbon France』である。直訳すると、「忠誠と忠実:フランス・ブルボンの伝道師たち」になる。

これはショーンアレキサンダー・スミスという作家が書いた本で、サブタイトルが示すとおりに聖ヴァンサン・ド・ポールというフランスの修道士の伝記だという。ダニー氏はこの本を読みながら、オーディオ業界との類似性にふと気が付いた。

忠実性と音楽性、どちらの主に仕えるのか? ダニー氏の問いが“Twins”というコンセプト、そして「Fealty」「Fidelity」を生んだ

多くのユーザーはそれぞれ異なる好みを持っていて、“いい音”にひとつだけの答えはない。製品を開発する上でこの事実をどう捉えるかは、多くのイヤホンメーカーにとって根本的な課題である。例えば、DSPを使ったチューニングによって個人の好みに応えていくという方法もあるが、これは現状でオーディオファイルにはあまり好まれない答えではないだろうか(ダニー氏が同ブランドのイヤホン「Answer」において接点を減らすためにいかに苦心していたかということも思い出される)。

先の本との類似性は、つまり2つの主に仕えることの難しさだ。これはオーディオでは「音楽に忠実であるべきか、聴き手に忠実であるべきか」ということに置き換えられる。

音楽に忠実であろうとした結果、聴き手の音の好みに反してしまうかもしれない。このことを設計者とも議論する中で、ダニー氏は「主を選べばよい(Choose Your Master)」と思い至ったそうだ。そして、次の製品名をFealtyとFidelityと定めて、開発に取りかかったのだという。


ドライバーユニットの改良で中域の再現性もさらに強化した

Fealty/Fidelityが搭載するドライバーは、Dreamで使われた技術をベースにしながらも、ドライバードームにDreamとは異なる素材を加えている。それはPET(ポリエチレン・テレフタレート)とPEN(ポリエチレン・ナフタレート)の混合素材である。この混合素材は強い立体形成力を持っていて、硬くてたわみにくいという性質を持つ(ヤング率が高い)。このため変形してもすぐに元に戻る力が強いという。

次ページドライバーユニットを更新して、豊かな中域再生も手中に

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